加納一朗『秘密の探偵術』


加納一朗 『秘密の探偵術 これがプロのテクニックだ!』
(廣済堂出版 豆たぬきの本)




『秘密の探偵術』


 『秘密の探偵術 これがプロのテクニックだ!』

 著者:加納一朗
 (加納一朗:SF、ミステリなど多数執筆)

 発行:廣済堂出版 豆たぬきの本

 発売:1979年10月15日初版

 定価:380円(ただし、1987年 8刷時)




 探偵といってもいろいろある。アメリカの私立探偵は拳銃を持つことを許されているし、大きなホテルには専属の探偵もいて、宿泊客の盗難やまぎれこむ怪しい人間を監視している。外国の推理小説に出てくる私立探偵はさっそうとして、かっこいい。
 彼らが、実際にどういう仕事をしているのかとなると、わりに地味でコツコツと歩きまわることが多い。しかし、さすがはプロである。その捜査や調査のテクニックは、現代の科学技術をフルに使っていてびっくりするほどだ。
 この本はプロの私立探偵というものはどういうものかという実際面と、映画や小説のスーパーヒーローたちの両者を紹介するとともに、彼らの目標に迫っていくすごい技術も合わせておさめた。もし、きみたちがなにかの事件にぶつかった場合、役に立つかも知れない基礎知識だ。
 実際にわれわれは、探偵のような活動をしなくてはならない場合が、往々にしてあるものだ。情報の収集、ある人間についての知識がほしいとき、そうしたときにはこの本が役に立つだろう。
 本文には触れていないが、私立探偵に必要なのは、なによりも体力と先入観にとらわれずに正確にものを見る目である。悪用はいけない。知った情報は秘密にして、人にもらさないことが第一の条件であることは、世界各国の私立探偵に共通していることだ。フィリップ・マーロウやエルキュール・ポワロになるか、落ちぶれた悪徳探偵になるかは、条件を正しく守るか守らないかにはじまるのだ。
 まず、新聞紙上のニュースについて、自分なりの紙上推理でトレーニングしてみよう。それがうまく解決できたら、きみは−私立探偵の素質がある。

(「はじめに きみも私立探偵になれる」より)


【目 次】
1 探偵ゲームに挑戦 きみの探偵能力をテストする
2 探偵術徹底研究 プロのテクニックを公開する
   1 尾行術
   2 変装術
   3 暗号術
   4 人物鑑定術
   5 調査術
   6 情報整理術
   7 証拠収集術
   8 証拠分析術
   9 鑑識術I
   10 鑑識術II
3 私立探偵ヒーローたち きみはどの名探偵をマークする
4 秘密探偵の事件簿 行動開始!解決まではこうする
 他に「私立探偵の豆知識」が12編、「探偵のスーパー兵器」が6編収録されている。

 推理クイズ14問に、私立探偵のテクニック、名探偵紹介、探偵の事件簿が収録されている異色推理クイズ本。
 推理クイズそのものは加納一朗の過去の推理クイズ本から移植されたものが多い(特に数問は、『探偵クイズ 謎とトリック』と全く一緒)が、少年ものと違い、やや突き放した感じの筆致が今までのクイズと異なる印象を与えている。
 2章の探偵術については、いわゆる警察、名探偵のテクニックではなく、浮気調査や人物調査などを主に扱うような私立探偵のテクニックを重点的に紹介している点が珍しい。警察の鑑識術なども紹介されており、実務的に役立つ技術ばかりを紹介しているといえる。ただ、出版当時では最新技術でも今ではもっと新しい技術が用いられていることも多いので、このあたりの取扱いはかなり難しい。
 3章の私立探偵ヒーローたちは、海外の私立探偵のみが紹介されている。まあ、ホームズやクイーンを“私立探偵”という括りに入れていいかどうかは迷うが、警察側の立場にいない探偵という意味が含まれているのだろう。それに、探偵という職業に就いているものばかりが選ばれているのも興味深い。こういう括り方があったのかと、今更ながら感心した。
 4章は事件簿。といっても私立探偵の事件簿ではなく、普通の人が探偵のテクニックを用いて身の回りに起きた不具合を解消しようというものだ。逆に言えば、素人にも身近な話題であるため、説得力がある。探偵術というと特殊技能のように思えるが、実は意外に簡単なものであり、あとは使い方の問題だけであるということを教えてくれる。

 ミステリに出てくるような名探偵や警察のテクニックを紹介したものは多いが、私立探偵のテクニックという点を中心にしたものは、専門書を除けばあまりない。しかもそれを少年向きの豆本でやってしまったところが凄い。ちょっと内容が難しく、狙いが成功しいているとは言い難いが、コンセプトとしては面白いものではないだろうか。ちょっと変わった推理クイズ本としてお薦めである。


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