求刑無期懲役、判決有期懲役 2019年度





 2019年度に地裁、高裁、最高裁で求刑無期懲役に対し、有期懲役・無罪の判決が出た事件のリストです。目的は、無期懲役判決との差を見るためですが、特に何かを考察しようというわけではありません。あくまで参考です。
 新聞記事から拾っていますので、判決を見落とす可能性があります。お気づきの点がありましたら、日記コメントでご連絡いただけると幸いです(判決から7日経っても更新されなかった場合は、見落としている可能性が高いです)。
 控訴、上告したかどうかについては、新聞に出ることはほとんどないためわかりません。わかったケースのみ、リストに付け加えていきます。
 判決の確定が判明した被告については、背景色を変えています(控訴、上告後の確定も含む)。

What's New! 5月31日、千葉地裁は少年被告に一審懲役20年判決(求刑無期懲役)を言い渡した。




【最新判決】

氏 名
少年(18)
逮 捕
 2018年3月2日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗致死、住居侵入
事件概要
 千葉県茂原市の無職少年C被告(当時17)は、同市内のアパートで同居する土木作業員の少年A被告(事件当時18)、無職少年B(当時18)と共謀。2018年2月26日午前1時15分ごろ、同市に住む女性(当時85)宅に侵入。寝室で女性を床に押し倒して殴ったり首を絞めるなどして現金約12,000円を盗み、包丁で首を3回刺して殺害した。
 女性は長女と同居していたが入院したため1人で生活。近くに住む長男夫婦が頻繁に訪れていた。
 26日午前8時55分ごろ、長男の妻が倒れている女性をみつけ、119番通報。3月2日、捜査本部は少年3人を強盗殺人と住居侵入の疑いで逮捕した。
 千葉地検は3月19日、少年A被告と少年Cを千葉家裁に送致した。同家裁は同日、2週間の観護措置を決定した。23日、少年Bを千葉家裁に送致した。家裁は同日、2週間の観護措置を決めた。4月3日までに千葉家裁は少年A被告に対し、2週間の観護措置延長を決定した。千葉地検は同日、少年Bと少年Cを別の窃盗事件で再逮捕した。千葉家裁は4月13日、少年A被告を検察官送致(逆送)とする決定をした。千葉地検は20日、強盗殺人罪などで少年A被告を起訴した。
 県警捜査3課は6月7日、茂原市を中心に2017年12月〜2018年3月に相次いだ窃盗事件約50件に関与したとして、少年B、少年Cを含む同市などの17〜19歳の少年5人を窃盗などの容疑で逮捕・送検したと発表した。そのうち少年Bと少年Cは事件前日の2月25日未明から早朝にかけて、盗み目的で女性方に侵入し金品を物色していた。千葉家裁は6月29日、少年Bと少年Cを検察官送致(逆送)とする決定を出した。千葉地検は7月6日、少年Bと少年Cを強盗殺人や住居侵入などの罪で起訴した。
裁判所
 千葉地裁 川田宏一裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2019年5月31日 懲役20年
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2019年5月20日の初公判で、少年C被告は「2人の少年との間で殺人の共謀はありませんでした」と述べ、殺意を否定した。
 冒頭陳述で検察側は、被害者が「金は腹の中にある」「殺すなら殺せ」と話したことから、C被告が少年A被告に対し「じゃあ、殺す?」と発言したと指摘。少年A被告が首を絞め、その後少年B被告に挑発されて殺害を実行し、「C被告は2人のやり取りを見ていたのに制止しなかった」として、殺人の共謀が成立するとした。弁護側は、C被告の発言に他の2人から反応はなかったとし「2人のやり取りをぼうぜんと見ていただけに過ぎない。帰ることを促していた」と殺害への関与を否定。強取した金は1万円だったとした。
 同日、A被告が出廷し、当時の状況を証言。被害者の首に手を押し当てている際に「手が疲れたのでC被告に代わってもらおうと頼んだら、左手で力を入れて5、6秒首を絞めていた」と明かした。強盗を計画した時に「何だったら殺しちゃえよ」と言われたとも述べた。
 24日の論告で検察側は、C被告が殺害を実行したA被告に向けて「じゃあ、殺す?」と発言したことが、殺害のきっかけとなったと指摘。事件前に「何だったら殺しちゃえよ」とも述べていたとして「自らの手は汚さず暴行させ、場合によっては殺害も構わないと思っていた」と批判した。  また、土木作業員の少年に代わって被害者の首を手で絞めたとして「怒りにまかせた行為で殺意があった」と述べた。
 同日の最終弁論で弁護側は最終弁論で、「じゃあ、殺す?」との発言について「被害者が“殺すなら殺せ”と言ったので思わず発したもの。直後に殺害行為もしておらず、ほかの2人も反応していない」と殺害の共謀を否定。首を絞めたとされることは「(証言したA被告が)これまで自身の裁判などで話しておらず、信用できない」と反論した。そして強盗致死罪にとどまるとして、少年法に基づき懲役10〜15年の不定期刑が妥当と訴えた。
 判決で川田裁判長は「殺すなら殺せ」と発言した女性にC被告が返した「じゃあ、殺す」の言葉は「売り言葉に買い言葉」で、自然な流れで出たものと指摘。仲間を止めなかったのも年下の立場上、「制止しにくい関係にあった」との可能性を示し、殺人について「共謀していなかった」と判断して適用せず、強盗致死を適用した。量刑理由では「落ち度のない被害者の死という結果は誠に重く、遺族が厳しい処罰感情を抱くのも当然」と説明。無期懲役が相当としながらも、犯行時の年齢や殺害行為に関与していないことを挙げ、少年法の適用で有期懲役刑として「その最上限の刑に処するのが相当」と述べた。
 判決言い渡し後、川田裁判長は被告少年に「今回犯した事件に向き合い、自分にできることをずっと考えていってほしい」と説諭した。
備 考
 少年A被告は2019年1月24日、千葉地裁(川田宏一裁判長)の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。被告側控訴中。



