求刑死刑判決無期懲役【2016年】






事件概要
罪 状
判 決
判決理由
備  考
S・H(39)  名古屋市守山区の無職S・H被告は1998年6月28日午後4時半ごろ、仕事仲間だった守山区の無職の堀慶末、鹿児島県枕崎市出身で守山区の建築作業員のH・Tの両被告と共謀。愛知県碧南市に住むパチンコ店運営会社営業部長で、店の責任者である男性(当時45)宅に押し入った。家にいた妻(当時36)を脅して家に居座り、ビールやつまみを出させた。家にいた長男(当時8)と次男(当時6)が就寝し、翌日午前1時ごろに夫が帰宅後に夫と妻を殺害、現金60,000円などを奪った。長男と次男にけがはなかった。
 3人は夫婦の遺体を男性の車に乗せ、愛知県高浜市で遺棄した後、H被告の車で同県尾張旭市のパチンコ店に行き、通用口から侵入しようとした。通用口には鍵のほかに防犯装置が設置されており、堀被告らは解除方法が分からず、最終的に侵入を断念した。
 他に堀被告は2006年7月20日午後0時20分ごろ、S被告と共謀し、名古屋市守山区に住む無職女性(当時69)宅に侵入。堀被告はいきなり女性の首を絞め、粘着テープで縛った後、2人で室内を物色。貴金属(時価約39万円相当)や現金約25,000円などを奪った。さらに去り際に堀被告が女性の首を紐で絞めて殺害しようとし、約2か月の重傷を負わせた。奪った貴金属類は2人の知人を通じて質屋で現金化した。堀被告らは、女性宅のリフォームを請け負ったことがある実在の業者を装って訪問。高齢者の独居世帯という情報も事前に把握した上で狙いを定めていた。
強盗殺人、住居侵入、強盗致傷 2016年2月5日
名古屋地裁
景山太郎裁判長
無期懲役
 裁判員裁判。裁判長は、被告側が否定した2人への強盗殺人罪が成立すると認定。そして「事態の推移に応じて次々に殺害し、強盗計画を冷徹に遂行した。生命軽視の態度は明らか。遺族の処罰感情は当然のもの」と指摘した。その上で事件を主導したのは堀被告とし、S被告は一貫して堀被告に従属的な立場で、深く考えることなく短絡的に犯行に及んだと指摘。また、事前に2人を殺害する計画まではなかったことなども考慮し、「死刑を選択することがやむを得ないとまでは認められない」と述べた。2006年の事件についてはS被告には殺意がなかったとして、強盗致傷罪の成立にとどまるとした。  共犯の堀慶末被告は2015年12月15日、名古屋地裁で求刑通り死刑判決。2016年11月8日、名古屋高裁で被告側控訴棄却。2019年7月19日、被告側上告棄却、確定。H・T被告は求刑通り無期懲役が確定。
控訴せず確定。


