江戸川乱歩推理文庫第38巻(講談社)
『魔法人形/サーカスの怪人』



【初版】1988年5月6日
【定価】640円
【乱歩と私】「千鳥足の乱歩コース」中津文彦


【紹介】
 永遠に若く美しくありたいと願う少女の心を弄ぶ謎の老人。悪魔の秘薬に少女は生きたまま人形と化す。人形好きの少女ルミが、にんぎょふ館で出会った美女紅子……目のさめるような金襴の着物姿の紅子の、頬の冷たさ! 硬さ! 「ルミちゃんも人形にしてあげよう」迫る怪老人に少女の悲鳴が滾る。少女探偵マユミも大活躍!
(裏表紙より引用)


【収録作品】

作品名
魔法人形
初 出
『少女クラブ』1957年1月号-12月号連載。
粗 筋
 【紹介】参照。
感 想
 出だしの少女が人形にさせられるシーンは、乱歩の少年もの(連載は『少女クラブ』だが)でも屈指の名シーンと思われる。その後の小林少年が閉じ込められるシーンは、『地獄の道化師』からの引用。ただ、ここまでの展開はよかったのだが、結局宝冠を狙うところからいつものパターンになってしまうのが残念。連載誌を考慮してか花咲マユミが活躍するし、ポケット小僧も登場。ポケット小僧は初登場か? 地底のジャングルなどおなじみの展開があるとはいえ、後期少年ものではベストと言える作品。もちろん、初期のものとは比較にならないぐらい、ワンパターンだが。
備 考
 『少女クラブ』初連載。ポプラ社版では『悪魔人形』と改題されている。

作品名
サーカスの怪人
初 出
『少年クラブ』1957年1月号-12月号連載。
粗 筋
 井上君とノロちゃんは、骸骨の顔をした男が街を歩いているのを見つける。後をつけると、骸骨紳士はサーカスが行われているテントの中へ入っていった。そして中では、骸骨の顔が大きく浮かび上がる。笠原団長は警察に届け出るが、骨だらけの骸骨男は今度は笠原団長の子供に狙いを付ける。
感 想
 宝石などを狙う展開は無く、ひたすら笠原家を襲う展開。当然のごとく二十面相が出てくるのだが、二十面相の本名やバックグラウンドが明かされるなどの異色の展開。笠原家を復讐する理由が明かされるが、その展開は少年ものに相応しくないもの。これは乱歩の勇み足だったと思われる。よほどのネタ切れだったに違いない。
備 考
 

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