由利・三津木探偵小説集成(柏書房)



【由利麟太郎】
 元警視庁の名捜査課長。年齢は40歳を多く出ていないところ。要望なり体つきなり、若々しい精力が十分にあふれているが、髪の毛は真っ白。
 五年ほど前に警視庁を辞めたが、その理由は不明。「石膏美人」では、庁内にわだかまっている政治的な軋轢の犠牲になったのであろうと言われている。三年間行方不明だったが、「石膏美人」で再び姿を現す。お直婆さんと、絃次郎という無口な孤児の17歳の少年と住んでいるとあるが、二人は「石膏美人」のみの登場となっている。頭は雪のような白髪であるが、五年前は黒髪であったため、白髪となったのは行方不明の三年間で恐怖を味わったためと語っているが、それがどのようなことだったのかは語られていない。
 麹町三番町の邸宅に住んで悠々自適の暮らしを送っているが、探偵としての名声が広がり、看板を上げているわけでもないのに相談が持ち込まれ、気になった事件のみ繰り出している。また、難事件に遭遇した三津木によって引っ張り出されることも多い。独身であったが、『蝶々殺人事件』後に結婚する。
 戦時中は国立のほうに疎開していたが、戦後は麹町の邸宅に戻り、三津木と一緒に事件解決したことになっている。

【三津木俊助】
 新日報社の花形記者。30前後の、眉の秀でた、色の浅黒い、言葉つきや物腰のいかにもきびきびした男(「猫と蝋人形」より)。「猫と蝋人形」では通子という妹が出てくる。警視庁時代から由利に可愛がられており、華々しい勲功の大部分は由利の助力に追うところが少なくない。「由利先生」と呼び、難事件があると由利を引っ張り出す。ただし、三津木が単独で事件を解決する短編もあり、作者もただの主人公の功労の記録者だけではなく、自分自身の才覚と働きで難事件を解決したことも度々あると書いている。『蝶々殺人事件』は出版社より依頼を受け、三津木が執筆した形になっている。

【由利・三津木探偵小説集成】
 本作品集のコンセプトは、「由利麟太郎と三津木俊助のどちらかまたは両方が登場する一般向けの全作品」を「初出または初刊のテキストに準じて再編集」するものである。
 由利・三津木が登場する作品は長編5作、中編4作、短編22作、未完2作である(少年物除く)。シリーズとしてまとめられたのは、東方社より『由利・三津木探偵小説選』全6巻(1956-57年)があるが、『蝶々殺人事件』と未完2作が収録されておらず、短編も14作しか収録されていない。角川文庫では短編「迷路の三人」と未完2作以外は収録されているが、いくつかの短編はシリーズとは関係ない短編と収録されている。由利・三津木ものがすべてまとめられたのは、本シリーズが初めてである。編者は日下三蔵。
 テキストは初出及び初刊の形に準じて収録。
(『由利・三津木探偵小説集成』より一部抜粋)



巻 数 タイトル 初 版 収録作品
第1巻 真珠郎 2018年12月5日 「獣人」
『白蝋変化』
「石膏美人」
「蜘蛛と百合」
「猫と蝋人形」
『真珠郎』
付録1 六人社版『真珠郎』序文ほか
付録2 名作物語『真珠郎』
第2巻 夜光虫 2019年1月5日 『夜光虫』
「首吊船」
「薔薇と鬱金香」
「焙烙の刑」
「幻の女」
「鸚鵡を飼う女」
「花髑髏」
「迷路の三人」
付録「夜光虫」(未発表版)
第3巻 仮面劇場 2019年2月5日 「双仮面」
「猿と死美人」
「木乃伊の花嫁」
「白蝋少年」
「悪魔の家」
「悪魔の設計図」
「銀色の舞踏靴」
「黒衣の人」
『仮面劇場』
第4巻 蝶々殺人事件 2019年3月5日 「盲目の犬」
「血蝙蝠」
「嵐の道化師」
「菊花大会事件」
「三行広告事件」
「憑かれた女」
『蝶々殺人事件』
「カルメンの死」
「神の矢」
「模造殺人事件」
付録1「神の矢」(「むつび」版)
付録2『蝶々殺人事件』あとがき(月書房版)


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