ローレンス・トリート『絵解き5分間ミステリー』


ローレンス・トリート『絵解き5分間ミステリー』
(扶桑社ミステリー文庫)




『絵解き5分間ミステリー』 『絵解き5分間ミステリー』

 作者:ローレンス・トリート
(1903年ニューヨーク生まれ。弁護士となるが、パリに移り、執筆活動をはじめる。絵解きパズルも、この頃から手がけた。「警察小説の父」と称され、45年にはアメリカ探偵作家クラブ(MWA)の創設に貢献。17本の長編と300本以上の短編を残したほか、TV脚本の執筆、『ミステリーの書き方』の編集など、多彩な活動を行い、エドガー賞を3度受賞。1998年死去。)

 イラスト:レスリー・カバーガ

 訳者:矢口誠

 扶桑社ミステリー文庫

 発売:2004年12月30日初版

 定価:552円(初版時 税抜き)





(前略)
 甥との知恵くらべから生まれたアイディアをもとに、わたしは推理クイズ・ブックの出版を思いたちました。それを知ったウィルバーは、わたしに一冊のノートを差しだし、ここに記録されている事件を自由に使っていいといってくれました。もちろんわたしは、そのチャンスにすぐさま飛びつきました。
 わたしはウィルバーの助けを借り、事件を単純化しています。この本におさめられた推理クイズには、私の甥に解けないほど複雑なものはひとつもありません。ちなみに、ウィルバーはわたしに多くの知識をさずけてくれました。たとえば、彼にいわせると、犯罪学は正確には科学ではないのだそうです。この本におさめられた推理クイズも、絶対に確実な証拠をもとに解くのではなく、常識的な推理を積み重ねて解いてください。実際、警察の仕事とは基本的にそういうものなのです。
 この本の絵を描いたのは甥でもわたしでもなく、才能豊かなイラストレーターのレスリー・カバーガです。カバーガの絵は、事件現場の様子を手にとるようにはっきりと伝えてくれています。
 それぞれの推理クイズは、さまざまな時代に起きた事件をもとにしています。どの推理クイズも、問題をひとつひとつ順番に解いていくと、最後に正しい解答にたどりつけるはずです。ただし、もしあなたがウィルバー・ユニセックスと同レベルの名探偵を自認しているなら、最初の方の問題を飛ばし、いきなり最後の問題に挑戦してもかまいません。いずれにしても、知恵を絞って謎を解き、本書を心ゆくまで楽しんでいただければ幸いです。

(「はじめに」より)


  1. まず最初に説明文をよく読んでください。ここには重要な手がかりがたくさん隠されています。
  2. つぎに、答えを出そうとしないで、問題を一通りすべて読んでください。そうすると、図からなにを読みとるべきかわかるはずです。
  3. 図をしっかり見てください。
  4. 鉛筆を手にとってください。
  5. 問題をひとつずつ順番に解いていきましょう。もしあなたが初心者なら、順番に解いていくことで、自分が正しい推理を展開しているかどうかを確認することができます。自分にはもうじゅうぶん推理力がついたと感じたときには、最初の方の質問は飛ばし、ラストの問題にいきなり挑戦してもかまいません。
  6. 最後に解答を読んでみましょう。もしすべて正解なら、ご自分を褒めてあげましょう。もし不正解の場合にも、がっかりしないで次の推理クイズに挑んでください。
(「推理クイズの解き方」より)


 ウェバーの『5分間ミステリー』シリーズがヒットしたせいか、扶桑社はついに他の作家の作品にまで“5分間ミステリー”シリーズをつけることにした。それが本書、『絵解き5分間ミステリー』である。さすが扶桑社というべきか。
 原題は『Crime and Puzzlement』、1981年に出版されている。当然のことながら、どこにも「5分間ミステリー」の言葉は出てこない。1985年にTBS出版社から、『クライムパズル』のタイトルで出版されていたのだが、そのことはどこにも明記されていない。なお訳者は異なっている。
 「推理クイズの解き方」にもあるとおり、まずは説明文があり、事件のイラストが描かれている。次に「問題」として10問前後の問いが用意されている。この問いは二択or三択となっている。そして「問題」の最後で、犯人の名前ないし事件の真相を推理するという形になっている。それは今までの問いを答えていけば、推理することができるようになっている。設問は全部で24問。
 「まえがき」にもあるとおり、イラストを注意深くみればほとんどの「問題」を解くことができる。現場の状況を見ながらひとつひとつ推理して、事件の真相に迫るという形は実際の捜査に近く、常識的な推理の仕方が少しずつ身に付くようになっている。自信がある人なら、イラストだけからいきなり真相を暴くのも面白いだろう。
 解答の最後には、事件の皮肉な結末が書かれており、そのブラックユーモアぶりには笑えてしまう。
 推理を楽しむには格好の一冊。ただ問題は、イラストが見開きで描かれているため、肝心の所で見えない部分があることだ。


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