ノンフィクションで見る戦後犯罪史
【2016~2020年】(平成28~令和2年)



【2016年】(平成28年)

日 付事 件
7/8 概 要 <博多金塊強盗事件>
 名古屋の半グレ集団のリーダー格だった会社役員のN弟(41)は、NR(40)から金塊の取引情報を入手し、奪うことを計画。会社員のN兄(43)と名古屋市に住む会社役員K(37)と共謀。さらに、いずれも名古屋市に住む会社社長SN(26)、工員SR(33)、会社員U(24)を仲間に引き入れた。2016年7月8日午前9時半ごろ、福岡市博多区のビル1階で警察官を装い、貴金属会社役員男性(38)らが近くの貴金属店に売却する予定だった金塊160個(160kg 時価7億5,800万円相当)や現金約130万円が入ったキャリーケースを奪った。盗んだ金塊のうち90kgは東京都内の業者に約4億3,000万円で売却され、7人で山分けされた。残りの70kgはNRの情報提供者に渡されたとされるが、情報提供者は行方不明で明らかになっておらず、金塊も見つかっていない。
 福岡、愛知両県警は2017年5月22日、N弟、K、SN、SRを窃盗容疑で逮捕。23日、Uを窃盗容疑で逮捕。29日、N兄とNRを窃盗容疑で逮捕。他に盗品等処分あっせん容疑で3人が逮捕されたが、いずれも嫌疑不十分で不起訴となっている。
 7人全員が被害者側との合意の上の出来レースであったとして、無罪を主張するも、裁判所は否定。2019年1月21日、福岡地裁はSRに懲役7年(求刑懲役9年)、SNとUに懲役5年6月(求刑懲役8年)を言い渡した。SRがSNとUを引き入れたと判断した。SNとUはおそらく控訴せず確定。2019年9月10日、福岡高裁はSRの控訴を棄却。
 2019年1月22日、福岡地裁はN兄弟に懲役9年(求刑懲役10年)を言い渡した。2019年9月17日、福岡高裁は被告側控訴棄却。N兄は上告せず確定。N弟は上告するも12月27日付で上告取り下げ、確定。
 2019年1月31日、福岡地裁はNRに懲役8年(求刑懲役10年)を言い渡した。控訴したかどうかは不明だが、2019年中に確定している。
 2019年2月20日、福岡地裁はKに懲役8年(求刑懲役10年)を言い渡した。控訴したかどうかは不明だが、2019年中に確定している。
 N弟は、事件の被害者とされる金属販売業者から依頼された出来レースであると主張。再審請求を予定している。
文 献 野口和樹『出来レース 実録・博多金塊強盗事件の真相』(宝島社,2019)
備 考  愛知県警の複数の警察官が、N兄弟に捜査情報を漏洩したとの疑いがある。
7/26 概 要 <相模原殺傷事件>
 2016年7月26日午前2時頃、神奈川県相模原市の障害者施設の元職員U(26)は、同園東側居住棟1階個室の窓を割って侵入。個室にいた19歳の入所者を刺して殺害した。さらに、入所していた26歳から70歳の女性9人の首などを刃物で刺して殺害。他にも重軽傷を負わせた。さらに西側居住棟1、2階で男性入所者9人を襲撃して殺害し、他にも重軽症を負わせた。3時過ぎ、神奈川県警津久井署に「私がやりました」とUが出頭し、同署が最初の入所者襲撃による殺人未遂(後に殺人に切り替えられる)と建造物侵入容疑で緊急逮捕した。19人殺害、27人重軽傷は、個人による犯罪としては事件当時の戦後最悪。
 Uは2012年から同施設に勤務していたが、2016年2月ごろから障害者へ差別発言を繰り返すようになった。2月14日には衆院議長公邸に手紙を持参し、翌日には今回の犯行予告と取れる手紙を渡していた。19日には、他人を害する恐れがあるとして緊急措置入院、同時に施設を退職となった。尿検査で大麻の陽性反応があり、「大麻精神病」などと診断されたため、同22日に措置入院の手続きが取られた。3月2日に症状が治まったとして医師の判断に基づき、退院していた。
 8月15日、東棟の女性入所者9人に対する殺人容疑で再逮捕。9月5日、西棟の男性入所者9人に対する殺人容疑で再逮捕。横浜地検は9月21日から2017年2月20日まで鑑定留置を実施。2月21日、起訴した。
 2020年3月16日、横浜地裁の裁判員裁判で求刑通り一審死刑判決。弁護人が控訴するもU自らが控訴を取り下げ、死刑判決が確定した。
 2022年4月1日付でUは、横浜地裁に再審請求した。
文 献 朝日新聞取材班『妄信 相模原障害者殺傷事件』(朝日新聞出版,2017)

