獅騎一郎『ハイッ!こちら探偵局』


獅騎一郎 『ハイッ!こちら探偵局』
(KKベストセラーズ ワニ文庫)




『ハイッ!こちら探偵局』


 『ハイッ!こちら探偵局』
  難問奇問にチャレンジする

 著者:獅騎一郎
(1931年、東京生まれ。衆議院速記者養成所卒後、毎日新聞社勤務。その間、ミステリー映画のシナリオ作家として活躍。またパズル作家としての著書も多数ある)

 発行:KKベストセラーズ ワニ文庫

 発売:1994年6月5日初版

 定価:490円(初版時)




 私がミステリーを読むときの、インチキ読書法をご紹介しましょう。
 それは、ミステリーの本を手に取ったら、まず終わりのほうのページから読みはじめます。そして、犯人やトリックがわかるとひと安心して、はじめのページにもどるのです。すると、読み進んでいくうちに、「このトリックで読者を引っかける魂胆だったのか」とか、「ははあ、ここが作者の、苦心の伏線だったのだな」などとうなずきながら、ミステリーを楽しめるのです。
 こんなことがミステリー作家に知れたら、私はぶん殴られるかもしれません。
 でも、忙しい毎日の中、本を一冊読むだけでも大変なのに、途中で何度も休みながらミステリーの謎解きをするというのは、なかなかむずかしいと思うのです。
 作家の都筑道夫氏はいっておられます。サラリーマンの翌日の勤めに差しさわりのない読書の限界時間は午前3時。そして、3時になっても読み終わらないときは、終わりのほうを見て、安心して寝るということです。
 これはサラリーマンにかぎらず、勉強やクラブ活動に忙しい小、中、高校生も同じことがいえましょう。
「通学や通勤途中の電車やバスの中、あるいはちょっとした休み時間に、本を開いて少しずつ読むのだけれど、ストーリーが途切れがちになるので、どうしてもトリックや謎解きのおもしろさが半減する」
 そんな話もよく耳にすることがあります。
 そこで、トリックを中心としたコントのような短いミステリークイズができないかと思っていたところ、思いがけず出版の機会をあたえられました。これなら、どこからでも読め、どこで読み終えてもいいし、忙しい人でも手軽にミステリーの謎解きが楽しんでいただけると思います。
 それぞれのストーリーは短いのですが、その中にはとびきりのトリックを用意して、名探偵である皆さんを待ち受けています。いつも同じ解き方ばかりだと、なかなか犯人はつかまりません。頭を柔らかくして、いろいろな考え方でトリックにチャレンジしてみてください。また、友だちなどに出題して、彼らの謎解きの腕前を拝見するのもいいでしょう。
 各章の終わりには、本文で疲れた頭をいやしてくれる「絵解きミステリー」も用意されています。絵の中に隠されているトリックを見抜くというのも、ふつうのミステリー小説では味わえない楽しみでしょう。
 さあ、好きな時間、好きな場所で、気軽に読んでみてください。そのうち、夢中になって読んでいる自分自身を発見して、「オヤッ?」と意外に思うかもしれません。
 でも、そうして読んでくれる皆さんが一人でも多くいることが、私の心からの願いなのです。

(まえがき「ミステリーは気楽に楽しもう!」より引用)

【もくじ】
 第1章●トリックを見破れ!
 第2章●暗号を解き明かせ!
 第3章●犯人・凶器を捜せ!
 第4章●推理力で挑め!


 パズル作家獅騎一郎が「推理クイズ」というジャンルのクイズのみを纏めた1冊。既存のミステリから引用したもの、オリジナルではあるが過去に発表したと思われるものが中心である。パズル慣れしているというか、さすがベテランというか、いかにもただ引用しましたよというだけの作品ではなく、自分なりに味つけしているところがさすがであり、読んでいても退屈しない。
 全編ではないが、花房警部が登場する。ただしこの警部、名探偵ではなくてただの狂言回し。さっさと捜査を終わらせたいらしく、いつも適当なことをいっては周りにいる他の探偵役(部下や事件関係者、素人探偵など)にやり込められている。このあたりのやり取りも、ただクイズを解かせるのではなく、読者を飽きさせないように工夫が凝らしてある。
 クイズ慣れしている人には難易度に不満があるかもしれないが、読んでいても退屈しない一冊といえる。

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