三好徹『ふたりの真犯人 三億円の謎』(カッパ・ノベルス)




 何一つ解決せずに、時効をすぎた三億円事件! 七年にわたる捜査は空しく終わった。が、警視庁の捜査方針に誤算はなかったのか? 著者・三好徹は新聞記者・重藤の眼を通し、多摩農協脅迫事件や、数多い遺留品などの資料から謎を追う。彼は「犯人」の行動の跡を忠実にたどりながら、論理的にひとつの「犯人像」を構築した。この推理作家ならではの、独創的な推論は、捜査当局の盲点をついたものといえる。さらに、時効後に、著者をも巻き込んだ奇怪な"真犯人"の動きは、事件の謎の奥深さを物語り、読者に衝撃を与えずにはおかないだろう。(粗筋紹介より引用)
 『小説サンデー毎日』昭和50年10月号〜昭和51年2月号に連載された「三億円の謎」に加筆訂正の上、1976年3月、刊行。

 元読売新聞の記者であった三好徹は事件に関心を持ち、雑誌にルポを依頼されて現場に行き、多くの捜査関係者にも会い、連載に当たって改めて取材を行った。事件当時は警視庁から意見を求められたという。それらをまとめて書かれたのが本書である。新聞の遊軍記者である重藤の目を通し、事件の発生から捜査、さらに自らの取材も含めた犯人像の推理、そして時効までが書かれている。さらに事件後、手配の写真にそっくりな韓国人の男が現れ、自分が犯人であると重藤を含むマスコミ各社に売り回るも結局取り上げられず、ソウルに行ったというエピローグが加えられている。
 捜査や取材、そして憶測(推理というほどのものでもない)が淡々と書かれ続けるだけであり、物語の起伏というものがないため、読んでいてもだんだん退屈になってくる。これぞいう犯人の姿があるわけでもないので、読んでいても迫力に欠ける。
 三億円事件の謎そのものを追う人にとっては参考になるかもしれないが、小説の面白さという点については特に語るところはない。


【参考資料】
 三好徹『ふたりの真犯人 三億円の謎』(カッパ・ノベルス)

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