求刑無期懲役、判決有期懲役 2018年度





 2018年度に地裁、高裁、最高裁で求刑無期懲役に対し、有期懲役・無罪の判決が出た事件のリストです。目的は、無期懲役判決との差を見るためですが、特に何かを考察しようというわけではありません。あくまで参考です。
 新聞記事から拾っていますので、判決を見落とす可能性があります。お気づきの点がありましたら、日記コメントでご連絡いただけると幸いです(判決から7日経っても更新されなかった場合は、見落としている可能性が高いです)。
 控訴、上告したかどうかについては、新聞に出ることはほとんどないためわかりません。わかったケースのみ、リストに付け加えていきます。
 判決の確定が判明した被告については、背景色を変えています(控訴、上告後の確定も含む)。






【2018年度の有期懲役、無罪判決】

氏 名
物袋勇治(29)
逮 捕
 2014年3月18日(死体遺棄容疑)
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、保護責任者遺棄致傷、わいせつ目的誘拐、強制わいせつ致傷、強制わいせつ、児童買春・児童ポルノ禁止法違反(ポルノ製造)他
事件概要
 埼玉県富士見市のベビーシッター物袋(もって)勇治被告はベビーシッターのマッチングサイトに女性を装って登録。2014年3月14日、サイトを通して依頼された横浜市に住む女性の長男(当時2)と次男(当時8か月)を預かることとなった。物袋被告に依頼された別の30代の男性は午後7時ごろ、JR杉田駅で女性から兄弟を預かった。物袋被告は午後8時ごろ、横浜駅で男性から兄弟を預かった。しかし物袋被告は3月15日、長男に暴力を加えてわいせつな行為をしたうえ、鼻や口を手でふさぐなどして窒息死させた。そして次男にはミルクを与えなかったり裸のまま放置したりして必要な世話をせず、低体温症や重度の低血糖症、脱水症にさせた。
 他に2012年11月から2014年2月の間に男児を含む約10人に対し、下腹部を強くつかむなどの暴行を加えた。また、他の幼児約20人の裸などをデジタルカメラやスマートフォンで撮影し、パソコンなどに保存した。

 物袋被告は15日午前、母親にメールで2児の様子を伝えた後、連絡が途絶えた。16日に2児を引き取る予定だった母親は県警磯子署に相談。県警は、物袋被告がベビーシッターをしている富士見市のマンションを特定。17日午前8時ごろ、マンション3階の自宅から外出しようと物袋被告が出てきたところで捜査員が声を掛けたが、物袋被告は家の中に入られることを拒否。中に入ると、長男が畳の部屋で仰向けに倒れていた。捜査員は次男を保護し、物袋被告から任意で事情聴取。県警は、物袋被告が17日、死亡した長男を残したまま外出しようとした行為が死体遺棄容疑に当たると判断し、18日未明に逮捕状を取った。しかし任意での事情聴取が長時間に及んだことから、両親が住む横浜市磯子区の実家に物袋被告をいったん帰宅させ、18日午後に改めて任意同行を求め、死体遺棄容疑で逮捕した。

 物袋勇治被告は2012年3月から、横浜市緑区の保育施設でもパートをしていた。働きぶりはまじめで穏やかでトラブルもなかった。2012年8月ごろから、「ベビーシッターを始める」と言ってきて、週1回勤務となった。物袋被告は、サイト内で複数の名前を名乗って、預かり保育の仕事を探していた。同社に「営業がしつこい」などといった苦情が相次いでいた。
 兄弟の母親はシングルマザーで、仕事に出るためマッチングサイトを利用した。過去に夜間保育園に子供を預けた際、髪を無断で切られたり、大人用の薬を服用させられたりした経験があったため、マッチングサイトを利用していた。物袋被告と3月上旬から7回ほどメールでやりとりして預けることを決めた。女性は以前もサイトで見つけたシッターに預けたことがあり、今回は預ける相手の本名や住所、電話番号を確かめず、顔を合わせたこともなかった。しかし母親は一年前にも複数回物袋被告に長男を預けたことがあり、良い印象が持てず、「もうこの人に預けるのはやめよう」と思っていた。しかし今回は物袋被告が「山本」と名乗っていたことや、預けるときに代役である別の男性としか会っていなかったことから、「山本」が物袋被告とは気付かなかった。

 神奈川県警は4月7日、物袋被告を、弟に対する保護責任者遺棄致傷容疑で再逮捕した。横浜地検は同日、死体遺棄容疑について処分保留とした。
 県警は4月28日、物袋被告が2012年12月13日〜2013年8月25日頃、ベビーシッターとして預かっていた当時1歳の女児と3歳の男児の裸などをデジタルカメラで約50枚撮影し、パソコンなどに保存したとして、児童買春・児童ポルノ禁止法違反(製造)容疑で再逮捕した。
 県警は5月250日、以前預かった別の子ども2人の裸を撮影、保存したとして、児童買春・ポルノ禁止法違反(製造)容疑で者見被告を再逮捕した。
 県警は6月10日、物袋被告は2012年11月15日頃〜2014年2月22日頃、東京都内や神奈川、埼玉県内で、ベビーシッターとして預かった当時2歳と4歳の男児2人のほか、特定できていない男児、女児計11人の裸などをデジタルカメラやスマートフォンで計約150枚撮影し、パソコンなどに保存したとして、児童買春・児童ポルノ禁止法違反(製造)容疑で再逮捕した。
 県警は7月1日、長男への殺人容疑で再逮捕した。
 横浜地検は7月17日から3か月、責任能力の有無を判断する鑑定留置を実施。刑事責任を問えると判断し、10月24日、殺人罪などで追起訴した。2015年3月31日、横浜地検は物袋被告の死体遺棄容疑について不起訴処分とした。
裁判所
 東京高裁 大熊一之裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2018年1月30日 懲役26年(検察・被告側控訴棄却)
裁判焦点
 2017年10月12日の控訴審初公判で、検察側は、類似の事件では死刑または無期懲役が妥当であって「少なくとも無期懲役」を求めた。弁護側は一審と同様に殺人と他の罪が一緒に審理されたことを問題視し、幼児の陰部をもてあそんだり、撮影した事実が、物袋被告への偏見を生み、心証を悪くしたまま殺人の認定に至ったと、区分審理のやり方があったと主張。そのうえで、「溺死の可能性」を指摘する法医学者と、事件の原因は同被告の「小児性愛でなく、幼いころにいじめられたPTSDだ」と指摘する精神科医の証人尋問を請求したが、高裁は許可しなかった。控訴審は即日結審した。
 判決で大熊一之裁判長は、「溺死の可能性は0%」とした医師の証言などから殺人罪の成立を認定し、弁護側の主張を退けた。そして「被告の生命軽視の態度は甚だしく、犯情は極めて重い」と断じたが、量刑については、「一審判決は犯情の重さの評価に足りない面があった」とする一方、「懲役26年はやや軽いと思われるが、軽すぎて裁量の幅を逸脱した不当なものであるとまではいえない。無期懲役以上でなければ不合理とまではいえない」と述べ、検察側の主張を退けた。懲役17年が相当と減刑を求めていた弁護側の主張に対しては「犯行の重大さに照らせば、謝罪の念など情状を考慮するにも限度がある」などと退けた。
備 考
 ベビーシッターに必要な公的資格はなく、厚生労働省は利用者数も把握していない。乳幼児らを6人以上預かる施設の場合、児童福祉法に基づき、自治体への届け出が必要だが、5人以下は定められていない。行政のチェックが届かないなか、ネット上にはシッターを探す人となり手が情報交換するサイトが複数あり、必要に迫られた親らが利用していた。
 一部の大手仲介サイトでは、推奨する民間資格「チャイルドマインダー」の取得者のみをシッターとして登録し、技能研修も実施している。
 なお事件が起きた横浜市では、2003年から、市内1か所(2005年から2か所)の保育園に委託し、「24時間型緊急一時保育」制度をスタートさせていた。
 厚生労働省は2014年7月、再発防止に向けた「子どもの預かりサービスの在り方に関する専門委員会」を設置した。同委員会は同年11月、仲介サイト運営者向けに▽シッターの身元や研修受講状況の確認▽保護者、シッター双方に対する相談窓口の設置−−などを促すガイドライン(指針)の作成を提言。シッター派遣業者や、保育する乳幼児が5人以下の施設にも知事などへの届け出義務を課すことなどを求めた。
 2015年6月3日、インターネット上でベビーシッターなどの保育者と保護者を仲介する「マッチングサイト」の運営ルールを定めたガイドラインを公表した。法的拘束力はないものの、翌年4月から始まる都道府県などへの保育者の届け出制度に対応するよう促している。届け出制度の施行後は、サイトへの登録を届け出済みの保育者に限ることを求めた。ほかに、預かっている乳幼児の様子を引き渡し時に書面で報告するなどの利用規約を定める▽保育者が複数の名前で登録できなくする▽相談窓口を設置する――などを定めた。ガイドラインの順守状況や、利用規約などについてサイトで公表することも求めた。
 2016年4月より、1日に預かる子どもが1人の場合でも個人シッターに児童福祉法に基づく届け出を義務づけ、違反者には50万円以下の過料を科すようにした。サイト運営者向けのガイドラインも作成し、届け出済みのシッターだけをサイトに登録するよう要請した。しかし、ガイドラインに法的拘束力はない。
 2018年現在も、ネット上で無届けのシッターが募集を呼びかけるケースが後を絶たないとされる。

