江戸川乱歩推理文庫第40巻(講談社)
『塔上の奇術師/鉄人Q』



【初版】1988年7月8日
【定価】640円
【乱歩と私】「理科室の魔人」岡嶋二人


【紹介】
 古びた西洋館の屋根にそびえる煉瓦の時計塔。ふと見上げた三人の少女は、角ある怪人の姿を登場に見出し、慄然とする。時に赤い道化師の姿と変って人々を脅かす怪人。その秘密は時計塔に隠されているのか?
 怪人を追った少年は、奸計により、大時計の鉄の長身に首をはさまれてしまう。刻一刻と死の刃がおりてくる!
(裏表紙より引用)


【収録作品】

作品名
塔上の奇術師
初 出
『少女クラブ』1958年1月号-12月号連載。
粗 筋
 【紹介】参照。
感 想
 連載誌の関係か、今回は花咲マユミが冒頭から登場。角のあるこうもり男と遭遇したかと思ったら、あっという間に次は四十面相と正体をばらして予告状。別に変な怪人に化ける必要はないと思うのだが、これが二十面相クオリティなんだろう。避雷針のてっぺんでくるくる回るなど、過去にサーカスに所属していたと言わんばかりのデモンストレーション。毎度おなじみコールタールの糸が失敗するシーンは珍しい。大時計の針にはさまれるのは、大人作(思い出せない……)からの引用。最後は明智に捕まえられる四十面相だが、いい加減同じパターンで捕まるのは止めてほしいと思う。ここで言っても仕方がないが。
備 考
 

作品名
鉄人Q
初 出
『小学四年生』1958年4月号-3月号、『小学五年生』1959年4月号-3月号連載。
粗 筋
 科学者と自称する不思議な老人が小学四年生の北見菊雄君に見せたのは、Qと名前の付いたロボット。ところが老人に将棋で負けた鉄人Qは暴走し、西洋館から逃亡。そして世間を脅かすようになる。ポケット小僧が大活躍。
感 想
 ついに小学館の雑誌にまで連載された二十面相シリーズ。ページ数の都合か、二年に亘って連載された。鉄人Qというロボットらしき怪人が登場するも、その他は過去の作品のトリックがこれでもかとばかり登場する。掲載誌を変えたことによって、過去作品のトリックを使っても問題ないと判断したのだろう。ここまで来ると二十面相も、ただ少年探偵団たちを遊ぶだけの存在になっているのだが、そこには触れちゃだめだろうなあ。
備 考
 

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