走行距離


【問 題】
 梯子から伯父が墜落して死んだという連絡を受け、松毬警部は通報した山本洋平の家に向かった。
 洋平の家は、豪邸といってもよかった。広い花壇の縁に沿い、梯子の跡が二つ付いている。倒れた梯子と家の壁の間に、洋平の伯父である山本洋太が倒れて死んでいた。
「私は家の中で本を読んでいたのですが、悲鳴が聞こえてきたので慌てて来てみると、伯父がここに倒れていたんです」
 松毬警部は若い洋平に尋ねた。
「伯父さんは何をしていたんですか?」
「伯父は壁の上にあった蜂の巣を取ろうとしたんです。蜂はすでに追い払い、巣だけ残っていました」
 上の方を見ると、確かに蜂の巣が残っている。そして蜂はいないようだ。
「なぜ若い君がやらなかったんだ?」
「僕は高いところが苦手なので……」
「現場はいじってないかね」
「はい、そのままです」
「ところで他に家族は?」
「伯父は独身の一人暮らしで、私が居候しています」
「これだけでかい家だと、かなり財産がありそうだね」
「伯父は元々商事会社を経営していました。今は引退しましたが、今でも会社の株を持っているはずです」
「身内は君一人かね」
「はい、そうなります。私は伯父の妹の一人息子になります」
「今は何をやっているんだ」
「実は会社がつぶれて仕事がなく、ここで肩身の狭い思いをしています」
「そうか。だから財産が欲しかったのか。もっとも君が殺したのだから、財産は相続できないがね」
 松毬警部はなぜ伯父が事故死ではなく、殺人だと見破ったのか。


【解 答】
 伯父は梯子と壁の間に倒れていた。壁に梯子をかけて昇っていた人物が、壁と梯子の間に落ちるはずがない。甥の洋平は窓から伯父を突き落とし、それから梯子を置いて偽装工作したのだ。もちろん、財産目当てである。

【覚 書】

 藤原宰太郎などの推理クイズでよく見る作品。分かりやすく、クイズには向いている手がかりです。
 元ネタが判明。オースティン・リプレイ『続推理試験』(荒地出版社)の推理クイズ「自然な死」でした。もっとも、さらにその元ネタがあってもおかしくはないですが。何かで読んだ記憶があるので。

 ※解答部分は、反転させて見てください。
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