広瀬正小説全集2(集英社文庫)
『ツィス』



【初版】1982年3月25日
【定価】400円
【解説】司馬遼太郎


【収録作品】

作品名
ツィス
初 出
1971年4月、河出書房新社より書下ろし刊行。
粗 筋
 二点嬰ハ音(ツィス)が聴こえる。いたるところで、いつも聴こえる。耳鳴りだろうか? ひとりの若い女性の訴えから始まったこの奇妙な公害事件。この耳障りな音は、はじめ緩慢に社会を侵し、やがてマスコミの報道とともに急ピッチで拡大、ついに首都圏は一大パニックに陥る……。
(粗筋紹介より引用)
感 想
 音によるという集団パニックSF。前作『マイナス・ゼロ』に比べると、実際にあるかも知れないと思わせるようなリアリティのある作品。まず「音」に着目した点が素晴らしいし、パニックの度合いが徐々に高まり、一気に掛けのぼっていく様の筆致も素晴らしい。アイディアとどんでん返しという点では前作に敵わないものの、地に足ついた作品という意味ではこちらの方が上かも知れない。個人的にはこの結末、好きである。
備 考
 1971年上半期、第65回直木賞候補作。

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