求刑死刑判決無期懲役【2010年】






事件概要
罪 状
判 決
判決理由
備  考
M・K(44)  暴力団幹部M被告は大阪府阪南市内の自宅で同居していた無職男性(当時32)の存在が疎ましくなり、2001年12月〜2002年4月、男性を金属バットで殴るなど日常的に暴行。2002年5月上旬、衰弱していた男性を大阪府岬町の漁港から知人男性F被告に指示して海へ突き落とし、竹竿で突いておぼれさせ、殺害した。その後遺体を和歌山県串本町(紀伊半島東部)の山中に車で運び、遺体を埋めた。
 またM被告は2006年12月24日午前2時頃、大阪市西成区のアパートで知人の兄だった男性(当時34)に暴行。男性は外傷性の腹部内出血により午後6時頃に死亡。森本被告は同じ暴力団の組員ら3人と共謀し、25日から26日にかけ、遺体を串本町の山中に車で運び、遺体を埋めた。
 このほか、男女6人に暴行した。
殺人、傷害致死、傷害、死体遺棄 2010年1月25日
大阪地裁
笹野明義裁判長
無期懲役
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 公判でM被告は岬町の殺人については否認。2006年の事件については和歌山での死体遺棄を認めているが、傷害致死については否認した。
 裁判長は殺人罪の成立を認めた。そして「虐待を楽しむなど冷酷で非情な犯行で、酌量の余地はない」と厳しく指弾。一方で死刑を回避した理由を「殺人の被害者は1人で、周到に計画された犯行ではない。残忍な殺害方法で連続的に人を殺すのとは犯情が異なる。過去の同種事例の判決に照らすと、死刑を選択するほどではない。残りの人生をかけてひたすら矯正施設内で贖罪に専念させるのが相当」と述べた。

2011年5月31日
大阪高裁
上垣猛裁判長
検察・被告側控訴棄却
 裁判長は、「残酷卑劣な犯行だが、殺害された被害者は1人で、強固な殺意や計画性があったとはいえない。殺人と傷害致死を同様に評価することはできず、死刑がやむを得ないとまでは言えない」と述べた。
2014年3月17日
最高裁第一小法廷
山浦善樹裁判長
被告側上告棄却、確定
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 弁護側の憲法違反、判例違反は単なる事実誤認の主張であって上告理由に当たらないと判断。そして職権で、同一被害者に対しある程度の期間にわたり反復累行された一連の暴行によって種々の傷害を負わせた事実について、その全体を一体のものと評価し,包括して一罪と解した。そして包括一罪を構成する一連の暴行による傷害について、個別の機会の暴行と傷害の発生、拡大等との対応関係が個々に特定されていなくても、訴因の特定に欠けるところはないとした。
Y・L(54)  起訴状によると、中国人の元スナック経営者L被告は強制送還を恐れ、結婚した日本人夫Kさんの遺産をすぐに相続するために、夫を殺害した後、別人を替え玉にして病死と偽装することを計画。2001年10月末〜11月頃、大阪の自宅で夫(当時77)を殺害。12月頃、替え玉として用意したTさん(当時71)を殺害。2002年2月頃、同じく替え玉に仕立て上げたKさん(当時69)を、共犯者の男性とともに殺害。相続届けなどを偽装し、夫名義の預貯金産約3240万円を不正に引き出し、Kさん名義の土地を自分のものにして売ろうとした。Y被告はその後逃亡し、2007年10月に東京で逮捕された。 殺人、傷害致死、詐欺他 2010年1月28日
大阪地裁
長井秀典裁判長
無期懲役
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 検察側は3件の殺人と詐欺などで9つの罪で起訴。Y被告側は一部の詐欺を除く3件5つについて無罪を主張した。夫の遺体は見つかっていない。また夫とTさん殺害については殺害日時と方法が特定されていない。そのため、検察側は40人を証人尋問して状況証拠を積み上げ、論告では「犯罪の証明は十分」と主張していた。