 2016年7月20日、横浜地裁の裁判員裁判で求刑無期懲役に対し一審懲役26年判決。被告側は上告した。2018年9月10日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
武田清美(52)
逮 捕
 2017年4月19日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、現住建造物等放火
事件概要
 秋田県羽後町の板金業・武田清美被告は、2017年4月8日午前8時1分ごろ、同居する母親(当時74)に灯油をかけて火をつけ、全身やけどを負わせた。同時にストーブにも灯油をかけ、木造2階建ての自宅は全焼した。母親は搬送時に「息子が火をつけた」と話し、約9時間後に病院で死亡した。この火事で自宅のほか、隣接する住宅1棟と小屋3棟の計5棟が全焼した。
 武田被告は、母親と妻との3人暮らし。出火当時、妻は外出中だった。自宅にいた武田被告はのどにやけどを負い、19日に退院。同日、県警は逮捕した。武田被告は地元消防団の副分団長だった。
裁判所
 秋田地裁 三浦隆昭裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2018年1月31日 懲役25年
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2018年1月23日の初公判で、武田被告は「間違いありません」と起訴内容を認めた。
 冒頭陳述で検察側は、家の老朽化が進んでいることや妻のことについて母から小言を言われ、不満を募らせて犯行に至ったと指摘。「母親の首を絞めて気絶させた後、ストーブと母親に灯油をかけて燃え上がらせた。母親の失火と見せかけ、火災保険金を受け取ろうとした」と述べた。弁護側は「保険金目的ではない」と反論。妻と母との嫁しゅうとめ問題で板挟みになり、精神的に追い込まれていたとし、「母と家がなくなれば(悩みから)解放されると思って犯行に及んだ」と主張した。
 24日の第2回公判で被告の妻に対する証人尋問が行われ、火災保険金目的の犯行だとする検察側の主張について、妻は「(夫は)お金に執着する人ではなく、そんなことができるとは思えない」と述べた。
 25日の第3回公判で被告人質問が行われ、武田被告は検察、弁護側双方から保険金目的の有無について質されると「火災保険金のことが頭にあったのは否定できない」と答えた。さらに「母親の失火に見せかけるため、母親を気絶させる目的で放火する前に首を絞めた」と述べた。しかし、武田被告は母親について聞かれると「大事な人だった」と涙ながらに語り、「仕事の悩みなどで追いつめられていたため、自ら燃えている家に飛び込もうと思ったができなかった。母親を巻き込んでしまい本当に申し訳ない」と謝罪の言葉を口にした。
 26日の論告求刑で検察側は、妻と折り合いが悪く、古くなった家の修理を催促する母に対し、武田被告が不満やいら立ちを募らせていたと指摘。「被告に家を建て替えるだけの経済的な余裕はなかった。放火と殺人を同時に行い、母親の失火に見せかけることで、火災保険金を得ようと考えて犯行に及んだ」と結論付けた。その上で「母親を金を得るための道具とした。体に火が付き、逃げながら哀願する母親を追い掛けてさらに灯油を掛けるなど、極めて残忍だ」と述べた。
 同日の最終弁論で弁護側は、「被告は経済的に困窮していなかった。複数の生命保険を解約すれば現金を得られる状況だった」と反論。「嫁しゅうとめ問題や仕事で思い悩み、自殺を考えて犯行に至った。被告の妹や被害にあった近隣住民も厳しい処罰を求めておらず、被告の社会復帰を強く望んでいる」と情状酌量を求めた。
 判決理由で三浦隆昭裁判長は、母親と妻の折り合いが悪いことや、母親から家の修繕を要求されたことなどに悩んで犯行に及んだとし、「母親を生きたまま燃やした犯行態様は強固な殺意に基づいており、残忍で悪質。嫁しゅうとめ問題などの悩みから解放され、火災保険金も得られると考えて犯行に及んだ」と指摘した。
備 考
 

氏 名
宮口義弘(58)
逮 捕
 2016年4月15日
殺害人数
 1名
罪 状
 傷害致死、死体遺棄
事件概要
 埼玉県春日部市の不動産コンサルタント・宮口義弘被告は約200万円の借金返済を免れるため、2016年2月3日頃、春日部市に住む知人の無職男性(当時73)を窒息させて殺害し、遺体を自分の車の荷台に隠した。5日頃、遺体を群馬県藤岡市の空き地に埋めた。(以上は起訴内容)
 男性は一人暮らしで、2月5日に福祉関係者が訪ねたが、室内に姿がなく、連絡を受けた男性の長男が2月12日、春日部署に行方不明者届を提出。埼玉県警は事件に巻き込まれた可能性があるとみて捜査を開始。交友関係から宮口被告に話を聞いたが、説明に不審な点があったため、関係先を捜査したところ、藤岡市の空き地に掘り返した場所があり、地表に手が出ているのを4月8日に捜査員が発見。県警は15日、宮口被告を死体遺棄容疑で逮捕した。6月9日、強盗殺人容疑で再逮捕。
裁判所
 さいたま地裁 高山光明裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2018年2月6日 懲役10年
裁判焦点
 裁判員裁判。宮口義弘被告は逮捕当初から犯行を否認している。
 2018年1月16日の初公判で、宮口義弘被告は「殺害はしていない」と強盗殺人罪を否認し、死体遺棄については「遺体を運んだが、埋めてはいない」と述べた。
 検察側は、冒頭陳述で「宮口被告は借金の返済をすると嘘の話をして、被害者を車で連れ出して殺害した」と述べ、男性の遺体の鼻や口に貼られていた粘着テープと、同じ種類のテープを、殺害された当日に購入するなど「宮口被告が、犯人でなければ説明できない特異な行動がある」と指摘した。一方、弁護側は「殺害したのは男性の知人である中国人で、宮口被告は指示されて遺体を車で運んだ。殺害や遺棄はしていない」などと主張した。
 29日の論告で検察側は、「借金を返すとうそをついて被害者を連れ出し、窒息死させて遺体を埋めた残忍な犯行だ」と述べた。
 同日の最終弁論で、弁護側は「被害者の遺体などに被告の痕跡はなく、被告は男性を殺害した外国人に言われて遺体を運んだだでけ、殺害していないし埋めてもいない」として、強盗殺人の罪については、改めて無罪を主張した。
 2月2日の公判で、検察側は公訴事実に単独または何者かと共謀し、男性を殺害して死体を遺棄したと新たに追加した。これを踏まえ検察側は「仮に何者かと共謀したことが認められた場合でも、被告人は主導的な役割を果たしていた。被告人を酌量する特段の事情はない」と先の論告求刑と変わらず、無期懲役を求刑した。
 一方、弁護側は「遺体の運搬は共謀によるもので争わないが、遺体を土に埋めた事実はないし、強盗殺人については、単独であれ共謀であれ、そのような事実はない」と強盗殺人について無罪を主張した。
 判決で高山光明裁判長は、宮口被告が事件前後に男性に会っていたとして「事件への関与が強く推認される」と指摘した。しかし、被告に共犯者がいた可能性が否定できないとして、単独か氏名不詳者との共謀による犯行と認定。そのうえで、「犯行の態様が明らかでない。宮口被告に殺意がないまま、とりあえず制圧しようとして顔や足に粘着テープを貼るなどとして窒息させたという合理的な可能性も考えられる」として強盗殺人の成立を認めず、傷害致死を適用した。
備 考
 検察・被告側は控訴した。2019年2月8日、東京高裁で一審破棄、地裁差し戻し。

氏 名
竹内敏和(48)
逮 捕
 2013年1月25日
殺害人数
 1名(他に火災で1名死亡)
罪 状
 殺人、現住建造物等放火、傷害、覚醒剤取締法違反(使用)他
事件概要
 無職、竹内敏和被告は2013年1月25日午前9時40分、堺市の木造2階建て共同住宅で、父親(当時82)の腹を殴り、包丁で刺して失血死させ、室内に灯油をまいて火を付けた。パンツ1枚で飛び出してきた竹内被告は、住宅の住人と路上に止まっていたタクシーの運転手など計3人に殴るなどの暴行を加え鼻の骨を折るけがを負わせるなどした。またこの火災で、2階に住む女性(当時63)が全身やけどで4日後に死亡した。他に2人が負傷した。
 竹内被告はたびたび父親宅に金の無心に訪れていた。他に2013年1月、覚醒剤を使用した。
 大阪府警は傷害容疑で25日に竹内被告を逮捕。この時取り調べ中の警察官を殴ったとして、公務執行妨害の現行犯でも逮捕されている。処分保留となったが、2月15日、覚醒剤取締法違反(使用)容疑で再逮捕。3月6日、現住建造物等放火と父親の殺人容疑で再逮捕。
 鑑定留置の結果刑事責任は問えると判断し、大阪地検堺支部は9月20日に殺人他の容疑で竹内被告を追起訴した(覚醒剤取締法違反では起訴済み)。住人の女性が死亡した件について、同支部は「女性を殺害した実行行為は認めがたい」としている。
裁判所
 最高裁第三小法廷 林景一裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2018年2月8日 懲役30年(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 
備 考
 2015年2月10日、大阪地裁堺支部の裁判員裁判で求刑無期懲役に対し一審懲役30年判決。2016年3月11日、大阪高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
片倉竜理(48)/三井樹(46)
逮 捕
 2016年9月7日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、銃刀法違反(加重所持)他
事件概要
 名古屋市の指定暴力団山口組系傘下の組管部、片倉竜理(たつまさ)被告と、大阪市の指定暴力団山口組系傘下の組員、三井樹(たつき)被告は、神戸山口組系傘下組織の元幹部(当時64)の知人の男(当時65)と共謀し、2016年7月15日午後4時35分ごろ、名古屋市中区のマンション4階の一室で、幹部を拳銃で射殺した。3人は車で逃走。逃走に使われたとみられる盗難車が現場から約2km離れた駐車場で全焼しているのが見つかった。
 部屋に居合わせた幹部の知人である無職男性が119番通報した。
 警察は8月、現場の部屋にあった携帯電話を盗んだ窃盗の容疑で知人の男を逮捕し、片倉被告と三井被告を逃走に使った盗難車の窃盗の容疑で逮捕した。9月7日、殺人容疑で再逮捕した。
裁判所
 名古屋地裁 奥山豪裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2017年2月20日 懲役30年
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2018年1月22日の初公判で、認否について片倉被告は「黙秘します」、三井被告は「ありません」と話した。
 検察側は冒頭陳述で、3人は過去に同じ刑務所に服役して知り合い、幹部と知人の男は幼なじみだったと指摘。知人の男が両被告を手引きし、2人のうちのどちらかが拳銃を撃ったと主張した。そして弁護側の無罪主張について、「防犯カメラの映像など他の証拠とも一致し、供述の信用性に問題はない」と述べた。
 弁護人は犯行を認めた知人の男の供述について、「体調不良を訴える中での取り調べなどで得られた供述で、証拠能力がない。愛知県警の捜査員が便宜供与した」と主張し、「有罪を証明できる証拠はない」などと述べ、起訴された全ての事件で無罪を主張した。
 2月14日の論告求刑で検察側は、防犯カメラに写った現場の状況と供述内容が一致しており、「信用性は高い」と指摘。「強固な殺意に基づき、無防備な被害者を一方的に殺害した冷酷で卑劣な犯行。社会に与えた衝撃と不安も大きい」と述べた。
 同日の最終弁論で弁護側は、愛知県警捜査員が男に刑を軽くするなどと持ち掛けたと主張。「違法な取り調べに基づいており、証拠能力はない」と反論した。
 判決で奥山豪裁判長は「至近距離から拳銃を発射し短時間で殺人を遂行し、証拠隠滅を図るなど、明確な殺意に基づく冷酷な犯行で計画性が高い」と指摘した。弁護側の無罪主張に対し、男が事件について両被告の関与を告白した内容は「(男の)本来の記憶を供述している」と判断し、供述の信用性を認めた。警察官が男に差し入れをするなどした取り調べの不当性を指摘したが、「検察官に対する供述の任意性に疑いは認めれらない」として供述調書を採用し、有罪とした。結論付けた。しかし量刑では、「対立による組織的犯行とはいえず、無期懲役は適切でない」と判断した。
備 考
 知人の男は起訴後に拘留されていた刑事施設から病院に搬送されたが、2016年11月12日、病死した。
 事件当時、殺害された幹部と部屋に居合わせて通報した知人男性は、2016年9月6日に覚せい剤取締法違反罪で名古屋地裁から懲役3年の実刑判決を言い渡され、そのまま確定。11月上旬に病死している。
 被告側は控訴した。2018年7月11日、名古屋高裁で一審破棄、懲役28年判決。

