求刑死刑判決無期懲役【2009年】






事件概要
罪 状
判 決
判決理由
備  考
H・T(61)  岐阜県中津川市の市職員H被告は2005年2月27日午前7時半頃、自宅で寝ていた整体業の長男(当時33)、母(当時85)の首をネクタイで絞めて殺害。同日午前11時頃、近くに住む長女(当時30)と長女の長男(当時2)と長女(当時3ヶ月)の3人を車で自宅に連れてきて、ネクタイで首を絞めて殺害した。さらに約2時間後、長女の夫(当時39)も包丁で刺し、2週間の軽傷を負わせた。他に飼い犬2匹も殺害している。H被告はその後、自分の首を包丁で刺し自殺を図った。H被告の妻は不在だった。 殺人、殺人未遂 2009年1月13日
岐阜地裁
田辺三保子裁判長
無期懲役
判決文「裁判所ウェブサイト」内のPDFファイルが開きます。リンク先をクリックする前に、注意事項をご覧下さい)
 起訴事実については争われず、事件当時の責任能力が争点となった。検察側申請の鑑定では責任能力があったと説明。弁護側申請の鑑定では、H被告が妄想性障害、急性一過性精神病性障害であり、心神耗弱が責任能力が限定されると主張した。
 判決で裁判長は「完全責任能力があった」とする鑑定を採用した。そして「一方的思いから孫までも殺し、誠に身勝手、自己中心的だ」と指摘。一方で「精神的に追い詰められた末の一家心中で、私利私欲に基づいておらず、一抹の酌量の余地がある。極刑の選択には躊躇が残る」と述べた。

2010年1月26日
名古屋高裁
片山俊雄裁判長
検察・被告側控訴棄却
 裁判長は犯行に周到な計画性がなく、被告が反省を深めていることや、前科や前歴がなくまじめに社会生活を送ってきたことを指摘。「5人の命を奪った責任は重大だが再犯のおそれは考えがたく、死刑にするにはためらいが残る。残りの人生を全うさせ、被害者らの冥福を祈らせ償いにささげさせることも不合理とは言えない」として検察側の控訴を退けた。また心神耗弱状態であるという弁護側の主張については、「精神障害は認められず、完全な責任能力があった」と退けた。
2012年12月3日
最高裁第一小法廷
横田尤孝裁判長
検察・被告側上告棄却、確定
判決文「裁判所ウェブサイト」内のPDFファイルが開きます。リンク先をクリックする前に、注意事項をご覧下さい)
 小法廷は死刑選択も考慮すべき事件としたが、「妻を長年いじめる実母を殺害して自殺しようとし、残される家族もふびんなので殺害を決意した。理不尽極まるが、実母の言動で苦悩し追い詰められていた」と動機に一定の理解を示した。裁判官5人中4人の多数意見。検察官出身の横田裁判長は「極刑回避の事情は認められない」として、審理を差し戻すべきだとの反対意見を述べた。
H・T(34)  東京都江東区のマンションに住む派遣会社社員のH被告は、自分の言うことを何でも聞く女性を求め、2008年4月18日、2部屋隣に住んでいた会社員の女性(当時23)が帰宅して玄関の鍵を開けた音を聞くとすぐにわいせつ目的で侵入。包丁を突きつけるなどして女性を自分の部屋に連れ込み暴行しようとしたが失敗。約3時間後、自室ドアがノックされ、女性の部屋の前に警察官が立っているのに気づいたことから、女性が行方不明になったと装おうと包丁を首に突き刺して殺害。5月1日までの間に浴室内で遺体をのこぎりや包丁で細かく砕いて冷蔵庫などに隠し、その後水洗トイレに流したり、ごみ置き場に捨てたりした。 殺人、死体遺棄・損壊他 2009年2月18日
東京地裁
平出喜一裁判長
無期懲役