 判決で裁判長は、夫について殺意を認めず、傷害致死と認定。Tさんについては殺人の証明がなく無罪、Kさんについてのみ殺人を認定。また詐欺については起訴内容を認定した。
共犯の日本人男性は、求刑通り懲役15年判決が確定している。
2011年4月20日
大阪高裁
古川博裁判長
検察・被告側控訴棄却
 検察側は3件とも殺人罪の適用を、被告側はすべて無罪を主張した。
 裁判長は判決理由で、一審判決の認定に事実誤認はないと指摘。Kさん事件について「被告がKさんを納屋に閉じこめたとする知人の証言は信用でき、一審判決に誤りはない」と判断。夫事件については「アパートから血痕などが見つかっており、被告による暴行があったと推定できるが、周到な準備が見られず殺意の推認には不十分」と指摘し、一審と同様に傷害致死罪にとどまるとした。Tさん事件に関しては「死因は不明であり、客観的証拠に乏しく、被告を犯人と認定するのは困難だ」として改めて無罪と判断した。
2013年11月11日
最高裁第二小法廷
千葉勝美裁判長
検察・被告側上告棄却、確定
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 検察側は3人に対しいずれも殺人罪を適用し、死刑判決を求めて上告。被告側は3件とも無罪を求めて上告した。
 最高裁は決定で、「死刑も十分に考慮されるが、殺された被害者が1人で犯行状況も不明であり、無期懲役の判断が誤りとは言えない」とした。
I・M(49)  大阪府守口市の元塗装工I被告は2001年8月28日午後9時頃、大阪市旭区の薬局店で店主の女性(当時84)を絞殺し、売上金約70000円やビタミン剤などを奪った。DNA鑑定技術の向上から大阪府警捜査一課は、現場の遺留品であったタオルに付着していた皮膚片のDNA鑑定を実施。服役中のI被告からと一致したため、2008年11月21日に逮捕した。 強盗殺人、住居侵入 2010年5月31日
大阪地裁
杉田宗久裁判長
無期懲役
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 I被告は強盗目的で犯行に及んだことは認めたが、「死なせたことは認めるが、殺意は持っていない」と殺害の犯意を否定した。検察側は、争点となっている犯意について「確定的殺意があった」と主張。別の強盗殺人で高齢男性を殺した約2週間後に被害者を殺害した経緯を指摘し、「強欲で人命軽視も甚だしく、厳しい非難に値する。人命の尊厳を一顧だにしない犯行は鬼畜の所業。再度の無期懲役刑による矯正教育は無意味」と述べた。
裁判長は判決理由で「強固な確定的殺意に基づく冷酷な犯行で、死刑の求刑も十分理解できる」と指摘。一方で「事件に計画性はなく、死刑選択にはちゅうちょを覚える」と述べた。
 I被告はこの事件の約2週間前になる8月15日早朝、大阪市北区の洋服店店主(当時84)の店に2階の窓から侵入し、就寝中の店主の頭部を角材のようなもので殴った上、電気コードで首を絞めて殺害。現金約3万円とキャッシュカードを奪った。2001年10月11日に逮捕。無罪を主張していたが、2003年12月1日に大阪地裁で求刑通り無期懲役判決。2004年7月14日、大阪高裁で被告側控訴棄却。2004年12月13日、最高裁で被告側上告が棄却され、翌年1月に確定。その後は徳島刑務所に服役していた。
2011年2月24日
大阪高裁
上垣猛裁判長
検察側控訴棄却
 上垣裁判長は、死刑を念頭にすでに確定した事件を評価し直して量刑を決めることは憲法39条が禁止する二重処罰に抵触する−と判断した一審判決を踏襲した。その上で「2件の無期懲役で服役すれば被告の年齢では平均余命がすぎても仮釈放される見込みはほとんどなく、一審判決が軽すぎるとは言えない」と指摘した。
2012年12月17日
最高裁第三小法廷
大谷剛彦裁判長
検察側上告棄却、確定