【2019年度 これまでの有期懲役、無罪判決】

氏 名
石田美実(61)
逮 捕
 2014年2月26日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、窃盗、建造物侵入
事件概要
 鳥取県米子市の元ラブホテル従業員、石田美実被告は2009年9月29日午後10時ごろ、9月中旬まで働いていた米子市内のラブホテルの従業員事務所で金品を物色中、支配人の男性(当時54)に見つかり、頭を壁にぶつけたり、首をひも状のもので絞めたりして意識不明の重体に負わせ、現金約26万8千円を強奪した。
(以上は起訴罪状)
 鳥取県警は内部に詳しい人物の犯行とみたが、被害者の男性が意識を取り戻さないことから、慎重に捜査を続けた。
 その後トラック運転手をしていた石田被告は2014年9月5日、別のクレジットカード詐欺で逮捕された。鳥取県警は2014年2月26日、石田被告を強盗殺人未遂、建造物侵入の両容疑で再逮捕した。
 被害者の男性は暴行に基づく多臓器不全が基で2015年9月、60歳で死亡。鳥取地検は12月15日、石田被告について強盗殺人罪への訴因変更を地裁に請求。2016年2月15日付で認められた。
裁判所
 広島高裁 多和田隆史剛裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2019年1月24日 地裁へ差し戻し
裁判焦点
 2018年11月27日の差し戻し控訴審初公判で、弁護側は最高裁の判断には事実誤認の法令違反があるとして無罪を主張した。検察側は、一審鳥取地裁判決が認定した殺人と窃盗罪ではなく強盗殺人罪に当たると主張、結審した。
 判決で多和田裁判長は、「被告は金品を物色している姿をホテル事務所に戻った被害者に見とがめられ、口封じのため強盗殺人の犯行に及んだ」と述べ、「強盗殺人罪を認めなかった一審判決には明らかな事実誤認がある」と述べ、地裁へ差し戻した。
備 考
 2016年7月20日、鳥取地裁の裁判員裁判で、求刑無期懲役に対し、一審懲役18年判決。起訴罪状である強盗殺人を否定し、殺人と窃盗を適用した。2017年3月27日、広島高裁松江支部で一審破棄、無罪判決。2018年7月13日、最高裁第二小法廷で高裁差し戻し判決。

