江戸川乱歩推理文庫第61巻(講談社)
『蔵の中から』



【初版】1988年1月8日
【定価】440円
【乱歩と私】「乱歩先生のこと」渡辺啓助


【紹介】
 乱歩が遺した未完随筆のうち、大正十四年から昭和十七年の間に執筆したものを、発表順に収録。情趣に富んだ随筆の他に、少年時代から耽読して黒岩涙香訳著の書評文、尊敬する小酒井不木をはじめとする交友関係、そして出版界における探偵小説の現状などを描いた随筆集。乱歩ファンには必読の書である。(裏表紙より引用)

【収録作品】

作品名
蔵の中から
初 出
 大正14年から昭和17年の間に執筆した未完随筆を中心にまとめたもの。計49編収録(同一タイトルのものはまとめて1編としてカウント)。
内 容
 タイトルの「蔵の中から」は、乱歩が『探偵春秋』昭和11年10月創刊号〜昭和12年6月号に計9回連載した随筆「蔵の中から」より、中島河太郎が採用した。
感 想
 全65巻目録には「未完評論」とありながら、紹介文には「未完随筆」と書かれているこの矛盾。解説の中島河太郎も、「本書には大正十四年から昭和十七年の随筆を収めた。評論ともいうべきものが混じっているが、その区分は厳密ではない」と書いている通りである。本書は当時出版された作品の書評、作品評や序文が多い。序文が多いということは、それだけ乱歩の名前が世間に広がっていたということだから、さすがというべきか。
 表題の「蔵の中から」も短めの随筆であり、今まで収録されなかったのも仕方がないところか。中島河太郎も挙げているが、本書で面白いのは「国枝氏に」。国枝史郎が『読売新聞』大正14年8月31日月曜付録に掲載した「日本探偵小説界寸評」への反論であり、読売新聞に掲載されたものである。残念ながらこの寸評は載っていないが、解説に一文が載っていて面白い。中島河太郎は「人気髄一の乱歩に対する嫉視がありありと窺えよう」と書いているが、なるほどと頷かせる内容である。ここからさらなる議論が深まれば面白かったのだろうが、残念ながらここで終わってしまったのは残念だ。
 短い内容の随筆、評論が多いので、言葉足らずのところが多いのは残念。まあ、それでも乱歩らしさが垣間見えるのは嬉しい。

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