江戸川乱歩推理文庫第19巻(講談社)
『大暗室』



【初版】1988年4月8日
【定価】480円
【乱歩と私】「時代を超えたおもしろさ」黒川博行


【収録作品】

作品名
大暗室
初 出
『キング』(講談社)昭和11年12-昭和13年6月号。
粗 筋
 東京湾、民間飛行競技大会で激しく競り合い、同時にパラシュートで降りた二人の美貌の青年こそ、宿命の仇敵同士である。「正義の騎士」と「悪魔の申し子」の徹底抗戦が今、始まる! 二人は同じ母から生まれながら父親がもうひとりに撃ち殺された運命にある。血塗れの手が東京中を脅やかし、地獄の絵図が展開する!
(裏表紙より引用)
感 想
 宿命の関係にある「正義の騎士」有明友之助と「悪魔の申し子」大曾根竜次の対決を描いた作品。とはいえ、大曾根のスケールがでかすぎるし、有明のみならず世間や警視庁まで翻弄しているので、そちらの活躍ばかりが目立つ。内容もポーの「陥穽と振子」を借用したかと思ったら、毎度おなじみ『パノラマ島奇談』のような地底の楽園も登場。おまけに最後は「火星の運河」と、乱歩の悪趣味ぶりばかりが目立つ。
 大曾根が新聞記者を誘い出すのに明智小五郎の名前を用いたのは、作者の勇み足だろう。
 『キング』連載最後の長編とのことで、ページ数も最も多いが、中身は過去の作品の流用が目立ち、読んでいても面白くない。連載なら、これでもよかったのだろうが。
備 考
 

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