『傑作 推理ミステリー10番勝負』
名探偵のあなたへ10のミステリーの挑戦状
著者:秋月達郎、芦川淳一、嘉祥マーシ、夏野百合、矢島誠
秋月達郎:1959年愛知県生まれ。早稲田大学卒業後、東映に入社。映画プロデューサを経て、作家となる。
芦川淳一:1953年東京都生まれ。早稲田大学卒業。出版社勤務後、ジュニア小説、ホラーおよびミステリー漫画原作、児童図書などを執筆。
嘉祥マーシ:占術研究家。新聞・雑誌等で、主に風水、陰陽道、占星術の専門記事を執筆している。その他、風水や占いを題材にした推理小説の分野でも活躍。
夏野百合:栃木県生まれ。杏林短期大学卒業。臨床検査技師のかたわら執筆活動をスタートし、主に短編推理の世界で活躍している。
矢島誠:1954年東京都生まれ。出版社勤務を経て1988年デビュー。第29回江戸川乱歩賞候補、題8回横溝正史賞候補。ノベルスミステリーを中心に執筆。
永岡書店 コスモ文庫
発売:1999年9月10日初版
定価:486円(初版時)
この本は、ミステリーの命である<<トリックの解明>>のページが、袋とじになっている短編推理小説集です。
一〇の物語の中には、密室、アリバイ崩し、ダイイング・メッセージ、フーダニット(犯人探し)、凶器トリックなど、ミステリー各ジャンルにわたって、私たち五名の手練れが腕によりをかけて、いたるところに、奇想天外な謎を仕掛けておきました。
あなたは、シャーロック・ホームズのごとく、最新の観察眼をもって隠された手掛かりを見つけ、エルキュール・ポワロのごとく、大胆な推理力を発揮しながら、注意深く本文を読み進んでください。
とにかく油断は禁物です。短編ながらも、それぞれに趣向を凝らした、一〇篇の個性的な小説が並んで、ページが開かれるのを待ちかまえているのです。目の前に繰り広げられる不思議ワールドに、あなたが目を奪われてしまえば、まさに私たち書き手の思う壺です。あなたは、私たちが仕掛けたミス・リードの罠に落ち、トリックの迷宮に迷い込んでしまうでしょう。(皆さまを、楽しく迷宮へご案内できるよう、日夜研鑽しております)
いよいよ、袋とじの部分に到着したところで、<<いざ、真剣勝負の開始です>>
焦らずに、あなたの灰色の脳細胞をフルに働かせて、推理してみてください。正解につながる手掛かりはすべて、本文や説明図の中に、きっと隠されているはずです。
袋ページの扉には、『あなたが解き明かすべき謎』が、具体的に提示されています。諦めずに、もう一度、本文を読み直して、必ずあなた自身の答を見つけだしてください。
思う存分に、あなたの推理を尽くした上で、カッター・ナイフなどを使って、袋とじ部分を切り開いてください。その二ページの中に、私たちが全精力を傾けて考案したオリジナル・トリックの全貌が解説されています。
勝敗のルールは簡単。あなたの推理と、袋とじのトリックが一致していれば、あなたの勝ち。異なっていれば、私たちの勝ちとなります。
そのようなことはないであろうと予想していますが、もし、あなたが、一〇問すべてに完全に正解できるとしたら、それはまさに世紀末の奇跡です。あなたは、古今東西の名探偵と肩を並べる、恐るべき頭脳の持ち主です。
そして、私たちは、そのような素晴らしい読者を持ったことを心から誇りに思い、喜んで負けを認めましょう。
いざ、ページをお開けください。
短編10本を収録した推理クイズ集。解答部分が袋とじになっている。この袋とじというのは本当に読みづらく、よほど好きな人でなければ手に取ることはないと思うので、今までの推理クイズ集みたいにちょっとした暇つぶしに読もうという読者を離れさせる結果になっていると思うのだが、どうだったのだろうか。
相変わらず自信満々の前書きであるが、トリックのほとんどは既存のものをちょっと手直しした程度のものばかりであり、目新しさに欠ける。過去に出版された推理クイズ集よりは文章に余裕があるぶん、少しは読めるものになっているが、中には「夜叉神峠の一族」みたいなクイズの形態すらなしていない作品もある。
五人とも今まで色々な推理クイズ本に参加してきているのだから、もう少しましなものを作ってほしいと思う。
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