華麗なる大泥棒


【問 題】
 相棒のケントの情報に間違いはなかった。忍び込んだメヒュム氏の屋敷には、大きな金庫があった。フィリップの腕に間違いはない。頑丈なカギも、フィリップの腕にかかればあっという間だった。金庫の中には札束や宝石がどっさりとあった。さっそく……と思った瞬間、フィリップの頭に拳銃が突きつけられた。
「泥棒くん、そこまでだ」
 金庫の中に気を取られ、後ろから人が近づいていることに気付かなかったのは不覚だった。
「ジョージ、丁重に縛ってあげなさい」
「はい、旦那様」
 タキシードの男が、フィリップを縛り上げる。
「やいやい、明かりぐらい付けたらどうなんだ。電気代なんかへでもないだろう」
 せめてもの抵抗とばかり、大声を上げるフィリップだった。
「だんなさま、電話がつながりません」
「へ、電話線を切るぐらい、当然だ」
「仕方ない、ジョージ。私がここを見ているから、外まで走って警官を呼んできてくれないか」
「はい、かしこまりました」
 ジョージは屋敷を出ていったが、すぐに警官を連れて戻ってきた。
「ご主人様、ちょうどパトロール中のお巡りさんがおりましたので、連れて参りました」
「お、こいつは手配中のフィリップじゃないか。大物ですよ。ご主人さん、お手柄でしたね。明日、署の方から感謝状が出ると思いますよ。ほら、さっさと歩け。それでは、失礼します」
 縛られたままのフィリップを連れ、警官は屋敷を出ていった。

 ところが翌日、警察署の元にメヒュム氏と執事が現れた。
「た、た、大変だ。泥棒が入られた。金庫の中の金や宝石がごっそり取られた。わしゃ、破産じゃ」

 一方、隣町ではハンバーガーを食べながらのんびりと歩くフィリップとケントがいた。

 果たして、この不思議な話の真実は?


【解 答】
 フィリップを連れていった警官は、実はケントの変装姿だった。ケントは警官の格好をしながら見張りを努めていたのである。捕まったことを悟ったケントは、タキシードの男が出てきたのを幸い、パトロール中の警官の振りをしたわけである。
 ところが、フィリップを捕まえた旦那とタキシードの男は、メヒュム氏と執事ではなかった。この二人も、実は泥棒だったのである。メヒュム氏の金庫を狙って押し入ったところ、フィリップが入ってきたので、とっさに屋敷の主人と執事という扮装をしたのだ。フィリップを捕まえても明かりを付けなかったのは、そういうわけだった。

【覚 書】

 クイズの方は劇画だったため、文章で書くよりずっとわかりやすかったと思う。

 元ネタはケネス・ダイヤ―「怪盗往来」ですが、英国のミステリ作家ヴィクター・カニングのショートストーリー「Never Trust a Lady(決して女性を信頼しない)」でも使われていました。こちらは女性バージョンです。偶然の一致なのか、それとも何らかの関係があるのか。

 ※解答部分は、反転させて見てください。
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