 H被告側は起訴事実について一切争わず、公判前整理手続きによって争点は情状面、量刑等に絞られた。判決は動機について女性を性奴隷にしようとしたと認定。極めて自己中心的で卑劣、酌量の余地はないと非難した。しかし反抗については冷酷だが残虐きわまりないとまではいえないと判断。遺体をバラバラにした死体損壊・遺棄については殺害行為に比べて過大に評価することはできないとした。またH被告の計画性を否認し、わいせつ行為をしていないこと、謝罪の態度を見せていることなどを考慮した。  裁判員裁判を強く意識する検察側は、犯行の残虐性を強調するため、切断された肉片や、マネキン人形を使った遺体切断時の再現画像を大型モニターに映し出す異例の手法で立証を進めた。
2009年9月10日
東京高裁
山崎学裁判長
検察側控訴棄却
 判決で裁判長は「冷酷かつ残虐、悪質性の程度が高く、人倫にもとる犯行だ。尊い生命が失われ、遺体も完膚なきまでに解体され結果も重大。遺族の処罰感情も峻烈だ」と指摘。一方で「被告は法廷で犯行の詳細を述べ、罪を悔い、謝罪の態度を示している」として、被告に有利な事情を挙げた。そして裁判長は最高裁が1983年に示した死刑適用の「永山基準」に沿って判断、「前科がなく、矯正不可能とまではいえない」などと死刑回避の理由を述べた。
上告せず確定。
堀慶末(33)/K・K(42)  神田司被告、堀慶末被告、K・K被告は携帯電話の闇サイトで知り合い、強盗殺人を計画。2007年8月24日夜、名古屋市千種区の路上で帰宅途中の派遣会社に勤める女性を車内に連れ込み、25日午前1時頃、愛西市内の駐車場で女性の頭を金槌で殴り、首を絞めるなどして殺害。現金約62,000円やキャッシュカードなどを奪うとともに、女性の遺体を岐阜県瑞浪市の山中に遺棄した。 強盗殺人、死体遺棄他 2009年3月18日
名古屋地裁
近藤宏子裁判長
H被告:死刑/K被告:無期懲役
 裁判長は闇サイトを悪用した社会的影響について、社会に対する重大な脅威と述べた。そのうえで〈1〉利欲目的で酌量の余地はない〈2〉落ち度のない市民を拉致し、命ごいに耳を貸すことなく犯行を敢行していて無慈悲で凄惨〈3〉犯行計画は具体的、詳細なものではなかったが、量刑をわけるほど有利な事情とは言えない〈4〉被害者の無念さを言い表す言葉を見いだすことはできない−−などを理由として挙げた。
 3被告のうち神田被告については「殺害の計画と実行において最も積極的に関与した」、堀被告については「さまざまな強盗計画を積極的に提案し、被害者を最も積極的に脅迫した」と認めた。一方K被告については、「被害者を2度も強姦しようとしており、他の2被告に比べ刑事責任は劣らないが、自首で事件の解決、次の犯行阻止に寄与したことは有利に評価できる」と判断し「極刑をもって臨むには、躊躇を覚えざるを得ない」と結論づけた。
 神田司被告は求刑通り一審死刑判決。その後控訴取り下げ、確定。
 堀慶末受刑囚は1998年に愛知県碧南市で起こった夫婦殺害事件に関わったとして、2012年8月3日に強盗殺人容疑で逮捕された。2015年12月15日、名古屋地裁で一審死刑判決。2016年11月8日、名古屋高裁で被告側控訴棄却。2019年7月19日、被告側上告棄却、確定。
2011年4月12日
名古屋高裁
下山保男裁判長
堀慶末被告:一審破棄・無期懲役/K被告:検察・被告側控訴棄却