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 決定は付言で「量刑判断の際に、確定事件を実質的に再度処罰する趣旨で考慮することは許されないが、犯行に至った経緯としては検討できる」と指摘。ただこの事件では(1)殺害に計画性がない(2)服役を通じ更生の兆しが見える――などの事情を踏まえ、死刑を回避した一、二審判決を不当とはいえないとした。
H・K(42)  千葉市の会社員H・K被告は2008年2月頃から東京都千代田区にある耳かきサービス専門店へ偽名で通い始め、2009年になってからは週末ごとに来店し、店員である港区の女性を常に指名。4月頃には女性に交際を申し込んだが断られ、店から出入り禁止となった。しかしその後もH被告は女性につきまとった。
 2009年8月3日午前8時55分頃、H被告は女性方を訪れ、1階にいた女性の祖母(当時78)を刃物で刺し殺害。さらに2階で寝ていた女性(当時21)の首などを刺した。女性は意識不明の重体となり、9月7日、入院先の病院で死亡した。
殺人 2010年11月1日
東京地裁
若園敦雄裁判長
無期懲役
 検察、被告側とも起訴事実に争いはなく、量刑の判断は情状面に絞られた。判決は被告が抑うつ状態に陥り、思い悩んだ末に起こしたものであり、女性の祖母殺害は計画性のない偶発的な犯行。被告は前科もなくまじめに生活してきたことと、被告なりに反省していることを考慮し、極刑を回避した。  裁判員裁判で初の死刑求刑。検察、被告側双方が控訴せず一審で確定したのは、1988年12月22日の熊本地裁判決以来。
控訴せず確定。


S・M(71)  鹿児島市の無職S・M被告は2009年6月18日夜、鹿児島市に住む夫婦宅に窓ガラスを割って侵入。仏間で夫(当時91)と妻(当時87)の顔などをスコップで十数回殴打して殺害した。夫婦は2人暮らしで、貸家など不動産を多く所有する資産家だった。 強盗殺人 2010年12月10日
鹿児島地裁
平島正道裁判長
無罪
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裁判員裁判
 S被告は逮捕当初から無罪を主張。検察側は、●(侵入経路の)窓の割れたガラス片から採取した指紋が、被告の右手薬指と一致した、●物色された痕跡があるタンスや書類に付着した指紋・掌紋計10個もS被告と一致した、●S被告とDNA型が一致する細胞片が窓の網戸から見つかった、ことから被告以外に犯人はいないと主張。動機は、パチンコや飲み代で年金を使い切り、金に困っていたとした。弁護側は、●S被告の目撃情報がない、●別の不審者の目撃情報がある、●S被告と夫婦に面識はなく、動機がないし、被害者宅も知らない、●室内に13万円の現金が残され、金庫に触れた形跡がないことから、強盗目的ではない、●夫への攻撃が執拗であることから、顔見知りによる怨恨が動機、と主張した。
 判決は現場に残された被告の指紋から、「被告が過去に周辺をさわった事実は動かない」としつつ、「後から別人が物色した偶然の一致も否定できない」と述べた。凶器とされるスコップに被告の指紋などがないことや、現金が容易に発見できるところに残され、被害者が激しく殴られている状況などから「金品目的」で侵入したとする検察の主張に疑問が残ることも指摘。「『被害者宅に行ったことは一度もない』という被告の供述はうそだが、その一事をもって、直ちに犯人であるとは認められない」と述べた。鹿児島県警についても「真相解明に必要な捜査をしたか疑問が残る」と指摘。そして「被告を犯人と認定することは『疑わしきは被告人の利益に』という原則に照らして許されない」と述べた。
 裁判員裁判で5件目の求刑死刑。無罪は初めて。裁判員裁判全体での無罪判決は2件目(一部無罪除く)。裁判員裁判で選任手続きから判決まで40日間というのは今までで最長。
検察側控訴中の2012年3月10日、病死。73歳没。3月27日付で福岡高裁宮崎支部は、公訴棄却の決定をした。




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