藤崎誠『世界名探偵図鑑』


藤崎誠『世界名探偵図鑑』
(立風書房 ジャガーバックス)




『世界名探偵図鑑』


 『世界名探偵図鑑』

 作者:藤崎誠

 発行:立風書房 ジャガーバックス

 発売:1975年5月15日

 定価:530円(初版時)




【目 次】
 ルパン対ホームズ(名場面)
 Xの悲劇(名場面)
 獄門島(名場面)
 87分署の刑事たち
 第一章 ルパン対ホームズ
  1 シャーロック・ホームズ
  2 アルセーヌ・ルパン
 第二章 天才名探偵
  3 ミス・マープル
  4 ブラウン神父
  5 ドルリー・レーン
 第三章 日本の名探偵
  6 明智小五郎
  7 金田一耕助
  11 砂絵かきのセンセー
 第四章 刑事の名探偵
  12 フレンチ警部
  13 スティーブ・キャレラ(87分署の刑事)
 第五章 テレビの名探偵
  20 刑事コロンボ
  28 マクロード警部
 第六章 ハードボイルドの名探偵
  29 フィリップ・マーロウ
  31 マイク・ハマー
 第七章 名探偵勢ぞろい
  32 オーギュスト・デュパン
  35 エルキュール・ポアロ
  42 ギデオン・博士
  47 墓堀りジョーンズと棺桶エド
  51 マルティン・ベック

 作者の藤崎誠は、後の評論家・瀬戸川猛資のこと。古本屋やオークションでは万単位で出ることも多い一冊。カバー無しだが、ようやく入手することができた。
 ちなみに目次は間違いではない。本当にこう書かれている。推理クイズや作品紹介などがある探偵を目次に載せているようだ。ただし違うケースもあるので、一概にそうとは言い切れない。ちなみに他の名探偵は以下。作品中に番号はないが、ここでは便宜上付けている。

   8 三河町の半七
   9 むっつり右門
   10 銭形平次
   14 マイヤー・マイヤー
   15 バート・クリング
   16 ハル・ウイルス
   17 ロジャー・ハヴィランド
   18 コットン・ハウズ
   19 アーサー・ブラウン
   21 アイアンサイド
   22 会田刑事(非情のライセンス)
   23 藤堂刑事(太陽にほえろ)
   24 特別機動捜査隊
   25 夜明けの刑事
   26 伝七
   27 遠山金四郎
   30 リュウ・アーチャー
   33 隅の老人
   34 ヴァン・ドーゼン教授
   36 トミーとタペンス
   37 チャーリー・チャン
   38 ファイロ・ヴァンス
   39 エラリー・クイーン
   40 サム・スペード
   41 メグレ警部
   43 ペリー・メイスン
   44 ヘンリー・メルヴィル
   45 ネロ・ウルフ
   46 神津恭介
   48 ヴァージル・ティッブス
   49 ドーヴァー警部
   50 アル・ウイラー

 タイトル通り、世界の名探偵を紹介した一冊だが、章分けや探偵のセレクトに、作者らしい独特の視点が見え隠れする。イラストの一部は、海外の雑誌から採ったものではないだろうか。思考機械の一部イラストに見覚えがあるのだが。また、映画やテレビなど、映像時のスチールが多く用いられているのも特長の一つ。それにしても、コロンボはともかく、マクロード警部やアイアンサイト警部、会田刑事(天地茂、『非情のライセンス』)、鈴木刑事(坂上二郎、『夜明けの刑事』)あたりまで載っているのは作者ならではか、それともこの時代ならではか。
 日本の名探偵が明智小五郎と金田一耕助ぐらいで、後は捕物帳というのは少々残念(最終章で神津恭介が出てくるが)。この捕物帳も、映像を多く使っているのが特長。遠山の金さんまで入れるのはどうかとも思うが。
 少年向けとは思えないアダルトなネタも含まれている。例えばマイク・ハマーの紹介部分には、『裁くのは俺だ』のラストの名場面がダイジェストで載っている。何のことかわからない小学生もいただろうな。カーター・ブラウンのアル・ウイラー警部も登場し、イラストは女性の尻を触っているところ。おいおい。メイヴィス・セドリッツあたりが出てきていたらどうなっていたことか。どうせだったら、ついでにハニー・ウェストも映像で出せばよかったのに。
 わずかではあるが、推理クイズも載っている。とはいえ、名作のダイジェストみたいなクイズであり、純粋な推理ものではない。興味を引くためにクイズ形式にした、という程度のものである。
 巻末の名探偵番付はともかく、藤崎が選んだ探偵小説ベスト10は面白いので、ここで紹介する。
  1 赤毛のレッドメーンズ
  2 さむけ
  3 災厄の町
  4 火刑法廷
  5 殺意
  6 予告殺人
  7 ドーヴァー4/切断
  8 歯と爪
  9 失踪当時の服装は
  10 笑う警官

 異色の名探偵紹介本として貴重な一冊だと思うが、スチールの権利の絡みもあるからだろうか、復刊の気配は全くなし。とても残念である。

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