朝日新聞取材班『相模原障害者殺傷事件』(朝日文庫,2020)

雨宮処凛『相模原事件・裁判傍聴記 「役に立ちたい」と「障害者ヘイト」のあいだ』(太田出版,2020)

井原裕『うつ病から相模原事件まで』(批評社,2017)

井原裕『相模原事件はなぜ起きたのか』(批評社,2018)

太田順一郎・中島直『相模原事件が私たちに問うもの』(批評社,2018)

河東田博『入所施設だからこそ起きてしまった相模原障害者殺傷事件』(現代書館,2018)

神奈川新聞取材班『やまゆり園事件』(幻冬舎,2020/幻冬舎文庫,2022)

月刊『創』編集部『開けられたパンドラの箱 やまゆり園障害者殺傷事件』(創出版,2018)

月刊『創』編集部『パンドラの箱は閉じられたのか 相模原障害者殺傷事件は終わっていない』(創出版,2020)

佐藤幹夫『津久井やまゆり園「優生テロ」事件、その深層とその後』(現代書館,2022)

立岩真也、杉田俊介『相模原障害者殺傷事件 優生思想とヘイトクライム』(青土社,2016)

西角純志『模原障害者殺傷事件 元職員による徹底検証 裁判の記録・被告との対話・関係者の証言』(明石書店,2021)

藤井克徳、池上洋通、石川満、井上英夫『生きたかった 相模原障害者殺傷事件が問いかけるもの』(大月書店,2016)

保坂展人『相模原事件とヘイトクライム』(岩波ブックレット,2016)

堀利和編『私たちは津久井やまゆり園事件の「何」を裁くべきか 美帆さん智子さんと、甲Zさんを世の光に!』(社会評論社,2020)

森達也『U 相模原に現れた世界の憂鬱な断面』(講談社現代新書,2020)

「相模原知的障害者施設殺傷事件(平成28年)――19人殺害は戦後最悪の記録」(片岡健『平成監獄面会記』(笠倉出版社,2019)所収)
備 考  


【2017年】(平成29年)

