ギネスワールドと死刑囚




 2008年9月8日に「ギネスブックと死刑囚」という駄文を書いたのだが、今回新たに情報を頂いた。
 まずは、最も長く収監されている死刑囚(Longest time on death row)ということで、2010年1月1日、袴田巌死刑囚の名前がギネスワールドブックに登録されている。2010年時点で42年ということなので、一審判決の1968年9月11日より換算されていることになる。海外では一審で死刑判決が出れば、既に死刑囚としてカウントするということらしい。一審判決を起点とすれば、尾田信夫死刑囚の一審判決1968年12月14日より袴田死刑囚の方が早い。奥西勝死刑囚は一審が無罪だから二審判決の1969年9月10日が起点となる。まあ、いずれにしても気が遠くなる話である。尾田死刑囚はまだしも、袴田死刑囚は無罪を主張しており、しかも拷問の事実や明らかになって証拠のねつ造が指摘されているのだから、残酷な話である。現在、裁判所、検察、弁護側による三者協議が行われているが、もう少し早いペースでできないものだろうか。袴田死刑囚にとって、残された時間は長くない。

 続いて、これはギネスワールドブックの話ではないのだが、高齢死刑囚の執行について。戦後の日本で死刑(戦犯除く)が執行された最高齢は、2006年12月25日に執行された秋山芳光元死刑囚の77歳4ヶ月であるが、アメリカではさらに高齢の死刑囚が居た。2005年12月14日にミシシッピ州で執行されたJohn B. Nixon Sr.元死刑囚で、1928年4月1日生まれということは、執行時の年齢は77歳8ヶ月と、秋山元死刑囚を僅かに上回る。1986年3月26日に死刑が宣告されたとのことだから、収監期間は19年8ヶ月。この年齢で執行されるというのは、どういう気持ちを抱くのだろうか。
 アメリカには他に76歳で執行されたClarence Ray Allen元死刑囚もいる。アメリカは執行までの期間が長いから、これからも高年齢で執行されるケースが出てくると思われる。日本でもすでに77歳4か月を超えた死刑囚は石田富蔵、奥西勝、浜田武重、大濱松三、高田和三郎、片岡清、高橋和利死刑囚がいる。いずれも執行されるとは思えないが、今彼らは何を思って生きているのだろうと考えてしまう。今でも執行におびえているのか、すでに三食食べられることに満足しているのか、今でも無罪が成立して塀の外に出られると思っているのか。

(追記)
 2014年3月27日、静岡地裁(村山浩昭裁判長)は「(袴田元被告を)犯人と認めるには合理的な疑いが残る」として再審開始を決めた。刑の執行停止に加え、拘置の停止も認める異例の決定となった。法務省によると、死刑囚の再審が決定したケースで、拘置の執行停止が認められたのは初めて。静岡地検は、拘置の執行停止決定を不服として、静岡地裁にこの決定を停止するよう申請すると同時に、東京高裁に決定の取り消しを求めて抗告したが、静岡地裁は静岡地検の申し立てを退けた。地検は釈放を指揮し、袴田元被告は同日午後、逮捕から47年7カ月ぶりに釈放された。
 このことより、ギネスワールドブックからの登録が消された。しかしこれは、嬉しい取り消しだろう。正直言って、釈放までされるとは誰も考えていなかったに違いない。そして日本で一番長く収監されているのは、1968年12月14日に一審判決を受けた尾田信夫死刑囚ということになった。いずれ記録を更新することになるだろう。

Y氏より情報を多数いただきました。有難うございました。

(2012年9月16日記)
(2014年4月19日 追記記載)



【「死刑や犯罪についての雑記」に戻る】