岡嶋二人『ちょっと探偵してみませんか』


岡嶋二人『ちょっと探偵してみませんか』
(講談社文庫)




『ちょっと探偵してみませんか』 『ちょっと探偵してみませんか』

 作者:岡嶋二人
(徳山諄一と井上泉のコンビ。1982年、『焦茶色のパステル』で第28回江戸川乱歩賞受賞。1985年『チョコレートゲーム』で第39回日本推理作家協会賞を受賞。1988年、『99%の誘拐』で第10回吉川英治文学新人賞を受賞。1989年にコンビを解消。現在は田奈純一、井上夢人の名前で活動をしている)
 講談社文庫

 発売:1989年3月15日初版

 定価:370円(初版時 税込み)





 25の謎であなたに挑戦する、鬼才岡嶋二人の傑作推理短編集。犯人はだれか、なぜ完全犯罪は破れたか、暗号やダイイング・メッセージの解読。「ちょっと考えてみて下さい」という文章が探偵ゲームの始まりです。(南伸坊のイラスト入り)この本はパラパラめくらないで下さい。答えが先に見えてしまう恐れがあります。(粗筋紹介より引用)
 単行本『ちょっと探偵してみませんか―How to succeed as a detective without really trying』は1985年11月、講談社より刊行。
【収録作品】
「ラスコーリニコフの供述」「誰が風を見たでしょう」「三年目の幽霊」「曇りのち雨」「Behind the Closed Door」「ご注文は、おきまりですか」「ボトル・キープ」「マリーへの届け物」「水の上のロト」「死後、必着のこと」「煙の出てきた日」「高窓の雪」「断崖の松」「組長たちの休日」「最後の講演」「愛をもってなせ」「明かりをつけて」「ルームランプは消さないで」「机の中には何がある?」「穏やかな一族」「酔って候」「シェラザードのひとりごと」「聖バレンタインデーの殺人」「奇なる故にこれをのこす」「たった一発の弾丸」

 人気作家だった岡嶋二人が、「ショートショートランド」(講談社)、「パズラー」(世界文化社)で1983〜1985年に掲載した推理パズル25編を集めた作品集。発言の嘘探し、ダイイング・メッセージ、犯人当て、犯人のミス探し(倒叙形式)、暗号、ハウダニットなど様々なジャンルの問題が用意されている。
 解説の新保博久は、この種の推理パズルには五つのパターンがあると書いている。

 フーダニット(Who Had done it?):何人かの容疑者から犯人を当てさせる
 手がかり探し:犯人は分かっているが、その決め手を探すもの。容疑者の嘘などを探す
 ハウダニット:密室殺人や、どうやって毒を飲ませたかなど、方法が謎になっている
 暗号:本物の暗号や、ダイイング・メッセージなど
 倒叙:犯人の側から描いたもので、犯人のミスを当てるもの

 理論的には他にもホワットダニット(いったい何が起こったか。本作品では「ご注文は、おきまりですか」が該当)、ホワイダニット、ホエンダニット、ホエアーダニットなども存在する可能性がある。

 『5分間ミステリー』などと違って、特殊な、というか百科辞典的な知識を必要とする問題がない。ヒントは巧妙に、しかし気付いた人にはわかりやすく埋め込まれているので、解こうとする意欲も湧くし、解いたときの快感は格別である。
 登場人物のネーミングや、解答編での洒落た終わり方なども面白い。例えば「三年目の幽霊」での幽霊が乗り移ったヤカンが怒りで沸騰すると、慰めるために水を入れるといったエンディングとなっている。別の問題ではたった一行で解答が示されており、効果的なエンディングになっている。
 この手の推理パズルとしては、高い位置にランキングされる作品といえよう。

 悩むのは、これを推理クイズとして分類するか、犯人当て小説として分類するかである。これは今後の課題としたい。

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