 弁護側は独自に臨床心理士に依頼。心理鑑定結果より、K被告は「軽度の知的障害があり、物事全体を理解する力や現実を吟味する力が弱い」、堀被告は「自己主張するよりも同調する傾向や受動的な態度が強い」として一審同様「殺害は場当たり的で直前まで意図していなかった」と主張した。そのうえで、K被告について有期懲役、堀被告には無期懲役を求めた。検察側は堀被告に対しては控訴棄却、K被告については減軽理由となった自首について「死刑や共犯者からの報復を回避する自己保身のためで、過大評価すべきでない」として死刑を求めた。
 裁判長は「ネットを通じて知り合った者同士による犯罪であることを、過度に強調するのは相当ではない」と述べるとともに、「被害者が1人である本件では、死刑の選択がやむを得ないと言えるほど、悪質な要素があるとはいえない」とした。そして堀被告については「最も積極的な役割を果たしたとは言えず、死刑がやむを得ないほど悪質ではない」などとして一審の死刑判決を破棄して無期懲役とした。K被告に対しては検察側、被告側双方の控訴を棄却した。
2012年7月11日
最高裁第二小法廷
千葉勝美裁判長
検察側上告棄却、確定(堀被告に対し)
K被告については上告せず確定。
 小法廷は「被害者は1人で、『死刑がやむを得ないといえるほど他の要素が悪質とは断じがたい』と判断した二審が誤りとはいえない」と指摘。「身代金目的誘拐殺人と同視すべきだ」との検察側主張については、「同視は相当でない」と退けた。
H・T(31)  群馬県小山市の中古車販売会社役員H・T被告と同市の派遣会社員K・T被告は共謀。2008年3月4日午後7時50分頃、K被告が担当していた派遣社員の日系ブラジル人男性(当時48)宅で男性の首を絞めるなどして殺害。財布などを奪うとともにキャシュカードから100万円を引き出し、遺体を佐野市内の川に遺棄した。
 さらに4月20日午後8時頃、H被告が個人的なトラブルで恨みを持っていた前橋市の中古車販売業男性(当時37)を鉄パイプで殴って殺害し、遺体を茨城県桜川市の山林に遺棄した。
強盗殺人、死体遺棄他 2009年3月19日
宇都宮地裁栃木支部
林正宏裁判長
無期懲役
 裁判長は中古車販売業男性殺害の件について、男性は多額の金銭を要求するなど「H被告に著しい経済的、精神的苦痛を与え続けた。男性自身にも責められるべき要因があった」と指摘した。  K・T被告は求刑通り一審無期懲役判決。控訴せず確定。
2009年11月4日
東京高裁
原田国男裁判長
検察・被告側控訴棄却
 裁判長は殺害された中古車販売業の男性が盗難車に関するトラブルでH被告から多額の金銭をだまし取ろうとしていた点を指摘。「男性の違法行為がなければ借金を負わず事件は起きなかった。一部の被害者遺族の処罰感情も多少融和している。犯行は極めて悪質だが、被害者の落ち度などを考慮すれば死刑は認められない。酌量減軽する事情も到底認められない」などと死刑を回避する事情を挙げ、一審判決を支持した。
上告せず確定。
S・H(24)  東京都杉並区に住む大学生のS被告は2007年1月25日午前3時頃、裏の家に住む無職女性(当時86)方で、女性と会社員の長男(当時61)をナイフで刺殺し、現金約47,000円や貴金属などを奪った。凶器の軍用ナイフは、コレクションとして保有していたものだった。S被告は朝になってクレジットカードを使い、杉並区内のコンビニエンスストアのATM(現金自動受払機)から現金を引き出そうとしたが、暗証番号が正しく入力できなかったため、未遂に終わった。 強盗殺人、窃盗未遂 2009年7月15日
東京地裁
植村稔裁判長
無期懲役
 最初の精神鑑定では責任能力を否定したが、再鑑定では完全責任能力があったとの結論が出た。