氏 名
羽鳥浩一(46)
逮 捕
 2012年8月30日(窃盗、住居侵入容疑。9月19日、強盗殺人容疑で再逮捕)
殺害人数
 2名
罪 状
 殺人、非現住建造物等放火
事件概要
(以下は起訴事実と報道をまとめたもの。無罪となっているため、殺人・放火等については事実と異なると裁判で認定される)
 羽鳥浩一被告は2011年3月10日頃、当時同居していた熊谷市の自宅で、父(当時68)を何らかの方法で殺害しと母(当時69)の首を圧迫して窒息死させたうえ、同月11日未明、自宅に灯油をまいて火を付け、木造2階建て住宅約119平方メートルを全焼させた。羽鳥被告は25歳ごろから2010年5月まで親族が経営する市内の建設会社に勤めていたが、事件当時は介護のために退職し、無職だった。父親も母親も脳梗塞などを患っており、母親は足が不自由だった。羽鳥被告は事件当時百数十万円の借金があり、両親からも金を借りていた。
 羽鳥被告は事件後に行方不明となり、6日後の3月17日、静岡・伊豆半島の崖下に父親の車が転落しているのを地元の漁師が見つけ110番。現地に赴いた県警の捜査員が、近くの路上で羽鳥被告を発見した。羽鳥被告は「(伊豆には)釣りをしに来た。(発生時には)既に家を出ていたので火災は知らない」と供述していた。
 その後、羽鳥被告は親族の知人が経営する群馬県のアパートに移り、ペットショップで働きながら生活していた。事件後も、お盆と彼岸に必ず両親の墓参りに訪れていた。
 司法解剖で母親の首に絞められた痕があったほか、2人とも煙を吸い込んでいなかったことが判明。県警は何者かが2人を殺害した後、犯行を隠すため放火したとみて捜査を始めた。物色や外部からの侵入の形跡もなかったことなどから、事件直後に車で家を出たまま数日間行方をくらましていた羽鳥被告が捜査線上に浮上。県警は早い段階で任意で事情を聴いたが、羽鳥被告は殺害を否認していた。
 埼玉県警の捜査で、携帯電話のGPS(全地球測位システム)で火災発生時に自宅付近にいたことが確認され、2014年5月28日、埼玉県警は非現住建造物等放火容疑で羽鳥被告を逮捕。6月17日、殺人容疑で羽鳥被告を再逮捕した。
裁判所
 最高裁第二小法廷 菅野博之裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2018年2月21日 無罪(検察側上告棄却、確定)
裁判焦点
 菅野博之裁判長は決定で、検察側の主張を「上告理由に当たらない」と退けた。3裁判官全員一致の結論。
備 考
 2015年3月3日、さいたま地裁の裁判員裁判で求刑無期懲役に対し、無罪判決。2016年6月7日、東京高裁で検察側控訴棄却。

氏 名
遠藤裕蔵(35)
逮 捕
 2016年5月17日
殺害人数
 1名
罪 状
 傷害致死、死体遺棄他
事件概要
(以下は起訴内容に基づく)
 福島県いわき市の建設会社社長の実弟で同役員の遠藤裕蔵被告は、社員の国井政夫被告、造園業の男性、無職男性2名と共謀。2015年9月5日午後8時頃から午後11時頃の間、会社事務所で同市に住む土木作業員の男性(当時46)の頭を木刀で殴るなどして死亡させ、現金約40万円やキャッシュカードなどを奪った。さらに翌6日午前7時〜正午ごろ、造園業の男性を除く3人及び建設会社社長の男性と事務所南側に重機で穴を掘り、男性の遺体をいったん遺棄。さらに国井被告と社長は12月17日午後11時半〜翌18日午前2時頃に遺体を事務所北側に埋め直した。
 この建設会社は2005年9月に設立され、翌年7月に現在の場所に移転した。住宅解体のほか、近くの山を切り開いて土砂を採取し、東京電力福島第一原発事故の除染で、表面を削った地面にかける土を供給。敷地内ではデイサービスセンターなども運営していた。男性は同社と正式な雇用契約はなかったが頻繁に出入りしていた。被告の一部と男性とは、金銭トラブルがあった。建設会社は2016年6月に破産している。
 2015年10月、男性が行方不明になったと母親が県警に相談。県警は、男性が直前まで働いていた同社の関係者らから事情を聞き、5月15日から同社敷地内で捜索を行った。遺体は、逮捕された6人の一部が説明した場所から発見された。
 2016年5月16日夜、男性の遺体が見つかり、県警は17日、建設会社の社長の男性や国井被告など6人を死体遺棄容疑で逮捕。6月17日、6人を強盗殺人容疑で再逮捕。福島地検郡山支部は6月29日、社長の男性と造園業の男性を除く4人を強盗致死、死体遺棄容疑他で起訴。「被害男性への暴行や凶器などから殺意を立証できない」として強盗致死罪を適用した。造園業の男性は死体遺棄時現場にいなかったとして、強盗致死容疑で起訴。社長の男性については1度蹴っただけで、ほかの5人との謀議はなかったとして暴行及び死体遺棄容疑で起訴した。
裁判所
 仙台高裁 嶋原文雄裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2018年3月6日 懲役11年(検察・被告側控訴棄却)
裁判焦点
 嶋原文雄裁判長は「被告の犯行動機は被害者への恨みのためで、金銭奪取の共謀は認められない」と判断した。弁護側は刑の軽減を求めたが「犯行態様に事実誤認はない」と退けた。
備 考
 強盗致死罪などに問われた国井政夫被告は、2017年2月7日、福島地裁郡山支部の裁判員裁判で求刑無期懲役に対し一審懲役30年判決。2017年7月13日、仙台高裁で被告側控訴棄却。
 強盗致死罪などに問われた無職の男性は、2017年3月24日、福島地裁郡山支部の裁判員裁判で、一審無罪判決(求刑懲役12年)。男性について「事件前後に繰り返し暴行を受け、命令に逆らえず現場に同行した」と指摘。「共謀を認めるには合理的な疑いが残る」とした。控訴せず、確定。
 強盗致死罪などに問われた無職の男性は、2017年6月6日、福島地裁郡山支部の裁判員裁判で、一審懲役26年判決(求刑懲役30年)。井下田英樹裁判長は「倒れた被害者に殺虫剤を利用した火炎放射を行うなど、執拗に暴行を加えた。犯行に主体的に関与しており、責任は重い」と述べた。2017年10月19日、仙台高裁で被告側控訴棄却。2018年3月19日付で最高裁第一小法廷(小池裕裁判長)は、被告側上告を棄却、確定した。
 暴行、死体遺棄容疑に問われた社長の男性は、2017年6月26日、福島地裁郡山支部で、一審懲役5年判決(求刑懲役7年)。井下田英樹裁判長は、移し替えるなどした2度の遺棄について「死者の尊厳を軽視する悪質な行為。2回目は自己保身の意図が顕著だ」と指摘した。控訴せず。確定。
 強盗致死罪に問われた造園業の男性は、2017年7月3日、福島地裁郡山支部の裁判員裁判で、一審懲役18年判決(求刑懲役25年)。井下田英樹裁判長は「強度の暴行を執拗に加え、残忍な犯行」と指摘。ただ共犯者らを制止する発言もあったとして「従属的関与にとどまる」と述べた。2017年11月9日、仙台高裁で被告側控訴棄却。2018年2月6日付で被告側上告棄却、確定。

 2017年7月27日、福島地裁郡山支部で求刑無期懲役に対し、一審懲役11年判決。強盗致死ではなく、傷害致死を適用した。

氏 名
川内裕貴(24)
逮 捕
 2017年5月22日(窃盗容疑)
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗致死、住居侵入、窃盗他
事件概要
 住所不定、無職川内裕貴被告は、いとこの男性と共謀。2017年5月14日午前2〜3時ごろ、滝川市に住むいとこの祖母(当時83)宅に侵入。寝ていた祖母を複数回殴るなどして死亡させたうえキャッシュカードを奪った。そして祖母の遺体を砂川市の山林の中に埋めた。祖母は一人暮らしだった。
 いとこ、川内被告は、川内被告の弟と共謀し、5月16日から22日にかけ、キャッシュカードから現金300万円を引き出した。
 5月20日に家族が滝川署に行方不明届を出した。22日、窃盗容疑で3人が逮捕された。いとこが、祖母の遺体を山中に埋めたと供述。28日、祖母の遺体が発見された。
 6月6日、いとこが滝川署の留置施設で入浴中に自殺を図って意識不明の重体となり、8日に釈放された。2018年6月22日、入院先で死亡した。
 6月15日、死体遺棄容疑で川内被告を再逮捕。同日、窃盗容疑で弟を再逮捕。30日、強盗殺人と住居侵入容疑で川内被告を再逮捕。同日、川内被告と弟は窃盗容疑で起訴された。死体遺棄容疑については保留となった。
 7月21日、札幌地検は、捜査の結果遺体や犯行状況などから、「殺人の立証」ができないと判断し、川内被告を強盗致死などの罪で起訴した。死体遺棄については、従属的な関与にとどまったとして、不起訴処分とした。
裁判所
 札幌地裁 中桐圭一裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2018年3月6日 懲役28年
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2018年2月26日の初公判で、川内被告は「間違いない」と起訴内容を認めた。
 冒頭陳述で検察側は、借金で困っていた川内被告が、いとこから計画を持ち掛けられたと指摘した。そして、「いとこの犯行計画に乗り、実行犯として暴行を加えた。金に困ったために命を奪ってでもカードを盗もうとした」とした。弁護側は、事件はいとこの計画に基づくもので、被害者をロープなどで縛る役割にすぎなかったと主張。そして「被告は被害者を傷つける気がなかった」と主張するとともに、いとこが現場に戻り、被害者に暴行を加えた可能性に言及した。
 28日の公判で川内被告は、「借金から解放されたくて、楽して金が手に入る短絡的な行動をしてしまった」と話した。また犯行の計画について弁護側の「被害者が死亡すると思ったか」という質問に対して「はい」と答えた。
 3月2日の論告で検察側は、「老齢女性の寝込みを襲い、止めようとする被害者の言葉も意に介さずに激しい暴行を加えた冷酷で悪質な犯行」と指摘。川内被告の暴行が死亡に直結し「犯行全般にわたり、自発的に重要な役割を果たした」とした。そして、「その責任は非常に重く、いとこに劣らない」と述べた。
 同日の最終弁論で弁護側は、「川内被告は、被害者を拘束する役に過ぎず、犯行計画もすべては知らない。さらに、いとこによる追加の暴行の可能性もある」と主張し、懲役15年を妥当とした。
 最終陳述で川内被告は「私がしたことは一生許されない。死ぬまで悔いて、償いをしていきたい」と述べた。
 判決で中桐裁判長は、「多額の報酬を目的に1人で被害者宅に侵入するなど意欲的に犯行に関与し、死に直結する暴行を加えるなど役割は大きい。多数回強く殴るなど凶暴かつ悪質」と指摘。また弁護側の主張に対し、「追加的暴行の可能性の有無は刑の重さを決める上で影響する事情とは言えない」と退けた。一方で、中桐裁判長は川内被告は犯行計画の詳細を知らされず、孫が主導的な役割を果たした、反省の態度もみられるとして、無期懲役は重すぎると判断した。
備 考
 弟は執行猶予付きの有罪判決が確定している。