氏 名
石崎太(34)
逮 捕
 2018年7月29日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗致死、強盗致傷、住居侵入
事件概要
 栃木市の自称とび職、石崎太被告は、指定暴力団住吉会系組員、渡辺武久被告の指示を受け、仕事仲間である鹿沼市のとび職I被告に共犯者の紹介を依頼。紹介された宇都宮市の無職S被告とともに2018年5月13日午前0時〜1時30分ごろ、栃木市に住む男性(当時82)宅に押し入るも、同居の長男(当時59)に遭遇したため暴行した後、何も取らずに宇都宮市のとび職F被告が運転する車で逃走した。渡辺被告は知人の無職の女から、男性宅に現金があると知らされ、知人の石崎被告に犯行を指示した。
 再び渡辺被告に強盗を支持された石崎被告は、F被告に粘着テープなどを用意させたうえで、I被告から紹介された少年被告と共謀。7月26日午前0時ごろ、同じ家に押し入り、暴行して男性を死なせ、長男にも殴って重傷を負わせ、現金約30万3千円や預金通帳3冊を奪った。その後、F被告の運転する車で逃走した。
 県警栃木署捜査本部は7月29日、石崎被告と少年被告を強盗殺人他容疑で逮捕。8月7日、強盗殺人他容疑で渡辺被告を逮捕。9月5日、強盗致傷容疑で渡辺被告、石崎被告を再逮捕。S被告とF被告を強盗致傷他容疑で逮捕した。9月19日、強盗致傷幇助他容疑で無職の女性を逮捕。
裁判所
 宇都宮地裁 佐藤基裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2019年1月30日 懲役29年
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2019年1月22日の初公判で、石崎太被告は「間違いない」と起訴内容を認めた。
 24日の論告で検察側は、「1回失敗したことを踏まえて新たに刃物などを持っていった計画的な犯行。他の実行犯に役割分担を指示をして主要な暴行を加えるなど、実行犯の中でも主導的な役割を果たした。奪った現金を指示役に黙って山分けするなど、金目当てだったのは明らか」と主張した。
 弁護側は最終弁論で、「本人は実行したくないと共犯者にこぼしていたが、指示役の暴力が怖くて絶対服従の関係にあった。報酬も犯行に見合う額ではなかった」と、分け前目当てを否定。「他の実行犯とは初対面などで上下関係はなく、主導的な立場ではなかった」とし、懲役20年への減軽を求めた。
 判決で佐藤裁判長は、計画的な上、同じ家に2度押し入り、事前に凶器を準備したり率先して暴行したり、主導して犯行を実行するなど「非常に悪質」と指摘。動機は「金を(指示役に渡さず)使っていることから、金目当てであることは明らか」とした。しかし、犯行を計画したのは指示役の渡辺武久被告で、逆らえなかった面もあることや、計画を知ったのは立案から数カ月後であり、罪を認め捜査にも協力的なことから、首謀者と比べれば責任は軽く、求刑された無期懲役でなく有期刑が相当とした。
備 考
 強盗致死罪などに問われた宇都宮市の無職少年(事件当時19)は2019年1月18日、宇都宮地裁(佐藤基裁判長)で懲役8年以上15年以下(求刑懲役10年以上15年以下)判決。犯行に参加したのは友人のためで金品目的ではなく、共犯者内での立場も最も従属的なものだったと認定された。控訴せず、確定。

 被告?側は控訴した。

氏 名
宮口義弘(59)
逮 捕
 2016年4月15日
殺害人数
 1名
罪 状
 傷害致死(起訴は強盗殺人)、死体遺棄
事件概要
 埼玉県春日部市の不動産コンサルタント・宮口義弘被告は約200万円の借金返済を免れるため、単独または氏名不詳者と共謀して2016年2月3日頃、春日部市に住む知人の無職男性(当時73)を窒息させて殺害し、遺体を自分の車の荷台に隠した。5日頃、遺体を群馬県藤岡市の空き地に埋めた。(以上は起訴内容)
 男性は一人暮らしで、2月5日に福祉関係者が訪ねたが、室内に姿がなく、連絡を受けた男性の長男が2月12日、春日部署に行方不明者届を提出。埼玉県警は事件に巻き込まれた可能性があるとみて捜査を開始。交友関係から宮口被告に話を聞いたが、説明に不審な点があったため、関係先を捜査したところ、藤岡市の空き地に掘り返した場所があり、地表に手が出ているのを4月8日に捜査員が発見。県警は15日、宮口被告を死体遺棄容疑で逮捕した。6月9日、強盗殺人容疑で再逮捕。
裁判所
 東京高裁 栃木力裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2019年2月8日 一審破棄、地裁差し戻し
裁判焦点
 2019年1月18日、控訴審初公判。検察、被告双方が控訴していた。
 地裁は実質的な審理が終わった後、検察側に対し、起訴内容を「単独犯」から「氏名不詳者と共謀」した可能性を含めたものに変更するよう促した。弁護側は審理再開を請求したが、地裁は認めないまま、変更後の事実で有罪と判断していた。
 判決で栃木裁判長は、一審の裁判官が証拠調べ終了後、検察官に単独または氏名不詳者との共謀による犯行とするよう訴因変更を促したうえで変更を許可した一方、弁護人の弁論再開請求を却下したと指摘。「弁護人の反証の機会を奪うもので極めて不当」と非難。審理をやり直す必要があると結論付けた。
備 考
 2018年2月6日、さいたま地裁の裁判員裁判で一審懲役10年判決(求刑無期懲役)。強盗殺人の成立を認めず、傷害致死を適用した。

