江戸川乱歩推理文庫第10巻(講談社)
『魔術師』



【初版】1988年1月8日
【定価】480円
【乱歩と私】「鰻、背後霊、そして…」中井英夫


【収録作品】

作品名
魔術師
初 出
『講談倶楽部』昭和5年7月号-昭和6年5月号。
粗 筋
 厳しい警戒網をものともせず忍びこむ不気味な殺人予告。犯人探索に乗り出した明智小五郎が悪辣な罠に落ち、その生命、風前の灯。犯人の心やさしい娘に助けられ一度は危地を脱したかに思えたが……新聞は一斉にこの名探偵の非業の死を報じた。
 復讐の鬼と化した魔術師の、残虐無比な連続殺人が始まった。
(裏表紙より引用)
感 想
 乱歩が大衆向け通俗探偵小説を初めて書いた『蜘蛛男』の大ヒットを受けて書かれた作品。時間的には『蜘蛛男』の解決からわずか10日後の事件である。明智小五郎が恋したこと、今更のネタバレとなるが後に妻となる文代が魔術師の娘として登場したことで、有名な作品でもある。
 魔術師と呼ばれた男の復讐譚であり、明智と魔術師との至当ともいえる闘いが繰り広げられる。乱歩自身は「プロットとしては、私の通俗長篇のうちでは、やや纏りのよいものの一つではないかと思う」と述べたとおり、復讐譚で一本筋の通った話となっており、意外な犯人やトリックなども効果を上げた作品である(後にこのパターンを繰り返し使い、飽きられるのだが)。もっとも、大時計の針の断頭台など『幽霊塔』の趣向を取り入れるあたり、すでにネタ切れになっている証なのかもしれない。
 私自身、明智小五郎の通俗長篇ではトップ3に入る出来と思っている。さすがに今読むと古臭いかもしれないが、手に汗握る展開は今も色褪せていない。
備 考
 

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