 控訴せず確定。

氏 名
斎藤邦実(31)
逮 捕
 2015年2月1日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗致死、死体遺棄、営利略取、逮捕監禁
事件概要
 住所不定、無職の斎藤邦実被告は、NY被告、TS被告、元少年U被告と共謀。2010年12月6日午後8時ごろ、振り込め詐欺グループの仲間だった新宿区の職業不詳の男性(当時24)が交際していた女性の住む豊島区のマンションに入ったところ、暴行。拉致して八王子市内のマンションに連れ込み、7日頃まで監禁して暴行して男性宅の鍵を奪い、男性宅から現金300万円などを奪った。さらに暴行を加え、男性を脳挫傷で死亡させた。
 斎藤被告は他の3人や別の被告たちと共謀し、10日頃、男性の遺体を車で運び、埼玉県本庄市内の墓地に埋め、遺体の上にコンクリートを流し込んで隠した。
 また16日、男性と交際していた女性に「2千万円持ってくれば(男性を)返す」などと電話で要求。女性に新宿区の首都高速道路の路側帯まで2千万円を運ばせ置かせ、直後に持ち去った。
 斎藤邦実被告やTS被告らは、八王子市打越町の出身者らでつくる半グレ集団「打越スペクター」に所属。斎藤被告はリーダーだった。被害者の男性もその一員だった。
 女性が2011年1月に巣鴨署に相談し、警視庁捜査一課が捜査していた。
 警視庁捜査1課は情報提供を受け、2013年10月17日、埼玉県本庄市内の墓地から男性の骨を発見、18日に八王子市の職業不詳の元少年U被告(事件当時19)を死体遺棄容疑で逮捕した。さらに同日、別事件で服役中の男性TN被告、別事件で勾留中の男性TT被告を死体遺棄容疑で逮捕した。23日、別事件で服役中のTS被告を死体遺棄容疑で逮捕。11月23日、死体遺棄容疑でNY被告と恋人のYA元被告を逮捕。
 警視庁捜査1課は11月26日、容疑者グループのリーダー格とみられる斎藤邦実被告を死体遺棄容疑で公開手配した。
 12月5日、NY被告、TS被告、元少年U被告、YA元被告を逮捕監禁容疑で再逮捕。2014年1月16日、相模原市の少年(逮捕当時19)を逮捕監禁容疑で逮捕。2月18日、NY被告、TS被告、元少年U被告、YA元被告を強盗致傷容疑で再逮捕。
 2015年2月1日、死体遺棄容疑で斎藤邦実被告を逮捕。NY被告、TS被告、元少年U被告は2015年2月に公判が決定していたが、この逮捕を受けて取り消された。2月13日、強盗致死容疑で斎藤被告を再逮捕。4月23日、拐取者身代金取得容疑で斎藤被告、NY被告、TS被告、元少年U被告、YA元被告を再逮捕。
裁判所
 東京高裁 藤井敏明裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2018年4月18日 懲役28年(一審破棄)
裁判焦点
 裁判長は「共犯者の暴行が被害者の死因となった可能性が否定できない。被告の暴行が死因である可能性が極めて高いとした一審の判断は支持できない」と指摘。さらに「遺族に3000万円の賠償金を支払ったこと」などから、一審の無期懲役は重すぎるとして取り消した。
備 考
 YA元被告は強盗致死罪から逮捕監禁罪に訴因変更され、2015年10月9日、懲役1年6月執行猶予3年の有罪判決を受け、すでに確定している。
 TS被告は2016年3月18日、東京地裁の裁判員裁判で懲役28年判決。控訴取り下げ、確定。
 元少年U被告は同日、東京地裁の裁判員裁判で懲役18年判決。控訴、上告の有無は不明だが、すでに確定している。
 NY被告は2016年2月23日、東京地裁の裁判員裁判で懲役30年(求刑無期懲役)判決。2016年7月19日、東京高裁で被告側控訴棄却。上告の有無は不明だが、すでに確定している。

 2016年9月23日、東京地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。

氏 名
篠田卓良(48)
逮 捕
 2016年7月16日(覚せい剤取締法違反容疑)
殺害人数
 2名
罪 状
 殺人、現住建造物等放火、覚せい剤取締法違反
事件概要
 千葉県印西市の建築関係会社役員の篠田卓良(たかよし)被告は2016年7月上旬〜14日ごろにかけて、県内または周辺で覚醒剤若干量を使用したほか、同日午後5時45分ごろ、木造2階建て社屋兼住宅(延べ床面積198・21m2)内で、殺意を持って、1階6畳和室の畳の上にいた会社社員の父(当時75)と会社役員の母(当時70)=にガソリンをまいて持っていたライターで火を放ち、家屋約151m2平方メートルを焼損するとともに2人を焼死させて殺害した。
 卓良被告は両親と妻、2人の子どもと2世帯で同居。母親と篠田興業を経営し、その後父親も関与したが、2015年ごろから経営が悪化。父親と意見が合わず不満や怒りを募らせ、同年3月には覚醒剤を使用し、室内で木刀や包丁を振り回すなどして逮捕。この事件が原因となり、2016年1月に妻と離婚した。7月14日当日は、父親と口論となり、暴行を加えた上、室外にあったガソリンの携行缶を持ち込んで火をつけた。
 7月16日、覚せい剤取締法違反容疑で卓良被告を逮捕。8月1日、殺人他の容疑で再逮捕。8月から11月まで卓良被告の鑑定留置を実施し、責任能力の有無などを調べ、責任能力があるとして起訴した。
裁判所
 東京高裁 大熊一之裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2018年4月19日 懲役27年(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 弁護側は、被告は火を付けておらず、静電気による発火の可能性があるとして無罪を主張したが、大熊一之裁判長は「出火直後に119番をして放火ですと言っており、焼け跡からはライターが発見されている。一審の判断に誤りはない」と指摘した。
備 考
 2017年11月28日、千葉地裁の裁判員裁判で、求刑無期懲役に対し、一審懲役27年判決。被告側は上告した。2018年9月25日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
小野光(46)
逮 捕
 2017年3月31日(死体遺棄容疑)
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、死体遺棄
事件概要
 郡山市出身の指定暴力団稲川会系組員、小野光被告は、郡山市の無職、S被告と共謀。2015年8月13日午後4時40分ごろ、東京電力福島第1原発事故の除染廃棄物の仮置き場だった福島県西郷村の農地にて、田村市出身の知人男性(当時45)の頭を拳銃で撃って殺害。さらに建設業の男性と共謀し、重機で掘った穴に遺体を遺棄した。小野被告と知人男性の間に金銭トラブルがあった。仮置き場はその後、農地として使われていた。
 「人が殺されて埋められている」との情報が寄せられ、福島県警は2017年3月17日から現場付近を重機で捜索。24日に遺体を発見した。31日、死体遺棄容疑で小野被告、S被告、建設業の男性を逮捕した。4月22日、殺人容疑で3人を再逮捕した。
 5月12日、福島地検は殺人容疑で小野被告とS被告を追起訴した。建設業の男性は関与の程度が薄いとして、嫌疑不十分で不起訴とした。
裁判所
 仙台高裁 嶋原文雄裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2018年5月22日 懲役30年(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 判決は「自ら両手で拳銃を被害者に向けて構え、狙いを定める姿勢で拳銃を発砲した」と指摘。その上で、「確定的殺意があったと認めるのが自然で、原判決の認定評価に誤りはないとした。
備 考
 建設業の男性は死体遺棄容疑で起訴され、2017年6月19日、福島地裁(宮田祥次裁判官)で懲役2年6月、執行猶予5年(求刑懲役2年6月)の判決が言い渡された。宮田祥次裁判官は判決理由で「遺体は地中深さ約190cmの場所にあり、発見を著しく困難な状態にして遺棄した」と指摘。一方で「共犯者から殺人などについて知らされることなく呼び出され、関与の程度は小さく従属的なもの」だったと執行猶予の理由を述べた。
 2017年11月9日、福島地裁の裁判員裁判で求刑無期懲役に対し懲役30年判決。

氏 名
花見祐季(28)
逮 捕
 2017年7月6日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、殺人未遂、銃刀法違反他
事件概要
 三島市の会社員、花見祐季被告は2017年7月6日午前0時半ごろ、三島市内の路上で刃物4本を所持し、帰宅途中だった同市の会社社長の男性(当時53)の腹部をナイフで刺して殺害した。直前にも女性(当時21)に切り付けてけがを負わせた。事件直前には自宅マンションの布団に自ら火を付け、ぼや騒ぎを起こしていた。
 殺害後、花見被告は三島駅前の交番に自首した。花見被告は大手精密機器会社で働いていたが、ストレスで適応障害になり約1年間休職し、6日に職場復帰の予定だった。殺害した男性との面識はなかった。
 静岡地方検察庁沼津支部は、およそ5か月間にわたって専門家による精神鑑定を行った結果、刑事責任を問えると判断し、12月8日に起訴した。
裁判所
 静岡地裁沼津支部 菱田泰信裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2018年5月29日 懲役30年
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2018年5月22日の初公判で、花見祐季被告は「間違いありません」と起訴事実を認めた。
 冒頭陳述で検察側は、花見被告が職場のストレスで適応障害になり約1年間、休職したことに触れ、「(事件当日の)7月6日に職場復帰予定だったが嫌になり、刑務所に入って社会から隔離されたいと考えた」と指摘した。弁護側は、「復帰が嫌で、確実に刑務所に行けるようにと刺した。死刑か無期懲役になりたいと思った」と説明。突発的な犯行で、自首しているとして刑の減軽を求めた。
 24日の論告で検察側は「凶悪事件を起こし社会から隔離されたいという自己中心的で身勝手な犯行」と指摘。直後に交番へ自首したことについても「逮捕されることが犯行目的。自首も犯行計画の一部」として減軽すべきではないと論じた。
 同日の最終弁論で弁護側は、「犯行は突発的で、残虐性や執拗性もない。自首による減軽も認めるべきだ。懲役28年程度が相当」と主張した。
 菱田泰信裁判長は判決理由で、約1年間休職して事件翌朝から職場復帰する予定だったとし、「復帰したくない、刑務所に入り社会から隔離されたいと考え、何の落ち度もない無関係の人を殺害した動機は自己中心的で身勝手極まりない。無差別の殺害は殺人事件の中でも取り分け悪質」と指摘。量刑について「突発的な犯行で自首も成立し、反省の態度も示している」と述べた。
備 考
 控訴せず確定。