日 付事 件
3/24 概 要 <千葉小3女児殺人事件>
 千葉県松戸市の不動産賃貸業で小学校の保護会長だったS(46)は、小学校の修了式だった2017年3月24日朝、自宅から登校中だった小学3年でベトナム国籍の少女(9)を軽乗用車で連れ去り、車内でわいせつな行為をしたうえ、何らかの手段で首を圧迫して窒息させて殺害。遺体を我孫子市の排水路の橋の下の草むらに遺棄した。26日朝、遺体が発見され、翌日には茨城県坂東市の利根川河川敷でランドセル発見された。千葉県警捜査本部の聞き込み捜査などから、Sが容疑者として浮上。その後の捜査で、我孫子市の死体遺棄現場の遺留物から採取したDNA型と、SのDNA型が酷似していることがわかった。4月14日、死体遺棄容疑でSを逮捕。5月5日、殺人他の容疑で再逮捕。
 殺人、強制わいせつ致死、わいせつ目的略取・誘拐、死体遺棄罪で起訴されたSは捜査では一切黙秘、後半では一貫して無罪を主張。2018年7月6日、千葉地裁の裁判員裁判で、求刑死刑に対し一審無期懲役判決。裁判長はDNA鑑定の結果からSの有罪を認定。ただし過去の量刑傾向から無期懲役を選択した。2021年3月23日、東京高裁で検察・被告側控訴棄却。2022年5月11日、被告側上告棄却、確定。
文 献 「千葉小3女児殺人事件」(高木瑞穂、You Tube「日影のこえ」取材班『日影のこえ メディアが伝えない重大事件のもう一つの真実』(鉄人社,2022)所収)
備 考  
7/26 概 要 <座間市アパート9人殺害事件>
 神奈川県座間市の無職Sは2017年8月23日から10月23日、Twitterで自殺願望をほのめかす女性をターゲットに「一緒に死にましょう」などとメッセージを送って近付き、実際に会った女性8人を自室に招き入れ、強制性交。男性1人を含む9人を、ワンルームのロフトから下げたロープで首を吊って殺害した。所持金を奪い、遺体をのこぎりなどで切断して室内のクーラーボックスなどに遺棄した。
 10月24日、最後に行方不明になった女性の兄が、高尾署に捜索願を提出。女性の行動などを捜査したところ、23日にJR八王子駅で電車に乗り、Sが住む小田急線相武台前駅で男性と一緒に歩いている姿が防犯カメラに映っていた。しかしこの時は男性がSとは特定できなかった。
 女性の兄はTwitterなどで情報提供を呼びかけたところ、別の女性が「相手の男に心当たりがある」と兄に名乗り出た。Twitterで自殺を持ちかける手口などが男と酷似していたからだという。兄から「こんな情報提供をしてくれた女性がいる」と相談を受けた高尾署の捜査員は30日、この女性の協力を得て男をおびき寄せることにした。男は待ち合わせ場所に現れた。その人物がSだった。捜査員が追尾を続けると座間市内のアパートに行き着いた。捜査員は同日午後4時半ごろ、Sに任意の事情聴取を求めた。アパートの室内を捜索すると、クーラーボックスに入った切断遺体を発見。31日、遺体が9人分であることを確認。同日、警視庁捜査1課はSを死体遺棄容疑で逮捕した。
 裁判員裁判でSは検察側の質問には答えるものの、弁護側の質問には回答を拒否。自らは起訴事実を認め早く裁判を終わらせたいのに、弁護側は承諾殺人と責任能力の有無を主張したことに抗議した。2020年12月15日、東京地裁立川支部で求刑通り一審死刑い判決。18日に弁護人は控訴するも、21日にSは控訴を取り下げた。弁護人は異議申し立てを主張しないと話し、2021年1月5日に死刑は確定した。
文 献 小野一光『冷酷 座間9人殺害事件』(幻冬舎,2021/幻冬舎アウトロー文庫,2022)

渋井哲也『ルポ 座間9人殺害事件 被害者はなぜ引き寄せられたのか』(光文社新書,2022)

中森弘樹『「死にたい」とつぶやく 座間9人殺害事件と親密圏の社会学』(慶應義塾大学出版会,2022)
備 考  


【2018年】(平成30年)

