謎の伝言方法


【問 題】
 那智は喫茶店に入り、昼食を取っていた。すると白髪の老人が近づいてきて、那智に声をかけた。
「ここに座ってもいいですか。他の席は埋まっているものですから……」
 確かに昼時で喫茶店は込んでいた。那智はもちろん快諾した。老人は椅子に座り、ランチを注文した。
 昼食が終わった那智は、残っていたお冷やを飲んでいた。すると喫茶店のウェイトレスが、頼んでもいないコーヒーを持ってきた。
「あちらのお客様が、このコーヒーを差し上げてくれとのことです」
 ウェイトレスが手を広げた先にある離れたテーブルにいたのは、なんと恋人の恭介だった。しかし恭介は、雑誌を読んでこちらに目もくれない。
 せっかくなので、那智はそのホットコーヒーを飲むことにした。老人は運ばれてきたランチをうまそうに食べている。
 コーヒーを三分の二ほど飲んだところで、那智はその老人に話しかけた。
「山崎さん、老人の変装がとてもお似合いですね。全然わかりませんでした」
 なんと老人だと思ったその人は、那智と恭介が所属する演劇学校の先生である山崎の変装だったのだ。今までの老人の声とはうってかわった若々しい声で、
「ほう、那智くん。ばれてしまったか。この変装には自信があったんだが、よく見破ったな」
「あそこにいる恭介が教えてくれたんですよ。それでは、失礼します」
 那智は伝票を取ると、向こうのテーブルにいた恭介とともに喫茶店を出ていったのである。
 山崎は合点がいかなかった。遠くのテーブルにいた恭介がどうやって那智に老人が山崎の変装であることを教えることができたのだろうか。見た限り、二人が合図を出し合っているようには見えなかったし、ウェイトレスも余計なことは言っておらず、またメモらしきものも渡していないのだ。
「お客様、こちらのコーヒーはまだ残っておりますがお下げしてもよろしいでしょうか」
 別のウェイトレスが、食べ終わった山崎の皿とともに、那智の飲んだコーヒーカップを下げに来た。先ほどとは違うウェイトレスだったので、コーヒーカップは山崎が飲んだものと勘違いしたらしい。
 すると突然、山崎は恭介の伝言方法に気付いた。さて、それはどういう方法だったのか。


【解 答】
 恭介はコーヒーカップの底に、消えないインクで「老人は山崎」と書いたのだ。そしてそれをウェイトレスに持っていかせたのである。那智は最初気付かなかったが、カップを傾けたとき、底に書いてあるのを見て、山崎の変装のことを知ったのだ。那智は山崎に気付かれないように、わざとコーヒーを飲み残していたのだ。

【覚 書】

 これも最初に考えた人はうまいですね。まあ弁償したのかどうか気になりますが(笑)。

 ※解答部分は、反転させて見てください。
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