氏 名
有賀健一郎(50)
逮 捕
 2015年10月8日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、銃刀法違反(所持、発射)
事件概要
 長野家飯田市の指定暴力団山口組系組幹部、有賀健一郎被告は2015年10月6日午後0時43分ごろ、飯田市内の温泉宿泊施設玄関前の駐車場で、元同市在住で住所不定、無職の男性(当時43)に殺意を持って拳銃で弾丸1発を発射し、左前頭部に命中させて翌7日朝、頭蓋内損傷で死亡させた。有賀被告は拳銃1丁と実弾6発を持っていた。
 男性はかつて有賀被告と同じ組織に所属し、同年8月の山口組分裂以後、神戸山口組傘下の組織に加入しようとしていたとされる。ただし神戸山口側は、殺された男性とは「杯を交わしていない」と移籍を否定している。
 有賀被告は8日夜、県警飯田署に弁護士を伴って出頭し、県警は殺人容疑で逮捕した。
裁判所
 東京高裁 秋葉康弘裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2018年6月18日 懲役30年(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 弁護側は「拳銃が暴発して起きた事故で、故意に射殺していない」と無罪を主張したが、秋葉康弘裁判長は、被告が現場付近で車を降りてから事件発生までの時間は短く「発砲を意図して行動した」と退けた。
備 考
 2017年10月5日、長野地裁松本支部の裁判員裁判で求刑無期懲役に対し懲役30年判決。被告側は上告した。

氏 名
中田好信(42)
逮 捕
 2015年2月16日
殺害人数
 0名
罪 状
 組織犯罪処罰法違反(組織的殺人未遂)、銃刀法違反他
事件概要
 特定危険指定暴力団工藤会(北九州市)系組幹部の中田好信被告は、下記の事件を起こした。
  1. 2012年4月19日午前7時5分ごろ、北九州市小倉南区の路上でフルフェースのヘルメットをかぶりバイクに乗った中田被告は、すれ違いざまに福岡県警元警部に拳銃3発を撃ち、殺害しようとした。3発のうち2発が元警部の左太ももや腰に命中し、約1カ月の重傷を負った。
     元警部は30年以上、暴力団捜査を担当し工藤会対策の特別捜査班長などを務め、北九州地区暴力団犯罪捜査課の特捜班長を最後に2011年3月に退職していた。退職後は北九州市内の病院に勤務。事件当時は出勤途中だった。工藤会の野村総裁、田上会長と元警部との間には在職中から捜査をめぐる確執があった。別の幹部が自宅を見に来ているのを目撃したこともあり、「撃ち込みがあるかもしれない」と感じ、退職後に県警の保護対象に指定された。
  2. 2013年1月28日、福岡市博多区で看護師女性(当時49)の頭や胸などを刃物で刺して殺害しようとした。中田被告は実行犯の送迎を務めた。
     2012年8月、工藤会総裁の野村被告が北九州市小倉北区のクリニックで局部の増大手術と周辺の脱毛治療を受け、看護師が処置を担当した。しかし術後の状態が良くなかったため、野村被告はクリニック側に対し「(手術した部分が)腐っている」「看護師が意地悪でわざとやった」「金のために注射を増やした」などと批判していた。
  3. 2014年5月26日、北九州市小倉北区の駐車場で中田被告ら2人が歯科医師男性(当時29)が左太ももや左脇腹を刃物で刺して殺害しようとし、重傷を負わせた。
     男性の祖父は1998年2月18日夜、小倉北区で射殺された元脇之浦漁協組合長の男性で、父親も当時次期漁協組合長の有力候補と目されていた。港湾事業に介入しようとした工藤会は立候補をやめるよう警告する目的で事件を起こし、父親も2014年6月の組合長選への立候補を取りやめた。父親は現在、理事を務めている。
     射殺事件では動機について北九州市漁協が影響力を持つとされる北九州市発注の港湾工事で、工藤会が公共工事への利権介入を断られた報復と認定。実行役らの工藤会系幹部組員2人が殺人罪に問われ、無期懲役判決等が確定している。
 福岡県警は、2の事件を受け工藤会関係者の通信を傍受した。その傍受記録の中に、襲撃された看護師を尾行している組員と幹部の間で襲撃を示唆する会話があった。
 その会話をもとに看護師襲撃事件の現場周辺の監視カメラをチェックしたところ、組員らの会話に対応する組員の行動がバッチリ映っていた。福岡県警は、画像鑑定で組員を特定した。その組員らに対する検察の取り調べは録音録画のもとで行われたが、それらの証拠を示された組員は、さすがに否認しきれず、容疑を認めた。

 福岡県警は2の事件における組織犯罪処罰法違反(組織的殺人未遂)容疑で、2014年10月、工藤会トップら16人を逮捕。福岡県警は14人を起訴し、2人は処分保留とした。
 福岡県警は3の事件における組織犯罪処罰法違反(組織的殺人未遂)容疑で、2015年2月15日〜16日、中田被告ら9人を逮捕した。3月9日、福岡地検は中田被告を含む4人を起訴し、残る5人は処分保留として継続捜査とした。5月22日、県警は工藤会トップら4人を再逮捕した。うち3人が起訴され、1人は処分保留となっている。
 福岡県警は1の事件における組織犯罪処罰法違反(組織的殺人未遂)および銃刀法違反容疑で、7月6日、工藤会トップら18人を逮捕・再逮捕した。7月27日、福岡地検は11人を起訴、7人を嫌疑不十分で不起訴とした。
裁判所
 福岡高裁 野島秀夫裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2018年7月4日 懲役30年(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 2018年5月28日の控訴審初公判で弁護側は、実行役を担った元警部事件と歯科医師事件では上位者から「殺害してはならない」と言われていたとして殺意を否認し傷害罪を主張、看護師事件では事情を知らずに実行犯を送迎しただけと主張。いずれの事件も野村被告との共謀はなく、検察側の立証も不十分と反論していた。検察側は控訴棄却を求めて即日結審した。
 判決で野島裁判長は、いずれの事件も被害者が死亡する危険性は高く、被告には殺意があったと認定。その上で「被告には動機がない一方、野村被告には動機がある。野村被告の指揮命令がなければ極めて困難な犯行」として一審判決に誤認はないと判断した。
備 考
 1と2の事件他に関与して組織犯罪処罰法違反(組織的殺人未遂)などに問われた特定危険指定暴力団工藤会系元組員W被告は、2017年3月22日、福岡地裁(松藤和博裁判長)で懲役18年8月判決。検察側はW被告の自供が事件解明につながったとして、有期刑の上限を10年下回る懲役20年を求刑していた。W被告は1と2で実行役をバイクで送迎したと認定。W被告が組織の末端にいて上位者の指示に逆らえなかったことや、自白が事件の解明に寄与したことを認めた。2017年12月18日、福岡高裁(野島秀夫裁判長)で被告側控訴棄却。2018年2月1日付で被告側上告取り下げ、確定。

 2017年12月15日、福岡地裁で求刑無期懲役に対し一審懲役30年判決。被告側は上告した。2019年1月4日付で上告取り下げ、確定。

氏 名
片倉竜理(49)/三井樹(46)
逮 捕
 2016年9月7日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、銃刀法違反(加重所持)他
事件概要
 名古屋市の指定暴力団山口組系傘下の組管部、片倉竜理(たつまさ)被告と、大阪市の指定暴力団山口組系傘下の組員、三井樹(たつき)被告は、神戸山口組系傘下組織の元幹部(当時64)の知人の男(当時65)と共謀し、2016年7月15日午後4時35分ごろ、名古屋市中区のマンション4階の一室で、幹部を拳銃で射殺した。3人は車で逃走。逃走に使われたとみられる盗難車が現場から約2km離れた駐車場で全焼しているのが見つかった。
 部屋に居合わせた幹部の知人である無職男性が119番通報した。
 警察は8月、現場の部屋にあった携帯電話を盗んだ窃盗の容疑で知人の男を逮捕し、片倉被告と三井被告を逃走に使った盗難車の窃盗の容疑で逮捕した。9月7日、殺人容疑で再逮捕した。
裁判所
 名古屋高裁 高橋徹裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2018年7月11日 懲役28年(一審破棄)
裁判焦点
 控訴審初公判で両被告側は「一審判決の量刑は重すぎる」と訴えた。
 判決で高橋徹裁判長は一審判決後に2人が殺害を認め遺族に謝罪し、示談が成立したことを考慮。「一審判決の評価は当時、不当ではなかったが、現時点では重い」と述べた。
備 考
 知人の男は起訴後に拘留されていた刑事施設から病院に搬送されたが、2016年11月12日、病死した。
 事件当時、殺害された幹部と部屋に居合わせて通報した知人男性は、2016年9月6日に覚せい剤取締法違反罪で名古屋地裁から懲役3年の実刑判決を言い渡され、そのまま確定。11月上旬に病死している。
 2017年2月20日、名古屋地裁の裁判員裁判で求刑無期懲役に対し、懲役30年判決。

氏 名
石田美実(61)
逮 捕
 2014年2月26日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、窃盗、建造物侵入
事件概要
 鳥取県米子市の元ラブホテル従業員、石田美実被告は2009年9月29日午後10時ごろ、9月中旬まで働いていた米子市内のラブホテルの従業員事務所で金品を物色中、支配人の男性(当時54)に見つかり、頭を壁にぶつけたり、首をひも状のもので絞めたりして意識不明の重体に負わせ、現金約26万8千円を強奪した。
(以上は起訴罪状)
 鳥取県警は内部に詳しい人物の犯行とみたが、被害者の男性が意識を取り戻さないことから、慎重に捜査を続けた。
 その後トラック運転手をしていた石田被告は2014年9月5日、別のクレジットカード詐欺で逮捕された。鳥取県警は2014年2月26日、石田被告を強盗殺人未遂、建造物侵入の両容疑で再逮捕した。
 被害者の男性は暴行に基づく多臓器不全が基で2015年9月、60歳で死亡。鳥取地検は12月15日、石田被告について強盗殺人罪への訴因変更を地裁に請求。2016年2月15日付で認められた。
裁判所
 最高裁第二小法廷 鬼丸かおる剛裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2018年7月13日 高裁へ差し戻し
裁判焦点
 2018年6月22日の弁論で検察側は、被告が事件直後、被害額に近い現金を自分の預金口座に入金したことを挙げ、「無罪判決には重大な事実誤認がある」と主張。一方、弁護側は、大量の千円札について「ホテルで両替が必要な場合に備えて個人的にもっていたもので、犯人と裏付ける証拠はない」として、改めて無罪を主張した。
 判決で鬼丸裁判長は、「日常生活230枚もの1000円札を持ち合わせることは通常なく、被告の犯人性を相当程度推認させる」と述べた。一審判決は千円札所持の経緯や他の状況証拠の積み上げから、被告が犯人だと結論づけたと指摘。二審判決について、複数の状況証拠を個別に検討するだけで、総合的に評価する観点に欠けていると批判。「一審の事実認定に不合理な点があることを十分に示したとは言えない」と述べた。裁判官4人全員一致の意見。
 裁判員制度が始まった2009年以降、裁判員の有罪判決を覆して全面無罪とした二審判決が最高裁で破棄されるのは初めて。
備 考
 2016年7月20日、鳥取地裁の裁判員裁判で、求刑無期懲役に対し、一審懲役18年判決。起訴罪状である強盗殺人を否定し、殺人と窃盗を適用した。2017年3月27日、広島高裁松江支部で一審破棄、無罪判決。2019年1月24日、広島高裁で地裁差し戻し判決。

