藤木稟『黄泉津比良坂、血祭りの館』(トクマノベルス)

 期待の作家の第三段なのだが、逆にこの作家の限界を知ってしまったような気がする。この作家に館物は似合わなかった。




蘇部健一『長野・上越新幹線四時間三十分の壁』(講談社ノベルス)

 長野、新潟、東京。殺意とアリバイを乗せ新幹線は疾る!
 新潟と長野で起きた殺人。容疑者の美人双子姉妹には鉄壁のアリバイがあった。壊れた時計、時刻表、ビデオ・テープ――ミステリの必須アイテムに新たな生命を吹き込むスリリングな表題作に、どんでん返しの醍醐味が堪能できる倒叙短編の2編をプラス。思いもよらない一点から完全犯罪を瓦解させる推理のキレ!(粗筋紹介より引用)

 あの『六枚のとんかつ』の蘇部健一待望の第二作は、ちょっと短めの長編の表題作に倒叙物の短編「指紋」「2時30分の目撃者」の二作を収録。表題作は双子の美人姉妹が容疑者でともに鉄壁のアリバイ、そして小道具が壊れた時計にビデオ・テープに時刻表。いかにもべたべたのトラベル・ミステリー。とはいえそこはあの蘇部健一。ただのトラベル・ミステリーには仕立て上げていない。ちょっとしたアイディアだがなかなか効果的なトリックの使い方もうまいし、小説自体も格段に読みやすくなっている。最近の作品群と逆行するかのようなあっさり目の描写も悪くない。相変わらずのオヤジ・ギャグだけは止めた方がよいと思うが、それさえ我慢すれば面白く読める作品に仕上がっている。
 そして倒叙物の短編二編。久々に、メタではないどんでん返しのおもしろさを味わうことのできた作品である。特に「指紋」の使い方はお見事であろう。この路線を集めた短編集を次にはお願いできないだろうか。長編も悪くないが、蘇部健一は短編の方が切れ味よい。




樋口明雄『狼叫(ランチャオ)』(講談社)

 動乱の満州を舞台に、抗日義勇軍の頭目であり、モーゼルミリタリーの名手柴火、その好敵手・伊達順之助、柴火を想う隻眼隻脚の徐舜、多情多恨な武当殺人拳の使い手・春蓮などが疾風の如く活躍する骨太で哀切な冒険小説。(粗筋紹介より引用)

 日中戦争の頃の馬賊もの。馬賊ものでは『夕日と拳銃』という大物があるが、これを越えるのはちょっと難しかったようだ。といっても、十分楽しめる活劇小説になっている。