 判決では「事件当時の被告の行動などから、完全責任能力があったと認められる」と判断。弁護側の「被告は脳の機能的障害を負っており、犯行時は心神喪失か心神耗弱の状態だった」との主張を退けた。その上で「被告はあらかじめ強盗殺人を計画していたものではない。若年で前科はなく、今後改善更生の可能性がないとはいえないことなどを考慮すると、死刑とするのはやむを得ないとはいえない」と述べた。

2010年6月17日
東京高裁
小西秀宣裁判長
検察・被告側控訴棄却
 裁判長は争点となった責任能力について、「精神病や脳の機能低下はなかったとする鑑定をもとに、被告に完全責任能力を認めた原判決の判断に誤りはない」と認定して弁護側の主張を退けた。しかし計画性がないこと、犯行時21歳8ヶ月と若く、前科もないこと、そして被告の父親が遺族に8000万円を支払った点を考慮し、死刑を回避した。
2010年7月9日
被告側上告取り下げ、確定

野崎浩(50)  野崎浩被告は1999年4月22日、横浜市神奈川区の当時の自宅マンションで、交際していたフィリピン国籍の女性(当時27)の首を布団に押しつけて窒息死させた。さらに遺体をカッターナイフ等でバラバラにし、横浜市内のビルのトイレなど数ヶ所に捨てた。
 野崎被告は2000年1月20日、死体遺棄・損壊容疑で逮捕された。しかし検察側は殺人容疑を立証することができなかった。2000年4月14日、浦和地裁は懲役3年6月(求刑懲役5年)を言い渡し、後に確定。野崎被告は服役した。
 野崎被告は出所後の2007年にフィリピン国籍の女性と交際するようになり、12月に東京都港区のマンションで同居を始めた。しかし野崎被告は家賃を支払わなくなり、女性とたびたび口論になっていた。2008年4月3日夕方、出勤しようとした女性(当時22)に声をかけたが無視されたN被告は腹を立て、首を絞めて殺害。包丁などで遺体をバラバラにした。
殺人、死体遺棄・損壊 2009年12月16日
東京地裁
登石郁朗裁判長
無期懲役+懲役14年
 裁判長は1999年の事件について「自白は具体的で、被告の車から人骨が発見されるなど補強証拠もある」と弁護側の無罪主張を退けた。そして「2度にわたって殺人、死体損壊・遺棄の罪を犯し、犯罪性向があることは否定できない」と非難する一方、かつて否認していた99年の殺人について捜査段階で詳細に供述するなど心情の変化が見受けられるとして、「2度にわたり殺人を犯したが、矯正の可能性があり、死刑がやむを得ないとまではいえない」とし、2008年の事件について無期懲役(求刑死刑)、1999年の事件について懲役14年(求刑無期懲役)の判決を言い渡した。  横浜の事件を巡り死体損壊・遺棄罪で2000年に実刑判決が確定していることから、複数の罪を合わせて刑を科す「併合罪」は適用できず、事件ごとに起訴された。刑事訴訟法は二つ以上の刑を執行する場合、重い方を先に執行すると定めているため、懲役14年の刑は執行されない。
2010年10月8日
東京高裁
長岡哲次裁判長
一審破棄・死刑+懲役14年
 裁判長は殺害と死体損壊を一連の犯行ととらえ悪質性を判断すべきだとした。さらに「仮釈放後、5年8カ月で再び事件を起こした点を一審は著しく軽く評価している。被告は謝罪の言葉もなく、他の死刑確定事件と比べても死刑が相当」と述べた。
2012年12月14日
最高裁第二小法廷
小貫芳信裁判長
被告側上告棄却、確定
 小法廷は「動機に酌量の余地はなく、一連の犯行は態様においても悪質極まりない」と指摘。「死体損壊・遺棄罪の服役で、反省、悔悟する機会を与えられたにも関わらず、類似の犯行を敢行した。刑事責任は誠に重大」として、死刑判断を是認した。


【「求刑死刑・判決無期懲役」に戻る】