氏 名
物袋勇治(30)
逮 捕
 2014年3月18日(死体遺棄容疑)
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、保護責任者遺棄致傷、わいせつ目的誘拐、強制わいせつ致傷、強制わいせつ、児童買春・児童ポルノ禁止法違反(ポルノ製造)他
事件概要
 埼玉県富士見市のベビーシッター物袋(もって)勇治被告はベビーシッターのマッチングサイトに女性を装って登録。2014年3月14日、サイトを通して依頼された横浜市に住む女性の長男(当時2)と次男(当時8か月)を預かることとなった。物袋被告に依頼された別の30代の男性は午後7時ごろ、JR杉田駅で女性から兄弟を預かった。物袋被告は午後8時ごろ、横浜駅で男性から兄弟を預かった。しかし物袋被告は3月15日、長男に暴力を加えてわいせつな行為をしたうえ、鼻や口を手でふさぐなどして窒息死させた。そして次男にはミルクを与えなかったり裸のまま放置したりして必要な世話をせず、低体温症や重度の低血糖症、脱水症にさせた。
 他に2012年11月から2014年2月の間に男児を含む約10人に対し、下腹部を強くつかむなどの暴行を加えた。また、他の幼児約20人の裸などをデジタルカメラやスマートフォンで撮影し、パソコンなどに保存した。

 物袋被告は15日午前、母親にメールで2児の様子を伝えた後、連絡が途絶えた。16日に2児を引き取る予定だった母親は県警磯子署に相談。県警は、物袋被告がベビーシッターをしている富士見市のマンションを特定。17日午前8時ごろ、マンション3階の自宅から外出しようと物袋被告が出てきたところで捜査員が声を掛けたが、物袋被告は家の中に入られることを拒否。中に入ると、長男が畳の部屋で仰向けに倒れていた。捜査員は次男を保護し、物袋被告から任意で事情聴取。県警は、物袋被告が17日、死亡した長男を残したまま外出しようとした行為が死体遺棄容疑に当たると判断し、18日未明に逮捕状を取った。しかし任意での事情聴取が長時間に及んだことから、両親が住む横浜市磯子区の実家に物袋被告をいったん帰宅させ、18日午後に改めて任意同行を求め、死体遺棄容疑で逮捕した。

 物袋勇治被告は2012年3月から、横浜市緑区の保育施設でもパートをしていた。働きぶりはまじめで穏やかでトラブルもなかった。2012年8月ごろから、「ベビーシッターを始める」と言ってきて、週1回勤務となった。物袋被告は、サイト内で複数の名前を名乗って、預かり保育の仕事を探していた。同社に「営業がしつこい」などといった苦情が相次いでいた。
 兄弟の母親はシングルマザーで、仕事に出るためマッチングサイトを利用した。過去に夜間保育園に子供を預けた際、髪を無断で切られたり、大人用の薬を服用させられたりした経験があったため、マッチングサイトを利用していた。物袋被告と3月上旬から7回ほどメールでやりとりして預けることを決めた。女性は以前もサイトで見つけたシッターに預けたことがあり、今回は預ける相手の本名や住所、電話番号を確かめず、顔を合わせたこともなかった。しかし母親は一年前にも複数回物袋被告に長男を預けたことがあり、良い印象が持てず、「もうこの人に預けるのはやめよう」と思っていた。しかし今回は物袋被告が「山本」と名乗っていたことや、預けるときに代役である別の男性としか会っていなかったことから、「山本」が物袋被告とは気付かなかった。

 神奈川県警は4月7日、物袋被告を、弟に対する保護責任者遺棄致傷容疑で再逮捕した。横浜地検は同日、死体遺棄容疑について処分保留とした。
 県警は4月28日、物袋被告が2012年12月13日〜2013年8月25日頃、ベビーシッターとして預かっていた当時1歳の女児と3歳の男児の裸などをデジタルカメラで約50枚撮影し、パソコンなどに保存したとして、児童買春・児童ポルノ禁止法違反(製造)容疑で再逮捕した。
 県警は5月250日、以前預かった別の子ども2人の裸を撮影、保存したとして、児童買春・ポルノ禁止法違反(製造)容疑で者見被告を再逮捕した。
 県警は6月10日、物袋被告は2012年11月15日頃〜2014年2月22日頃、東京都内や神奈川、埼玉県内で、ベビーシッターとして預かった当時2歳と4歳の男児2人のほか、特定できていない男児、女児計11人の裸などをデジタルカメラやスマートフォンで計約150枚撮影し、パソコンなどに保存したとして、児童買春・児童ポルノ禁止法違反(製造)容疑で再逮捕した。
 県警は7月1日、長男への殺人容疑で再逮捕した。
 横浜地検は7月17日から3か月、責任能力の有無を判断する鑑定留置を実施。刑事責任を問えると判断し、10月24日、殺人罪などで追起訴した。2015年3月31日、横浜地検は物袋被告の死体遺棄容疑について不起訴処分とした。
裁判所
 最高裁第二小法廷 三浦守裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2018年9月10日 懲役26年(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 
備 考
 2016年7月20日、横浜地裁の裁判員裁判で求刑無期懲役に対し一審懲役26年判決。2018年1月30日、東京高裁で検察・被告側控訴棄却。

氏 名
篠田卓良(49)
逮 捕
 2016年7月16日(覚せい剤取締法違反容疑)
殺害人数
 2名
罪 状
 殺人、現住建造物等放火、覚せい剤取締法違反
事件概要
 千葉県印西市の建築関係会社役員の篠田卓良(たかよし)被告は2016年7月上旬〜14日ごろにかけて、県内または周辺で覚醒剤若干量を使用したほか、同日午後5時45分ごろ、木造2階建て社屋兼住宅(延べ床面積198・21m2)内で、殺意を持って、1階6畳和室の畳の上にいた会社社員の父(当時75)と会社役員の母(当時70)=にガソリンをまいて持っていたライターで火を放ち、家屋約151m2平方メートルを焼損するとともに2人を焼死させて殺害した。
 卓良被告は両親と妻、2人の子どもと2世帯で同居。母親と篠田興業を経営し、その後父親も関与したが、2015年ごろから経営が悪化。父親と意見が合わず不満や怒りを募らせ、同年3月には覚醒剤を使用し、室内で木刀や包丁を振り回すなどして逮捕。この事件が原因となり、2016年1月に妻と離婚した。7月14日当日は、父親と口論となり、暴行を加えた上、室外にあったガソリンの携行缶を持ち込んで火をつけた。
 7月16日、覚せい剤取締法違反容疑で卓良被告を逮捕。8月1日、殺人他の容疑で再逮捕。8月から11月まで卓良被告の鑑定留置を実施し、責任能力の有無などを調べ、責任能力があるとして起訴した。
裁判所
 最高裁第一小法廷 深山卓也裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2018年9月25日 懲役27年(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 
備 考
 2017年11月28日、千葉地裁の裁判員裁判で、求刑無期懲役に対し、一審懲役27年判決。2018年4月19日、東京高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
二場勇次(53)
逮 捕
 2015年5月25日(死体遺棄容疑)
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、死体遺棄、傷害他
事件概要
 福岡県田川市のアクセサリー販売業、二場勇次被告は2015年5月17〜21日頃、自宅で自宅で交際相手の女性(当時41)の頭に噴射したスプレーにライターで引火させて後頭部にやけどを負わせたり、福岡市のホテルで頭を電気ポットで多数回殴ったりするなどの暴行を加え、5月22日ごろ全身やけどによる肺炎と急性硬膜下血腫に伴う呼吸不全に陥らせ殺害したとされる。そして飯塚市に住む会社員の男性と共謀し、遺体を長崎市の公園に遺棄した。
 二場被告と女性はフェイスブックを通じて知り合い、内縁関係にあったが、二葉被告は女性と交際を始めた3月中旬頃から虐待を繰り返し、低栄養状態に陥らせていた。
 二場被告が前妻にドメスティックバイオレンス(DV)をしていた疑いがあるとの情報を得ていた保育所側は、二場被告の女児を送迎していた女性がマスクなどで顔を隠しているのを見て5月8日に通報。田川市の職員が女性と3回接触を試み、13日には直接会うことができたが、マスクをしていたため見抜くことができなかった。市から協力を求められた県警は、田川署員が数回訪問するも、女性に会うことができなかった。
 女性の遺体は24日朝、発見された。数時間後に会社員の男性が県警博多署に出頭。供述から二場被告の関与が浮上し、県警は24日夜に福岡市内で身柄を確保し、25日、両被告を死体遺棄容疑で逮捕した。
 8月27日、県警は殺人容疑で二場被告を再逮捕した。
 また二場被告は3月にも別の交際女性に暴力をふるっていた。女性は二場被告が逮捕後の6月下旬に警察に被害を申告し、二場被告は7月に傷害容疑で逮捕された。
裁判所
 福岡高裁 岡田信裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2018年9月27日 懲役22年(一審破棄)
裁判焦点
 検察、被告側の双方が控訴。
 判決で岡田裁判長は、被害者の傷の数などから「電気ポットで少なくとも7回殴打したことが認められる」と指摘し、ポットで殴打した回数を少なくとも1回と判断した一審判決を否定。その上で、衰弱していた被害者に繰り返し暴行を加えれば死亡する可能性を認識できたとして、殺意を認めた。量刑理由について「生命に対する冷淡な態度がうかがえ、非常に悪質」と述べた。
備 考
 1992年、当時暴力団員だった二場勇次被告はダイヤルQ2で知り合った女性3人に次々に金を要求し、断られると暴力を加えた。覚醒剤を注射することもあった。7月16日未明、そのうちの1人である女性(当時19)に借金を断られたことに腹を立て、福岡市東区のホテルで、頭や顔を殴り、突き飛ばして頭部を床に打ち付けるなどの暴行を加え、女性は5日後、死亡した。二場被告は女性の家族や運び込んだ病院の医師らに、「女性が自分で交通事故に遭った」などと説明していた。
 傷害致死などの容疑で起訴され、1992年11月19日、福岡地裁で懲役10年(求刑懲役12年)の判決が言い渡され、1993年に確定して服役した。

