列車に乗った死体


【問 題】
 強請の天才といわれた小森は、自宅のある東京から750kmも離れた岡山県の山中で、遺体となって発見された。紐で絞め殺されていたので、他殺なのは間違いない。
 前日の夕方、小森に会った人物がいるので、それまで生きていたことは確かだ。
 死体解剖の結果、小森が殺害されたのは遺体が発見された午前8時よりも10時間ほど前、前日の午後10時頃とわかった。
 小森の妻の証言では、午後7時頃に電話がかかってきたので、普段着のまま手ぶらで出かけたとのことである。小森は何者かに呼び出され、殺され、岡山県の山中に捨てられたらしい。
 捜査本部は小森を恨んでいる人物のアリバイを調べていくうちに、二人の容疑者が残った。東京のタクシー運転手である大河原と、大阪のトラック運転手である遠藤である。
 大河原は捜査本部の取り調べに対し、アリバイをこう主張した。
「午後8時頃、近所の食堂で飯を食ったよ。それから仕事に出て、また腹が減ったので、午前1時頃に同じ食堂でラーメンを食べたよ」
 食堂を調べた結果、大河原は嘘をついていないことがわかった。またタクシーの記録では走行距離が500kmであった。時間と距離を考えても、大河原が岡山まで往復できるはずがない。
 遠藤は捜査本部の取り調べに対し、こう語った。
「昨日は一日中仕事で走り回っていたよ。午前0時半には仕事が終わって、大阪の店で食事をしていたよ」
 こちらも調べた結果、遠藤が嘘をついていないことがわかった。午前0時半に大阪にいた男が、小森を殺害するのは不可能だ。
 東京発午後8時発のひかり号に乗れば、午後11時10分に新大阪に着くのだが、小森は午後10時頃に死んでいる。死体が列車に乗るはずがない。
 東京〜大阪は、東名高速道路を通って約560km。車で7〜8時間はかかる。大阪〜岡山はまだ高速道路が走っていないので、国道2号線を使うことになるから、150kmを3時間はかかるだろう。
「大河原が東京から岡山まで車で走ったとしたら10時間はかかる。遠藤が大阪から東京へ行き、岡山まで走った後に大阪に戻るとしたらそれ以上かかる。いずれにしても二人のアリバイは確かだ」
 しかし捜査本部は、ひとつだけ可能な方法を見つけだしたのである。その方法は。そして犯人の名前は。

 この事件は、まだ山陽自動車道が開通していない昭和53年頃の話である。なお、小森の妻の証言や、小森の死亡時刻に間違いはない。




【解 答】
 大河原と遠藤の共犯である。
 午後7時頃、大河原が小森に電話をしておびき出す。そして小森の手足を縛り、猿ぐつわをする。
 午後8時頃、大河原は東京の食堂でアリバイを作る。遠藤は大阪を出発。大河原も食事後、小森を乗せて東名高速道路に乗る。
 午後10時頃、二人は高速道路の真ん中である浜松サービスエリアで落ち合い、小森を殺害する。死体は遠藤のトラックに乗せて大阪へ戻る。大河原は東京へ引き返す。
 午前0時半頃、遠藤は大阪でアリバイを作る。
 午前1時頃、大河原は東京でアリバイを作る。遠藤は岡山へ死体を捨て、大阪に戻る。

【覚 書】

 これはよく考えられているな、と思いました。小説のなかではもっとひねりを加えて使われていますが、こうやって単純化しても推理クイズには向いているトリックですね。

 ※解答部分は、反転させて見てください。
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