日 付事 件
1/20 概 要 <守山母親バラバラ殺害事件>
 2018年3月10日午後1時40分ごろ、滋賀県守山市今浜町の旧野洲川河川敷を歩いていた通行人から動物の死骸があると110番通報があった。守山署員が駆け付け、腐敗で骨が一部むき出しになった胴体を発見。動物の死骸の一部として、市役所に処分を依頼。しかし13日、引き取りに来た職員が人ではないかと疑い、14日に滋賀県警が司法解剖したところ、女性の遺体とわかった。胴体以外は見つからなかった。
 滋賀県警は現場周辺の聞き込みで、遺棄現場から250mほど離れた一軒家に住む無職の女性を見かけていないという情報を入手。5月16日、DNA型鑑定で遺体は女性(58)と結果が出た。県警は6月5日、死体遺棄容疑で、同居する看護師の娘(31)を逮捕した。滋賀地検は27日、死体損壊と死体遺棄で起訴した。
 8月21日、娘の初公判が大津地裁で開かれ、娘は起訴内容を認めるも殺していないと答えた。9月11日、県警は娘を殺人容疑で再逮捕した。
 母親と娘は二人暮らし。父親は仕事の都合で自宅を離れると、母親の娘に対する束縛が強まった。自らの学歴にコンプレックスがあった母親は、国公立大の医学部に入れるため、「囚人のように」(判決文より)勉強をさせた。娘は看護師になりたかったが、学費を稼ぐために高校卒業後に決めた就職先は辞退させられた。娘は9年間、医学部を目指して浪人。その間3回家出したが、母親が手配した探偵や警察に連れ戻された。結局医師をあきらめ、助産師になる約束で2014年に国立大の看護学科に進んだ。娘は2018年1月18日、助産師課程の選抜試験を受けるが失敗。看護師になりたいと懇願すると、「あんたが我を通すから私はまた不幸のどん底にたたき落とされた」となじられ、1月20日、母親を殺害し、遺体を風呂場でのこぎりなどでバラバラにして遺棄した。娘は018年4月から滋賀医大病院で看護師として働いていた。
 2020年2月12日、大津地裁の裁判員裁判の初公判で、娘は殺人罪を否認、死体損壊と遺棄は認めた。弁護側は母親が自殺したと主張し、娘の責任能力について争った。責任能力について、精神鑑定を担当した医師は「犯行当時、判断能力を大きく失う精神障害はなかった」と証言。一方、「中等度の自閉症」と診断し、虐待の影響で発症した可能性を指摘した。3月3日、大津地裁は懲役15年(求刑懲役20年)の判決を言い渡した。
 娘は控訴。11月5日の大阪地裁における控訴審初公判で、娘は母親がうつ伏せで寝ているところを首を包丁で刺して殺害したことを認めた。娘は「心が疲れ、母から解放されたかった」と述べた。2021年1月26日、大阪高裁は一審の裁判員裁判判決を破棄し、懲役10年を言い渡した。裁判長は「裁判員裁判の判決に心を動かされ、反省を深めている」と述べた。
 最高裁は2012年の判決で、裁判員裁判の結論を二審で覆すことに慎重さを求める判断を示しており、刑の軽減は異例。双方とも上告せず、刑は確定した。
文 献 齊藤彩『母という呪縛 娘という牢獄』(講談社,2022)
備 考  
3/2 概 要 <目黒5歳女児虐待死事件>
 夫と離婚していた母親FYは、香川県高松市の同じ水商売の職場で知り合ったFと2015年12月に子連れで再婚。Fはしつけと称してをFYの娘Yを虐待するようになった。2016年12月25日、善通寺市の自宅前で、Yが唇から出血した状態で放置されており、児童相談所は一時保護。Fは書類送検された。2017年2月に一時保護が解除され、Yは自宅に戻るも、3月には児童相談所が2度目の保護。父親は再び傷害容疑で書類送検。しかし2回とも不起訴になっている。7月、一時保護が解除されるも、8月にYの体に痣があるのを病院が見つけ、本人がパパに蹴られたと話したため、市に通報。児童相談所は面接を行うとともに虐待の問題に詳しい専門の病院を紹介した。2017年12月、Fは単身で東京都目黒区に転居。2018年1月、FYとY、FとFYの息子の3人が東京に引っ越し、Fと再び同居。児童相談者は市に確認したうえで東京の児童相談所に資料を送り、引継ぎを行った。しかしこの頃からFの虐待がエスカレートし、十分な食事を与えず、殴るなどしてけがさせた。1月の時点で、同年代の平均体重が20kgに対し、健康診断を受けたYの体重は16.6kgだった。2月、東京の児童相談所や小学校の関係職員が自宅訪問するも、FYに拒否され面会できなかった。
 3月2日、F(33)はY(5)の心臓が止まっていると119番通報。心肺停止の状態で救急搬送され、病院で死亡した。死因は肺炎による敗血症。Yの体には170ヵ所以上の傷やあざがあり、食事をほとんど与えられていなかったため死亡時の体重は12.2kgだった。ノートには「もうおねがい ゆるして ゆるしてください おねがいします」などと綴られていた。3日、警察はFを傷害容疑で逮捕した。6月6日、警察はFとFY(25)を保護責任者遺棄致死容疑で逮捕した。その後、Fは大麻取締法違反の容疑でも逮捕、起訴されている。事件後、二人は離婚した。
 2019年9月17日、東京地裁の裁判員裁判でFYに懲役8年判決(求刑懲役11年)。Fからの心理的DVも考慮した。2020年9月8日、東京高裁で被告側控訴棄却。上告せず確定。
 2019年10月15日、東京地裁の裁判員裁判でFに懲役13年判決(求刑懲役18年)。控訴せず確定。
文 献 「目黒5歳女児虐待死事件」(高木瑞穂、You Tube「日影のこえ」取材班『日影のこえ メディアが伝えない重大事件のもう一つの真実』(鉄人社,2022)所収)
備 考  
5/24 概 要 <「紀州のドン・ファン」殺害事件>
 1941年、和歌山県田辺市生まれのNは地元の中学校を卒業後、多くの商売を手がけ、酒類販売業、不動産業などを営む実業家として地元・和歌山で財をなした。多くの女性と交際しており、2016年2月には50歳近く年下で交際中の自称モデルに、自宅から現金600万円と5,400万円分の貴金属、合計6,000万円相当を盗まれたことで大きな注目を集めた。同年、『紀州のドン・ファン―美女4000人に30億円を貢いだ男』(講談社+α文庫)を出版している(吉田隆がゴーストライターを務めた)。
 2018年2月、NはファッションモデルのS(21)と3度目の結婚。4月には結婚のことも書かれた2冊目の著書も出版した。5月24日午後10時半ごろ、N(77)が自宅2階寝室のソファで倒れているのが見つかり、S(22)が119番。その場で死亡が確認された。解剖の結果、体内から致死量を超える覚醒剤が検出され、死因は急性覚醒剤中毒、死亡推定時刻は同9時ごろと判明した。
 Nの遺体に注射痕など覚醒剤を使用していた痕跡はなく、知人のタレントとの面会予定があったなど自殺をうかがわせる事情もないことから、県警は何者かが口から覚醒剤を摂取させたとみて、容疑者不詳の殺人容疑でNの自宅や会社、東京都内のSの別宅などを捜索。Nが覚醒剤を飲まされたとみられる時間帯に家政婦が外出し、室内にSしかいなかったことなどから、Sの関与を調べていた。
 田辺市によると、Nは少なくとも約13億円に上る全財産を市に寄付する内容の遺言を残していた。遺言書の日付は、死亡の5年前の2013年2月8日。市は2018年9月、和歌山家裁田辺支部から遺言書の存在を伝えられ、2019年10月には支部に相続が承認された。遺産は民法上、妻のSが半分を受け取れるため、市は遺産額が具体的に確定した後、Sと分割のための協議をするとしていた。しかし評価額が確定していない土地や建物、貸金業を営んでいたNに返還されていない債権も含まれるため、額の確定に時間がかかっている。さらにNの兄ら親族4人が2020年4月、市が寄付の前提とする遺言書の無効確認を求め、和歌山地裁に提訴。遺言書はコピー用紙1枚に赤ペンで手書きされ、熟慮の末に作成したとはみられないなどと主張し、係争中となっている。
 和歌山県警は2021年4月28日、東京都品川区に住んでいたSを殺人と覚醒剤取締法違反容疑で逮捕した。
文 献 木下純代『家政婦は見た! 紀州のドン・ファンと妻と7人のパパ活女子』(双葉社,2021)