 死体遺棄の罪で起訴された会社員の男性は2015年8月25日、福岡地裁(井野憲司裁判官)で懲役1年6月、執行猶予4年(求刑懲役1年6月)の有罪判決を言い渡された。控訴せず確定。
 2017年11月22日、福岡地裁の裁判員裁判で求刑無期懲役に対し、一審懲役10年判決。殺人罪を認めず、傷害致死を適用した。被告側は上告した。

氏 名
西原崇(35)
逮 捕
 2018年2月13日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、強制わいせつ
事件概要
 松山市の運送会社員、西原崇被告は2018年2月13日午前4時35分〜午前5時50分ごろ、今治市の段ボール製造販売会社の敷地内で、同僚の女性(当時30)の首を両手で絞め、タイツをはぎ取るなどわいせつ行為をし、首をタイツで絞めて殺害した。
 女性は同日未明、荷物を配送するため、一人で段ボール製造会社に向かった。西原被告は同日早朝、女性と合流して仕事を手伝う予定だった。
 帰社予定だった午前中に戻らず、連絡も取れなくなったため、会社の上司が13日午後、西条署に行方不明届を提出。県警が、女性が仕事をしていた段ボール製造会社を捜索した際、遺体が見つかった。会社の敷地や建物は人が出入りしていたが、遺体があったのは人目につきにくい場所だった。
 県警は13日午後、西原被告から任意で事情を聴き、同行した現場で逮捕した。
裁判所
 松山地裁 末弘陽一裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2018年11月13日 懲役19年
裁判焦点
 裁判員裁判。検察側は殺人に加え強制わいせつ致死でも起訴した。
 2018年10月16日の初公判で、西原崇被告は「否認します」と起訴内容を否認した。
 検察側は冒頭陳述で、同じ配送業務になり10日前に知った女性に一方的に好意を抱き、わいせつな行為をしようと考えたと動機を指摘。殺害後、配送車のドライブレコーダーの記録を抜き取ったことも明らかにした。弁護側は気が付いたら首を両手で絞めていたと殺意を否定。服を脱がせたのは「心臓マッサージのため」とわいせつな行為も否定した。また、軽度の知的障害があり、事件当時は心神喪失か心神耗弱状態だったとして無罪を主張した。
 19日、検察側は論告で、遺体に残った跡などから、わいせつ目的で暴力をふるい、強い殺意をもって首を絞めたと認められると主張。西原被告には軽度の知的障害があるが、犯行への影響はわずかだとし、「残忍で極めて悪質な犯行で、情状酌量の余地はない」と述べた。
 同日の最終弁論で弁護側は、被告は事件当時、心神喪失状態で記憶がなかったと主張。タイツによる首の圧迫痕は「移動させた際についた」と述べるなどし、無罪を主張した。
 10月29日に判決公判が予定されていたが、検察側が予備的訴因の追加のため、弁論再開を要求し、公判は取り消された。
 11月12日の公判で、改めて検察側は無期懲役を求刑した。
 判決で末弘陽一裁判長は、職場でのストレスや被害者への不満を募らせていたと指摘。「衝動的とはいえ、殺意は強固だった」とした。一方で、最初からわいせつ目的であったかどうかについて「合理的な疑いが残る」として、強制わいせつ罪が成立するにとどまるとした。被告について軽度の知的障害などを認めたが、「影響は限定的」とした。
備 考
 検察・被告側は控訴した。

氏 名
矢野治(69)
逮 捕
 2017年4月10日
殺害人数
 2名
罪 状
 殺人
事件概要
(以下は起訴内容)
 指定暴力団住吉会系幸平一家矢野睦会会長矢野治被告は、知り合いの住吉会系のある組の若頭から、伊勢原駅前にある不動産物件のオーナーである不動産業者の男性(当時60)と所有権や再開発をめぐり紛争になっているため、裁判を起こされる前に殺害してほしいと依頼され了承。五分の兄弟分だった同じ幸平一家の組の組長(2014年死亡)に、この男の殺しを依頼。1996年8月10日、宅配便を装った男が住所がわからないと男性を誘い出してそのまま連れ去り、伊勢原市内の車の中で殺害した。そして伊勢原市の山林に死体を遺棄した。
 現役の参議院議員だった友部達夫が100億円近い資金を騙し取り、その一部は政界に流れたといわれる「オレンジ共済事件」のキーマンとして、国会の証人喚問を受けたこともあった東京都新宿区の不動産会社社長の男性(当時49)を1998年4月8日頃、東京豊島区の組事務所で単独で殺害。遺体の遺棄を組員の男に指示した。男は埼玉県ときがわ町の山林に死体を遺棄した。
 矢野治被告は2002年2月25日の日医大暴力団組長射殺事件、2003年1月25日の前橋スナック乱射事件他で起訴され、2014年3月14日に最高裁で上告が棄却され、死刑判決が確定した。
 矢野治死刑囚は2014年9月7日付で警視庁目白署に、1998年の殺人事件を告白する手紙を送付。同年12月には週刊新潮編集部にも手紙を送った。目白署の刑事らは、12月25日に東京拘置所で事情聴取を行ったが、その後捜査は一切行われなかった。
 矢野治死刑囚はさらに2015年5月28日付で、1996年の殺人事件について関与したことを告白する手紙を渋谷警察署に送った。しかし渋谷警察署は一切の捜査を行わなかった。
 週刊新潮編集部は取材を続け、当時死体を埋めた男性と接触し、証言を得た。そして『週刊新潮』2016年2月25日号(2月18日発売)にて、記事を発表。記事が表に出ることが分かった瞬間、警視庁は捜査を始めた。警視庁組織犯罪対策4課と神奈川県警は2016年4月19日、神奈川県伊勢原市の山林で1996年に失踪した男性の捜索を行い、供述通りの場所から遺体を発見した。7月6日〜7日、埼玉県ときがわ町の山中を捜索したが、1998年に失踪した男性の遺体は発見できなかった。11月21日〜22日、再度捜索するも、発見できなかった。11月29日、埼玉県ときがわ町の山林で下半身とみられる人骨を発見した。30日午後、上半身とみられる人骨を発見した。
 2017年4月10日、警視庁は1998年4月に失踪した東京都内の会社役員の男性殺人容疑で逮捕した。警視庁組織犯罪対策4課は7月4日、1996年8月に失踪した伊勢原市の男性の殺人容疑で矢野死刑囚を再逮捕した。他に住吉会系元組幹部ら3人の男(いずれも既に死亡)が関与していたが、容疑者死亡でいずれも書類送検した。
裁判所
 東京地裁 楡井英夫裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2018年12月13日 無罪
裁判焦点
 裁判員裁判。殺害の具体的な方法や死因は特定されていない。
 2018年11月12日の初公判で、矢野治被告は起訴内容を否認し、無罪を主張した。1996年の事件について「(被害者の)名前すら知らない。(起訴は)間違いです」と否認。1998年の事件は「私は殺していないが、殺させた」と主張した。
 検察側は冒頭陳述で、1996年の事件は、不動産業者が所有していた伊勢原市の土地の利権を得ようと、行方不明に見せかけるため殺害を計画したと指摘。さらに1998年の事件でば、会社社長を拉致するという男性の計画を阻止するため、首を圧迫して殺害したと主張した。矢野被告はその後、この社長から多額の現金を受け取ったとしている。弁護側は、1996年の事件では不動産業者殺害の共謀には加わっておらず、殺害は後で知ったと反論。1998年の事件では組事務所の入り口まで男性を連れて行ったが、「組員に指示し、組員が実行した。起訴内容に『指示』は含まれておらず、無罪だ」と無罪を主張した。
 14日の第2回公判で、1998年の事件にかかわった元組員が証人出廷。元組員は、東京都新宿区の不男性の殺害に関し、「被告から『ろくった(死んだ)から処分してくれ』と指示を受けた。しかし、殺害指示は受けておらず、殺してはいない。(男性が)どうやって死んだかは聞いていない」と証言した。
 16日の公判における被告人質問で矢野被告は、1998年の事件について被告自身が殺害したという上申書の内容について「男性を別の組幹部に引き渡したが、どうして死んだかは一切聞いていない」と否定。初公判で元組員に殺させたと主張したことについても、元組員について許せないことがあったため、この時も新たに虚偽の主張をしたと述べた。また、矢野被告は上申書を書いた動機について「(死刑が確定した別事件に関し)組織(の対応)に不満があり、全てを明らかにしようと考えた。(上申書に)『殺した』と書かなければ逮捕してもらえないと思った」と説明。上申書の提出について「死刑執行の先延ばし目的」と報じられている点は「延命は考えていない。命は惜しくない」と強く否定した。
 19日の公判で元組員が出廷し、「(被告から)『伊勢原で穴を掘ってほしい』『人を埋めてほしい』と頼まれた」と証言した。
 21日の公判における被告人質問で、1996年の事件について事件当時、別の組幹部から「伊勢原の件で若い衆を貸してくれ」と頼まれて配下の元組員を行かせたところ、幹部から「まずいことになった」と連絡を受けたと説明したが、「何のトラブルかは聞いていない」と述べた。元組員の証言については、「『対処しろ』とは言ったが『埋めろ』とは言っていない。(元組員の証言は)全くのでたらめで、うそだ」と強く否定した。
 26日の論告で検察側は、矢野被告は死刑確定後の2014〜15年、二人の殺害に関わったとする手紙を警視庁に提出したと指摘。「起訴され裁判を受け、死刑執行を引き延ばしたかった。内容は真実である必要があった。内容も、被害者の遺体の状況などと矛盾がない」と手紙の信用性を強調した。矢野被告が被告人質問で告白は「全く虚偽」と述べ、否認に転じたのは「裁判も引き延ばすためだ」と述べた。1998年の事件は金銭トラブルが発端で、「おりの中に3日間入れるなど、人を人とも思わない扱いをした」と批判。1996年の事件は「土地を手に入れるためだった」と述べた。被害者は2人で死刑求刑もあり得たが、上申書の提出で自首が成立するなどとして死刑は求刑しなかった。
 同日の最終弁論で弁護側は、2件の上申書の内容について「いずれも具体性が乏しい」と反論。告白は虚偽で、目的は「新たな事件の話を出せば警察が死刑判決を受けた事件も再捜査してくれると思ったため」だとし、2件の殺人事件について「証拠不十分だ」として無罪を主張した。
 矢野被告は最終意見陳述で「警察に虚偽の供述をし、申し訳ない。命乞いなんて思ってもいません」と早口で語った。  判決で楡井裁判長は、1996年の事件について、被告の指示で遺体を埋めたとする元配下組員の証言を「信用できる」と認定しつつ、間接証拠から被告の殺人への関与は推認できないと指摘。「直接的な証拠」の上申書について「死刑確定後(の15年)に約19年前の事件を突然告白しており、死刑執行の引き延ばしが目的」とし、記された被害者名が男性と異なることなどから「誰が殺害されたのかを知らない程度の関与しかしていなかったことをうかがわせる」と述べた。また、1998年の事件については、被害者の死亡現場が被告の組と別の組の事務所だったことなどから、殺人への関与は認定できないと判断。この事件の上申書も「執行引き延ばしが目的」とし、「殺人の実行犯でなければ知りえない情報は全く含まれておらず、殺害状況に関する記載も具体性に乏しい」とした。  楡井裁判長は判決文読み上げ後に「あなたが遺族を混乱させ、つらい思いをさせたことを遺憾に思う。あなたからは控訴できず、検察が控訴しなければ裁判は終わりです」と厳しい口調で述べた。矢野被告は「ご迷惑をおかけしました」と頭を下げ、退廷した。
備 考
 刑法は「確定死刑囚に他の刑は執行しない」と規定しており、今回の裁判で有罪となっても処遇に影響はない。
 控訴せず確定。検察側は、一部の遺族が「早期執行」のために控訴を求めない意向を示したことや、殺害の関与を裏付ける新証拠を提出することが難しいことなどを考慮したとみられる。