K・Y(49)  神戸市長田区の無職K・Y被告は2014年9月11日午後3時30分ごろ、自宅近くの路上を歩く小学1年の女児(当時6)にわいせつ目的で近づき、「絵のモデルになって」と声をかけてアパート自室に誘い込み、首をロープで絞めるなどして殺害。16日までに遺体を切断して複数のポリ袋に入れ、近くの雑木林などに遺棄した。 殺人、わいせつ目的誘拐、死体損壊・遺棄 2016年3月18日
神戸地裁
佐茂剛裁判長
死刑
 裁判員裁判。裁判長は殺害の動機について、わいせつ目的並びに犯行の発覚を免れるためと認定。さらに被告側が否定した殺意並びに計画性についても認定した。そして、被害者は1人である点は「残虐性が極めて高く、執拗。被害者が1人とはいえ死刑選択は十分許容される」などと述べ、刑事責任の重大性は揺るがないとした。またK被告が「覚えていない」「分からない」と繰り返し、言葉を濁し続けた点について、「自己の身勝手さや攻撃性などの問題点には十分向き合っているとは言い難い」と非難。そして「殺害手段は残虐性が高く、死体損壊の態様も凄惨。遺族の驚愕、絶望、憤りは察するに余りある生命軽視の姿勢は甚だしく顕著で、慎重に検討しても死刑を回避する事情は見当たらない」とした。  
2017年3月10日
大阪高裁
樋口裕晃裁判長
一審破棄・無期懲役
 裁判長は一審同様、計画性を否認し、わいせつ目的は認定した。ただ、計画性のない事件では事前に殺害を準備するケースに比べて「非難が一定程度弱まる」と指摘した。そして幼い被害者の命を奪った結果は重大、遺族の悲しみや怒りは筆舌に尽くしがたいとしながらも「殺害方法も苦痛をことさら増やしたとはいえず、死刑が十分許容されうるとした具体的、説得的な根拠が示されていない」と認定。さらに被害者が1人の同種事件では、死刑が選択されていない傾向がみてとれると述べ、一審が社会常識を反映する裁判員裁判の判断だった点にも言及。「一審判決は計画性がないことを不当に軽視している。動機や残虐性などの要素を過大に評価した一審の判断は是認できない。控訴審は裁判員裁判の量刑判断は基本的に尊重すべきだが、法的観点に沿って一審を覆すのは裁判員制度の趣旨を損なうものではない。経験則や法的観点から是正せざるを得ない」と述べた。
2019年7月1日
最高裁第一小法廷
山口厚裁判長
検察側上告棄却、確定
 裁判長は決定で、殺害の計画性がなく、他人の命を奪った前科もない点を考慮し、「生命軽視の姿勢は明らかだが、甚だしく顕著だとまでは言えない」と指摘。「究極の刑罰である死刑は慎重に適用しなければならないという観点と同種事件の過去の量刑との公平性の確保を踏まえ、死刑の選択が真にやむを得ないとまでは言い難い」と判断した。
U・T(47)  福岡県豊前市の土木作業員U・T被告は、2015年1月31日午前10時ごろ、母親の車に乗って遊ぶ約束をした同級生の祖母宅近くで降りた、知り合いの小学5年生の女児(当時10)に声をかけ車に乗せて誘拐。不在であることを確認した後、8km離れた豊前市の知人男性宅に女児を連れ出し、強姦。さらに11時半ごろ、手で首を強く圧迫して殺害した後、遺体をバッグに入れて車で自宅に運び、2階寝室の押し入れに隠して遺棄した。U被告は同級生の母親と事実上の夫婦関係にあって同居しており、女児とも顔見知りだった。U被告宅と祖母宅は80mしか離れていない。 殺人、死体遺棄、強姦致死、わいせつ目的誘拐 2016年10月3日
福岡地裁小倉支部
柴田寿宏裁判長
無期懲役
 裁判員裁判。弁護側は殺意を否認し、強制わいせつ致死を主張。判決で裁判長は、殺意を認定し、起訴された4罪の成立を認めた。量刑については、被告の責任は重大としたうえで、同種案件の判例22件と比較検討したうえで、遺族感情に理解を示したが、「殺害をあらかじめ計画していないなど死刑を科すほど生命軽視の度合いが甚だしく大きいとは言えない。前科は殺人罪に関するものではなく、死刑を選択するに当たっては慎重にならざるを得ない」と結論づけた。  U被告は1999年に3名の少女への強姦、強姦未遂事件を起こし、2000年に懲役12年の実刑判決を受けて服役していた。
 裁判員裁判で、求刑死刑判決無期懲役に対し、検察側が控訴したのは初めて。
2017年6月8日
福岡高裁
山口雅高裁判長
検察・被告側控訴棄却
 判決で裁判長は、被告が「わいせつ行為の発覚を恐れ、被害者を殺害した」と殺意を認定。別の女児ら4人に対する性的暴行で懲役刑に服した前科にも触れ、「真摯に反省を深めている態度はうかがえない。動機や態様は冷酷非情で、被害者の無念は計り知れない。刑事責任はすこぶる重い」と非難した。一方で、「犯行はあらかじめ凶器を用意するなど計画的ではなく、残虐性が高いとも言えない。類似の事件と比べて残忍性が高いとは言えない」として、死刑を回避した。
2017年10月24日
最高裁第一小法廷
小池裕裁判長
被告側上告棄却、確定