釣部人裕『紀州のドン・ファンは死んだのか? それとも殺されたのか? 40年来の友人 沖見泰一氏が語る!』(万代宝書房,2021)

吉田隆『紀州のドン・ファン殺害 「真犯人」の正体』(講談社+α文庫,2018)
備 考  
6/9 概 要 <東海道新幹線乗客無差別殺傷事件>
 愛知県岡崎市出身で住所不定、無職K(22)は2018年6月9日午後9時45分ごろ、新横浜-小田原間を走行中の新幹線「のぞみ」で、隣に座っていた女性(27)になた(刃渡り約19.1cm)を振り上げた。女性が脇をすり抜けて逃げ出すと、Kは通路を挟んで左隣に座っていた女性(26)が逃げ出す際に後ろからなたで切り付けた。26歳の女性に全治1年、27歳の女性に全治17日のけがを負わせた。さらに、2列後ろに座っており、Kを制止しようとした兵庫県尼崎市の会社員の男性(38)の首をなたで切り付けて殺害した。非常停止ブザーが押され、のぞみは小田原駅に臨時停車。Kは駆け付けた神奈川県警小田原署員に現行犯逮捕された。6月29日、女性2人への殺人未遂容疑で再逮捕された。
 Kは刑務所内に入ろうとしての犯行であったが、3人殺すと死刑になるので2人までにしようと思っていたと裁判で語っている。
 2019年12月18日、横浜地裁小田原支部の裁判員裁判で、求刑通り一審無期懲役判決。控訴せず確定。
文 献 インベカヲリ★『家族不適応殺 新幹線無差別殺傷犯、小島一朗の実像』(KADOKAWA,2021)
備 考  


【2019年】(令和元年)