氏 名
佐賀慶太郎(52)
逮 捕
 2016年10月25日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、死体損壊・遺棄
事件概要
 埼玉県川口市の無職、佐賀慶太郎被告は2016年9月16〜17日頃、東京都目黒区に住む元交際相手で会社員の女性(当時24)を、女性の自宅マンションでオートロックをかいくぐって帰宅を待ち伏せ、女性が会社から帰ってきたときにいっしょに部屋に入り込むも、女性になじられて逆上。女性を何らかの方法で殺害。浴室で包丁などを用い遺体を切断し、千葉、埼玉両県や東京都内の川などに捨てた。
 女性は2014年に広島県から上京。昼はキックボクシング選手を夢見て練習、夜は川口市の飲食店でアルバイトをしていた。2015年11月、客として訪れた佐賀被告と知り合う。佐賀被告は妻帯者であったが付き合うようになり、2015年3月まで東京都大田区のマンションで同棲。佐賀被告は4月に妻に離婚を継げるが、女性は佐賀被告と別れ、5月に目黒区のマンションに引っ越した。佐賀被告は女性に付きまとうようになり、7月16日に埼玉県川口署は女性に対する暴行容疑で逮捕。川口署は女性の自宅がある警視庁目黒署へ連絡し、女性は23日に同署を訪れた。佐賀被告は罰金10万円の略式命令を受け、川口署は佐賀被告を釈放し、女性に接触しないとする誓約書を提出させた。目黒署は女性に住居や連絡先を変更するように指導。佐賀被告は8月3日、女性に交際時に支払われた200万円を請求し、ふたたび付きまとうようになった。目黒署は8月にも警戒を要請するも、女性は引っ越し代を工面できないと話した。佐賀被告が以前のアルバイト先を訪れたことを知った女性は9月12日、目黒署に相談。目黒署は実家やホテルなどへの避難を要請するも、連絡はその後途絶えた。
 9月20日ごろ、女性の安否確認が取れないと勤務先の会社から目黒署に連絡があった。10月25日、警視庁捜査1課は佐賀被告を死体遺棄容疑で逮捕した。女性の遺体は見つかっていない。
裁判所
 東京地裁 佐々木一夫裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2018年12月14日 懲役29年
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2018年11月26日の初公判で、佐賀慶太郎被告は「殺そうと思って死なせていない」と述べ、殺人罪の起訴内容を否認した。死体遺棄と損壊は認めた。
 検察側は冒頭陳述で「(女性への)恋愛感情が満たされない逆恨みで殺害した」と指摘。事件前に遺体解体に必要な道具をまとめたメモを作成していたと述べ、「殺害に関するインターネット検索もしており、計画性があった」と主張した。弁護側は「借金の返済を求めてマンションを訪れた被告ともみ合った被害女性が転倒し、被告が持っていたナイフが刺さった」と反論。「けがをさせるつもりもなかったし、殺害の計画や準備もしていない」と述べた。
 12月10日の論告で検察側は、「完全犯罪をもくろみ、殺害後は遺体を解体し遺棄した。冷酷非道、残虐な犯行で、被害者の味わった恐怖や苦痛は計り知れない」と非難した。
 同日の最終弁論で弁護側は、「殺害は計画していなかった」と主張した。
 判決で佐々木裁判長は、佐賀被告が2016年、この女性への暴行事件で罰金刑を受け、会社を辞めざるを得なくなったと指摘。「失職した責任を転嫁し逆恨みした」とした。事前にインターネットで殺人事件や遺体処理の方法を検索し、遺体解体用の包丁などを購入していたと認定した上で「遺体解体の前提である殺害も当然したと認められる」と判断した。さらに解体道具のメモを作成したとし、「殺害にとどまらず痕跡を完全に消し去ることをもくろんだ」と非難した。事件当日は女装して長時間待ち伏せ、部屋に押し入り計画的に殺害したとして殺人罪を認定。弁護側は「ナイフが誤って刺さった」と主張したが、被告の説明は「女性との身長差やナイフの持ち方から不自然で信用できない」と退けた。その上で、「遺族は遺体の一部すら発見されない状況で死と向き合わされ、悲嘆は大きい。人命を軽視している」と断じた。
備 考
 東京地裁は、被害女性の氏名や住所を法廷で明らかにしない秘匿決定を行っている。

 どちらかは不明だが、控訴中。

氏 名
星久宏(40)
逮 捕
 2017年11月10日
殺害人数
 2名
罪 状
 殺人、傷害致死、死体遺棄、詐欺、傷害、公文書毀棄
事件概要
 郡山市、無職星久宏被告は2007年8月ごろ、福島市のアパートで、同居していた同市出身の男性(当時37)の胸を数回殴り、けがを負わせて死亡させた。そして星被告と弟は下郷町の空き地に穴を掘って遺体を埋めた。星被告と男性は2006年2月ごろ、福島市の派遣会社から福島県北の製造関係会社に派遣されていた。星被告は男性から金銭を受け取っていた。またアパートには弟も同居していたが、事件当時は外出していた。2008年3月、男性の母親が福島署に行く女不明届を提出した。
 星久宏被告は2016年1月下旬〜5月下旬ごろ、宇都宮市のアパートで、同居していた二本松市出身の男性の両耳を殴ったり、頭にオイルをかけてライターで火を付けるなどしてけがを負わせ、6月7日、男性(当時42)の喉などを殴って窒息死させた。7日夜〜8日未明、弟と一緒に下郷町の空き地に穴を掘って遺体を埋めた。星被告と男性は、東京電力福島第1原発事故に伴う除染関係の仕事に福島県内で従事。星被告が上司の立場だった。2016年10月、二本松市出身の男性の両親が行方不明届を提出。
 2017年11月10日、二本松市出身の男性の遺体が発見され、捜査本部は死体遺棄容疑で星久宏被告と弟を死体遺棄容疑で逮捕。両被告の供述から20日、遺体発見現場から約1km離れた町道脇の空き地で福島市出身の男性の遺体が発見された。12月3日、二本松市出身の男性殺害容疑で星被告を再逮捕。2018年1月17日、福島出身の男性殺害容疑で星被告を再逮捕。死体遺棄容疑については時効が成立している。2月7日、地検は殺意を立証できなかったとして傷害致死容疑で星被告を追起訴した。
 2月19日午後2時50分ごろ、詐欺容疑で取り調べ中に作成中の供述調書を破ったとして星被告を公文書毀棄容疑で現行犯逮捕した。逮捕は8回目。
裁判所
 福島地裁 柴田雅司裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2018年12月14日 懲役30年
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2018年11月26日の初公判で、星久宏被告は「殺意はなかった。傷害致死には関わっていない」と起訴内容を一部否認した。死体遺棄、詐欺、傷害、公文書毀棄については認めた。
 検察側は冒頭陳述で、星被告はいずれの男性にも日常的に暴行を加えていた上、「借金の立て替え分」などとして2人の親から現金を詐取していたと主張。二本松市の男性については、男性から「警察や親に真実を話す」と言われたことに腹を立てて殺害したと指摘した。福島市の男性については、男性の親が弁護士に相談したため「告げ口された」と考えて激怒し、さらに暴行を加えたとした。弁護側は2016年の事件について「星被告に殺意はなく、傷害致死にとどまる」と主張。検察側が否定した救命措置についても「星被告が現場で行った」として反論した。2007年の傷害致死については一切かかわっていないとして無罪を主張した。
 28日の第3回公判における被告人質問で、無罪を主張している2007年の傷害致死事件について「(被害男性を)殺したのは弟」と述べた。2016年の事件で遺体の処分に弟を呼んだ理由を「10年前は(遺体の処分を)手伝ったので、今回は手伝ってもらった」と説明した。
 12月7日の論告求刑で検察側は、2007年の傷害致死事件に関して「犯行のいきさつは極めて悪質」と指摘。2016年の殺人事件は、被害者を孤立させて家族から金をだまし取るという2007年の傷害致死事件と同じ構図だったとして、「犯行がエスカレートしており、有期懲役は適当でない」と強調した。
 同日の最終弁論で弁護側は、2007年の事件は「客観的な証拠がない」と無罪を主張。2016年の殺人事件は殺意を否定して傷害致死罪の適用を求め、「悪質性が高いことは否定できないが、凶器を使っていないなど傷害致死事件で最も重い事案とまでは言えない」と述べ、懲役15年が相当と主張した。
 判決で柴田裁判長は、星被告が殺意と傷害致死事件の実行を認めた捜査段階の供述について「ほかの証拠と整合し、内容も具体的」と指摘。2007年の事件について、被告の弟の証言などを踏まえ、「犯人であることに合理的疑いはないと言える」とした。殺意の有無が争点となった2016年の殺人事件についても星被告が救護措置を取らなかったことなどを理由に、「殺意をもって被害者の喉を5回殴打した」と認定した。そして10年の間に同様の事件を繰り返したことに「暴力の程度は残酷さを増している」と悪質性を指摘した上で、精神的に支配した男性に暴力を振るい、その家族からも現金を詐取する手口を繰り返したとして「悔いて自重した生活を送るどころか、暴力の程度が残酷さを増しており、非難の程度は大きい」などと結論付けた。一方、懲役30年判決とした理由について「殺人2件を犯した場合と比べて(刑事責任が)重いとまでは言えない」とした。「有期刑の上限(30年)が相当」と説明した。
備 考
 二本松市出身の男性の死体遺棄容疑に問われた弟は2018年3月8日、福島地裁(宮田祥次裁判官)で懲役2年6月、執行猶予5年(求刑懲役2年6月)の判決が言い渡された。控訴せず確定。

 控訴せず確定。




※銃刀法
 正式名称は「銃砲刀剣類所持等取締法」

※麻薬特例法
 正式名称は「国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律」

【参考資料】
 新聞記事各種

【「犯罪の世界を漂う」に戻る】