H・K(44)  岐阜県美濃加茂市の中古車販売業、H・K被告は、2003年ごろから知り合い、翌年から同居した女性Aさんに出会い系サイトや映像をインターネットで配信して代金を得る「ライブチャット」をさせて金を稼がせていた。2009年7月10日、ライブチャット中にAさん(当時26)が居眠りしたことに腹を立てたH被告は、Aさんに自ら眠らないよう首に鎖を巻いて上から吊すように仕向け、そのまま放置した。座ると首が絞まる状態で、Aさんは立ち続けられず窒息死した。Aさんからの搾取などで、H被告が手にした金は4000万円余りに及んだ。H被告はW受刑者と共謀し、大型冷凍庫でAさんの遺体を凍らせ、電動のこぎりで切断して犬山市の山中などに遺棄した。その後、H被告は2009年7月〜11年9月、Aさんの口座から約525万円を引き出すなどした。
 H被告は知り合いの女性店員Mさんが、他の店員に交際を迫っていたのを妨害したと邪推。一緒に店に通っていたW受刑者と共謀し、2011年11月24日、愛知県犬山市の駐車場に止めた車の中で、Mさん(当時27)の首を手で絞めて殺害。遺体を美濃加茂市のHの自宅に移して業務用冷凍庫に入れ、福井県大野市まで車で運び、九頭竜湖に投げ捨てた。
殺人、傷害致死、死体遺棄、窃盗、詐欺、組織犯罪処罰法違反(犯罪収益等隠匿) 2016年11月2日
名古屋地裁
景山太郎裁判長
無期懲役
 裁判員裁判。H被告はAさんへの傷害致死については無罪を主張。Mさん殺害については認めた。
 判決は、Aさんについての傷害致死を認めた。そして、「Aさんが死亡し、代わりとなる金づるを探す中でMさんに邪魔されたと決めつけ殺害に及んだ。極めて自己中心的で、非情、残忍な犯行」と批判した。Aさんへの傷害致死罪も「居眠りさせずに出会い系サイトを利用した詐欺行為を行わせるため、立っていなければ鎖で首が絞まるようにさせた。人道にもとる犯行」と指摘した。一方で、2年5カ月の間に2人の命を失わせたことに関し「故意性など罪の質が異なり、他人の生命を軽視する同種の犯行を繰り返した場合のように、生命軽視の態度が甚だしいとまでは評価できない」と結論付けた。そして、「死刑の選択を考慮させるが、裁判例の傾向等も踏まえると死刑選択が真にやむを得ないとまでは言えない」とした。
 一審の初公判から判決までの実審理期間160日間は、2017年11月時点で最長(その後、抜かれる)。共犯のW受刑者は2015年3月2日、名古屋地裁で懲役14年(求刑懲役16年)判決。控訴せず確定。
2017年12月4日
名古屋高裁
山口裕之裁判長
一審破棄・無期懲役(被告側控訴)
 弁護側は、H被告が殺人の犯行を主導したとは断定できず、傷害致死の事実認定にも誤りがあるとして、一審判決は重すぎると主張した。
 判決で裁判長は、H被告が首謀者と判断。傷害致死についても、H被告が強く支配していて、鎖を巻くよう暗に指示したと指摘したうえで、身勝手で悪質な犯行で刑事責任は重いと結論付けた。ただし一審判決を破棄し、一審判決の主文で犯罪に関する没収金の一部が犯罪被害財産と明示されていなかった部分を変更、被害財産と認定した上で、改めて無期懲役の判決を言い渡した。
2018年10月24日
最高裁第二小法廷
山本庸幸裁判長
被告側上告棄却、確定

K・S(23)  岐阜県関市の無職、K被告は2014年11月11日午前、女性を襲おうと思って自宅近くのホームセンターで包丁を買い、粘着テープも用意してうろついていたら、自宅から約1km離れた民家の洗濯物に地元女子中学校の女子用ジャージーを見つけたため、午前11時55分ごろ、強姦しようと侵入。家にいた男性(当時81)と妻(当時73)に見つかったため、二人の首を刺して殺害した。さらに、体調不良で早退していた女子中学生の孫娘に包丁を突き付け、2階に上がれなどと脅したが、孫娘は振り切って外へ逃げて助かった。 殺人、強姦未遂、住居侵入、銃刀法違反 2016年12月14日
岐阜地裁
鈴木芳胤裁判長
無期懲役
 裁判員裁判。起訴事実に争いはない。精神鑑定でK被告は、女性の脚に執着を示す「フェティシズム障害」と医師に診断された。裁判長は、「「2人の尊い命が奪われており、結果は重大。牛刀で首を刺すなど、強固な殺意による犯行。孫の成長を楽しみにしていた被害者の無念は想像するに余りある」と指摘。一方で、夫婦と同居していた孫の女子中学生を乱暴して性的欲求を満たしたいという動機に、被告の精神障害が直接影響したと指摘。殺人に至った背景にも「障害に基づく不安増大があった」と述べ、死刑を回避した。
控訴せず確定。




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