サボテンの鉢


【問 題】
 名探偵ホロムスは、体育クラブに通ってボクシングの練習をしている。
 その日も練習を終えて、一階の更衣室で着替えをしていたら、クラブの支配人が慌ただしくやってきた。
「ホロムスさん、大変です。私の部屋に泥棒が入って、机の引き出しに入れておいた5000ポンドの金が盗まれたのです。すぐに犯人を見つけて下さい」
 支配人室は二階にあって、その左隣はフェンシングの練習場、右隣は剣道の道場になっている。わざわざ日本から剣道の師範を招いて作らせた本格的な道場で、床は板張りになっていた。
 ホロムスが支配人室に行ってみると、机の引き出しはみな引き抜かれて、乱雑に荒らされていた。小さいサボテンの植木鉢が三つ、床に落ちて割れている。サボテンの一つが踏みつぶされて、トゲが折れていた。
「支配人、このサボテンはどうしたんです?」
「わたしが机の上に飾っておいたんですよ。メキシコ産のサボテンです。犯人が机を物色したとき、うっかり落としたんでしょう」
「どうやら犯人は逃げるとき、だいぶ慌てたらしく、サボテンを一つ足で踏みつけている。ところで、支配人、ドアには鍵をかけていなかったんですか?」
「ほんの五、六分、部屋を留守にしただけだったので、鍵はかけていませんでした。怪談の下で、ちょっと人と立ち話をしていたんです。そのあいだ、階段を上がり下りした者は一人もいませんでしたよ」
 二階へ上がる階段は一つしかない。その階段の下で、支配人が立ち話をして、いわば監視していたわけであるから、犯人は外部のものとは思われない。二階のフェンシング部か、剣道部の者があやしいことになる。
 そこで、ホロムスが両方の部員を調べたところ、つぎの二人が練習中に数分間、こっそり抜け出したことがわかった。
 サム・モーラン(フェンシング部)
 ジョージ・ハリス(剣道部)
 ホロムスが両方の練習場を覗いてみると、この二人は何食わぬ顔で、それぞれ熱心に稽古をしている。モーランは鏡に向かって、サーベルで突きのポーズを繰り返しており、ハリスは剣道の防具を付けて、竹刀で打ち合いの練習をしている。
 ホロムスは二人の練習ぶりを見比べて、ふと、あることに気が付くと、ずばり真犯人を指さした。
 はて、その犯人はどちらか。そして、その証拠は?


【解 答】
 更衣室は一階にある。当然二人とも、一階で着替えて、二階に上がっているのだ。ということは、盗みにいったときは練習着のままだったことになる。
 剣道に限らず、柔道、空手などの日本の武術は、裸足で練習や試合をするから、もし剣道部のハリスが犯人なら、サボテンを踏むと、足の裏にとげが刺さって、とても練習を続けられない。
 フェンシング部のモーランなら運動シューズを履いているから、サボテンを踏んでも平気である。
 犯人はモーランである。

【覚 書】

 藤原宰太郎の推理クイズ本にはよく載っているものです。この設定ですから、やっぱり海外のミステリが元ネタなんでしょうか。
 ところがこのクイズ、気になるところがあるんですよね。
 他の人が靴を履いて歩くところを、いくら剣道部員だからって、裸足で歩きますかね? やっぱり靴や、せめて草履ぐらいは履きそうなものですが。
 まあクイズですから、そんな細かいところを突っ込んじゃいけないんでしょうけれど。

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