日 付事 件
1/22 概 要 <三島バイク交通死亡事故>
 2019年1月22日午後6時ごろ、静岡県三島市の市道交差点で、信号無視をした沼津市に住む会社員女性(46)の乗用車と、青信号に従い直進してきたミニバイクが衝突。仕事から帰宅中で、ミニバイクを運転していた会社員の男性(50)が死亡した。運転していた女性は当初、自分は青信号で相手が右折してきたと偽証。県警も同様に発表し、メディアもそう報じた。自動車保険でも男性の過失が7割以上と判断された。しかし同じ時刻に同じルートを通ってきたはずの男性が、その時に限って交差点に直進ではなく右折したというのはおかしいと思った娘(26)は、チラシ配布やSNSを通じて目撃情報を収集。娘のSNSには非難や中傷、揶揄する投稿が書き込みされたが、「車が赤だった」という証言が得られたことにより、三島署は1月31日、女性を自動車運転死傷行為処罰法違反(過失運転致死)容疑で逮捕した。
 被害者の家族には女性逮捕後も中傷が続いた。
 2020年5月28日、静岡地裁沼津支部での初公判で、女性は自分が青信号だったと無罪を主張。弁護側も車のカーナビに残る走行記録の分析を求めた。信号機の時間のデータとカーナビの分析結果から女性が赤信号を無視した可能性が高いと判明。10月22日の第2回公判で女性は起訴事実を認め、遺族に謝罪した。遺族は実刑判決を求めていたが、2021年3月15日、裁判長は禁固3年執行猶予5年(求刑禁固3年)の有罪判決を言い渡した。被告は真摯に反省をしているとは言えないと指摘するも、2土と運転しないと誓っていることや単純化室の交通死亡事故の判例から、実刑が相当とまでは言えないとした。双方が控訴せず、判決は確定した。
 判決から8日の3月23日、静岡県警本部交通部の理事官、交通課長、交通事故係長の3氏が初動捜査のミスを認め、遺族に謝罪した。
 家族は女性らに計約7,300万円の損害賠償を求め提訴。2022年4月20日、静岡地裁沼津支部で開かれた第1回口頭弁論で、被告側は賠償金額などを争う姿勢を示した。
文 献 「三島バイク交通死亡事故」(高木瑞穂、You Tube「日影のこえ」取材班『日影のこえ メディアが伝えない重大事件のもう一つの真実』(鉄人社,2022)所収)
備 考  
2/25 概 要 <渋谷・児童養護施設長殺人事件>
 2019年2月25日午後1時45分ごろ、東京都渋谷区の児童養護施設に元入所者で住所・職業不詳の男性(22)が玄関から侵入。玄関近くの施設長室で、施設長の男性(46)を包丁で10か所以上も刺して殺害した。5分後、女性職員が刺された施設長を発見し、110番通報。男性職員2人は、男性が施設長室から出ないよう、椅子をもって構えていた。駆け付けた警官が、施設長室にいた男性を殺人未遂容疑で現行犯逮捕した。2~3階には入所する6~18歳の子供約30人の部屋があるが、男性は立ち入っておらず、子供にけがはなかった。男性は、「殺すつもりで刺した。施設に対して恨みがあり、関係者なら誰でもよかった」と警察に話した。
 犯人の男性は、母親が養育困難になったとの理由で2012年3月ごろに児童養護施設に入所。東京都東村山市の高校に通った。2015年3月、高校を卒業する18歳で退所。施設側が紹介し、保証人にもなっていた東京都東村山市内のアパートで生活。卒業後に就職したが、1カ月半ほどで退職した。男性は2018年9月中旬、1カ月分の家賃を滞納して大家とトラブルになった。大家からの連絡を受けて施設職員がアパートを訪ねたところ、壁に複数の穴が開き、男が錯乱した様子だったため、危険を感じた職員が110番通報。東村山署員が一時、男を保護した。その後、部屋を退去したが、このときも施設職員が直接会うなどして相談に乗っていた。男性はJR大宮駅近くのネットカフェなどで寝泊まりし、事件の2、3週間前には凶器の刃物を購入。逮捕時の所持金は数百円だった。
 男性は殺人容疑で送検された。東京地検は鑑定留置で男性の当時の精神状態を調べた結果、刑事責任を問えないと判断、2019年5月17日に不起訴処分とした。地検は同日、心神喪失者等医療観察法に基づく審判を東京地裁に申し立てた。男性の治療の処遇を決める審判は2019年7月に1度だけ開かれた。8月、男性は入院治療となった。
