山村正夫編『新トリック・ゲーム』


山村正夫編 『新トリック・ゲーム』
(日本文芸社)




『新トリック・ゲーム』


 『新トリック・ゲーム』

 著者:山村正夫編

山村正夫:1931年生。愛知県出身。1949年「二重密室の謎」でデビュー。以後、多くのミステリを手がける。『湯殿山麓呪い村』で角川小説賞を受賞、映画化もされた。元日本推理作家協会理事長。1999年没。

 発行:日本文芸社

 発売:1976年1月10日初版

 定価:600円




 前に日本文芸社から刊行した『トリック・ゲーム』は、幸い読者に歓迎され、大変好評だったようである。
 今なお版を重ねて売れ行きが好調なのは喜ばしいことだが、それというのもああしたクイズ形式のミステリー(パズラー)は、時代の変換や世代の相違にかかわらず、推理ファンの間に熱心な要望があるせいに違いない。謎を合理的に解明したいという知的な興味は、人類が始まって以来、身に備えている本能的な欲求の一つで、文明が発達すればするほど強まる傾向にあるから、今後ますます盛んになっても、下火になることはまずあり得ないだろう。
 ところで、ミステリー・クイズが普通のクイズと異なる点は、作者が読者を意識して仕掛けたトリッキーな要素にある。(中略)
 『トリック・ゲーム』のほうは、内外の名作の中からトリックとして面白いものを、作者の了解を得て選んだのだが、もともとクイズとして書かれていない作品が多く、それをダイジェストしたので、若干の無理がなくはなかった。
 そこで今回は、第一線で活躍中の現役推理作家のグループである『推理文学界』の諸氏に、それぞれとっておきの出題を執筆していただいた。おのおの持ち味の違うバラエティーにとんだ作品揃いだが、いずれも謎解きを主にして趣向を凝らしたものばかりだから、頭脳のレクリエーションにはもってこいで、読者もきっと満足がゆくに違いない。ことに『トリック・ゲーム』でトリックの知識を身につけられた方には、格好の腕試しが出来ることだろう。
(まえがき「新トリック・ゲーム」についてより抜粋)


<第1章>手がかりのトリック篇
 浮気の現場:加納一朗
 高校生の身代金:川辺豊三
 殺人ゲームの部屋:川奈寛
 課長の心得:加納一朗
 崖下の死体:風見潤
 受胎:冬木喬
 きんこんかん:笠原卓
 主犯はどこだ:井口恭子
 A夫人の悲劇:井口恭子
 見張られた部屋:西村京太郎

<第2章>偽証トリック篇
 全裸殺人事件:斎藤栄
 オーバー・ザ・レインボー:加納一朗
 あられもない死:千代有三
 夜、走る:加納一朗
 口実:山村美紗

<第3章>偽装トリック篇
 愛のカンパ:桂真佐喜
 ややこしい死:西東登
 しばれる夜:加納一朗
 誰が為に鐘は鳴る:天藤真
 ホステス殺人事件:加納一朗
 二人の容疑者:菰田正二
 消えた電話ボックス:小林久三

<第4章>殺人トリック篇
 建築現場にとどろく銃声:大谷羊太郎
 飛来した矢:和久峻三
 ふたりでお酒を:加納一朗
 ヌード撮影会殺人事件:高原弘吉
 林の中の絞首台:山村正夫
 社員寮殺人事件:桜田忍

<第5章>アリバイ・トリック篇
 最短コース:森村誠一
 結末:山村正夫
 文化の日の殺人:藤村正太
 誰が?:石沢英太郎
 ただいまお話ちゅう:山村正夫

<第6章>密室トリック篇
 蔵の中:麓昌平
 容疑者ゼロ:鈴木五郎
 密封された寝室:幾瀬勝彬
 白い視野:草野唯雄

名探偵のプロフィール12名


 ラインナップされた作家には懐かしい名前やおやっと思う名前もあり、そういう面でいえば持っていて損はない作品集だと思う。ただ、肝心の推理クイズ、というより犯人当て小説集としては、出来が今ひとつといえよう。
 犯人当てとして適当な作品は、既存のトリックから流用したものがほとんどである。逆に犯人当てが難しい作品は、肝心の手がかりの説明が今ひとつである。挙げ句の果てには、自分の小説から引用したため犯人を当てようにも当てられないものもある。やはり手慣れた人に書かせるべきだったか。

 現在載せている画像は、1976年版のもの。たぶん、初版と思われる。日本文芸社は初版の日付を載せてくれないので困る。しかもカバーのイラストもよく変わるので、追いかけるのが大変である。

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