ささいな手ぬかり


【問 題】
 彼は、外の雨のように泣いていた。彼は会社の金を使い込んだとして、事業から手を引くようにと共同経営者から言い渡された。もはや言い逃れはできなかった。しかも返答時間は5分しかなかった。22時には共同経営者の若い女が来る予定になっていたのだ。それも何かもめ事があるらしい。もはや手段は一つ、彼はテーブルの上の短剣を取り、共同経営者を殺した。自分のふれた物の指紋は全て吹いて消した。電気も全て消し、玄関から外へ出た。彼が経営者の家に入ってから降り出した雨は、すでにやんでいた。彼は足跡を付けないように門の外へ出た。
 すると、裏庭の木戸から一人の若い女が忍び足で入ってきた。それを待っていた彼は大急ぎで門を出て、近くの警察分署に飛び込んだ。22時の約束で経営者の家を訪ねたが、ベルを鳴らしても、戸をたたいても誰も出ない、と。分署にいた警部と一緒に経営者の家に行き、裏へ廻ると明かりのついた書斎で若い女が机の抽斗の中をかき回している。もちろん、女は経営者を殺したことを否定していたが、状況が悪い。警部は女を捕まえ、警察で尋問することにした。そこで、彼は、警部と女を私の車に乗せていきましょうと申し出た。
 しかし警部は彼の車の周りを懐中電灯で見たとたん、彼を殺人犯人として捕らえたのだ。いったい、どこに手ぬかりがあったか?


【解 答】
 車の下が乾いていたので、雨が降り出す前に経営者の家を訪れていたことが分かったのだ。

【覚 書】

 このネタはバリエーションが多い。雪を利用したケースもある。これを逆手に取ったアリバイトリックも多いですね。元ネタはE・フレミング「ささいな手ぬかり」です。

 ※解答部分は、反転させて見てください。
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