氏 名
池谷佳峰(34)
逮 捕
 2016年4月22日
殺害人数
 3名
罪 状
 殺人、殺人未遂
事件概要
 静岡県浜松市の会社員、池谷佳峰(いけや よしたか)被告は2016年4月22日午前0時25分ごろ、自宅で眠っていた祖母(当時83)、姉(当時32)をサバイバルナイフで刺して殺害。午前3時ごろ、経営していたスナックでの仕事を終えて帰宅した母(当時62)を殺害し、父(当時60)の腰などを刺して殺害しようとした。
 池谷被告は父ともみ合いになり、ナイフを取り上げられたため、台所の包丁で自らの腹部を刺したが死にきれず、自宅から車で逃走したが、天竜浜名湖鉄道の金指駅付近で単独事故を起こした後、徒歩で逃走。午前3時10分頃、父親が110番通報。約4時間後、約3.5km離れた住宅街で池谷被告が発見され、同署は父親への殺人未遂の疑いで緊急逮捕した。5月12日、3人への殺人容疑で再逮捕した。
 池谷被告は、勤めていた磐田市の自動車部品製造会社で同僚が作業手順を守っていないことを上司に報告。これをきっかけに、同僚らから悪口を言われていると感じるようになり、4月13日と15日に上司に退職を申し出た。しかし、退職を認めてもらえず、4月18日以降、病院の精神科を受診するという理由で休職となった。20日にインターネットで刃渡り23cmのサバイバルナイフを購入。犯行前日の21日に自宅で父親と鉢合わせをした際に驚いた顔をされたことから、会社の上司が父に自身の悪口を伝えたと思い込み、職場の現状を家族に知られる前に殺害に踏み切ろうと犯行への決意を固めた。
 静岡地検浜松支部は池谷被告の鑑定留置を浜松簡裁に5月26日付で請求して認められた。
裁判所
 東京高裁 朝山芳史裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2019年5月20日 懲役25年(一審破棄)
裁判焦点
 2018年2月20日の控訴審初公判で、弁護側は責任能力の認定に誤りがあるなどとする控訴趣意書を提出した。検察側は「精神鑑定は不必要でやむを得ない事由はない」などと述べ、控訴棄却を求めた。朝山裁判長は弁護側の請求に基づき、精神鑑定の実施を決めた。
 2019年1月24日の第2回公判で、高裁が指定して精神鑑定を実施した精神科医の証人尋問が行われた。池谷被告が事件当時発症していた妄想性障害について、精神科医は「家族を殺害する動機につながった」などと述べ、犯行に一定程度影響を与えたとの認識を示した。捜査段階で精神鑑定を行った別の医師は妄想性障害の影響では犯行の説明がつかないと一審で証言していた。一審判決では犯行動機の形成について、鑑定結果に基づき、「元来の人格や性格に基づくものと推測される」と認定したが、精神科医は「人格で説明できるのかははっきりしない」と述べた。
 3月12日の公判で、検察側は控訴棄却を求めた。弁護側は職場のトラブルが原因の妄想性障害だったと訴え、「事件当時は心神喪失状態だった」と無罪を主張し、心神喪失が認められない場合は「心神耗弱だった」として懲役14年が相当と主張して結審した。
 判決で朝山裁判長は、争点となった被告の責任能力に関して、「被告は職場でいじめに遭っているという被害妄想を抱き、家族にも被害が及んでいるとの妄想を募らせ、苦痛と絶望感が増した結果、犯行に及んだ」と妄想性障害による被害妄想の影響を挙げ「行動制御能力が著しく減退した状態にあった」と判断。犯行動機については「被害妄想が大きく影響し、人格や性格からは説明困難」と述べた。量刑は心神耗弱の状態や被害者の父親が厳罰を望んでいない点などを考慮した一方、結果の重大性や一定の計画性などを認め、弁護側が主張する心神喪失状態にはないと結論づけた。
備 考
 2017年7月21日、静岡地裁浜松支部の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。被告側は上告した。




※最高裁ですと本当は「判決」ではなくて「決定」がほとんどですが、纏める都合上、「判決」で統一しています。

※銃刀法
 正式名称は「銃砲刀剣類所持等取締法」

※麻薬特例法
 正式名称は「国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律」

※入管難民法
 正式名称は「出入国管理及び難民認定法」

【参考資料】
 新聞記事各種

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