 遺族は検審に審査を申し立てた。東京第六検察審査会は10月9日付で「不起訴不当」と議決。検審は議決で「男性が心神喪失中に殺人を犯した蓋然性が高いとした検討は不十分だ」と指摘。「検察官の判断には納得できないため、再度の検討を求める」とした。
 東京地検は2020年4月7日、殺人容疑で検察審査会の「不起訴不当」の議決を受けた男性を再び不起訴処分とした。
 犯人の男性は、治療の標準とされる1年半の入院期間を過ぎた2024年3月時点でまだ入院中である。
文 献 大藪謙介、間野まりえ『児童養護施設施設長殺害事件 児童福祉制度の狭間に落ちた「子ども」たちの悲鳴』(中公新書クラレ,2021)
備 考  施設長は長年児童福祉の専門誌の編集委員を務め、2015年、児童養護施設を巣立った子供の葛藤を詩やエッセーなどにまとめた共著「子どもの未来をあきらめない 施設で育った子どもの自立支援」を出版。現場の第一線に立つ支援者として、子供たちの現状を伝えていた。
 刑事事件の被告は、心神喪失と判断されると罪を問われず、治療を受ける。さらに治療後の社会復帰促進まで検討することが「心神喪失者等医療観察法」で定められている。
 施設長の妻は2021年6月、「医療観察法と被害者の会」を発足させた。活動では、現状を知ってもらうシンポジウムや、法務省などへ要望書を提出。審判での意見陳述や弁護士の傍聴、情報開示の拡大などを求めている。
5/28 概 要 <川崎20人殺傷事件>
 2019年5月28日午前7時40分ごろ、神奈川県川崎市の登戸駅近くの私立小学校スクールバスの停留所付近で、バスを待っていた児童らをI(51)が包丁で襲い、保護者の男性(39)と小学六年生の女児(11)を殺害。保護者の女性(45)と女児16人、男児1人に重軽傷を負わせた。Iは現場で首を切って自殺した。
 Iは家庭の事情で4,5歳のころに両親が離婚し、祖父母・伯父夫婦宅に引き取られた。中学卒業後は職業訓練校に進み、卒業後に就職。しかし雀荘に入り浸るようになり、そのまま従業員として働き始めた。その後は不明だが、祖父母が亡くなり、伯父夫婦宅で長期間引きこもっていた。
 9月2日、神奈川県警は殺人と殺人未遂、銃刀法違反の容疑で、Iを被疑者死亡のまま書類送検した。Iが小学校を計画的に狙った可能性が高いものの、動機などが明らかにならないまま、事件は終結した。
文 献 磯部涼『令和元年のテロリズム』(新潮社,2021)
備 考  
5/31 概 要 <岩手妊婦死体遺棄事件>
 岩手県一関市の会社員Cは2019年5月31日朝、医療事務員の妻(36)と口論になり、延長コードで首を絞め殺害。遺体をクローゼットの中に隠し、周囲には家出をしたと偽った。妻は妊娠していた。Cは6月4日、一関署に捜索願を提出。財布や携帯電話を所持して家を出たと申告した。Cは7月2日午前1時すぎ、遺体を車で奥州市前沢生母の音羽山中に運び、遺棄した。12月ごろ、Cは長男と一緒に平泉町の実家に帰った。
 Cは結婚後にてんかんを発症し、妻から「恥をかかせられている」などと責められ、精神的に追い詰められていた。
 2020年4月29日、山を散策中の男性が白骨化した遺体を発見し、110番通報。6月25日、DNA鑑定で遺体を妻と特定した。県警は、徒歩で行くには困難で妻に自殺の動機が見当たらないことなどから死体遺棄事件と断定。翌26日に一関署に捜査本部を設置し捜査を進めた。
 捜査本部は10月12日からC(37)に任意同行を求めて一関署で事情を聴き、14日に遺棄を認めたため逮捕。後に殺人容疑で再逮捕した。
 2021年6月1日、盛岡地裁の裁判員裁判で一審懲役14年判決(求刑18年)。強固な殺意に基づく残酷な犯行と断罪するも、妻から責められて精神的に追い詰められていたことや犯行を自白、妻の遺族に慰謝料の支払いを申し出ていることで更生の可能性が認められると判断された。控訴せず、確定。
文 献 阿部恭子『家族が誰かを殺しても』(イースト・プレス,2022)
備 考  
6/1 概 要 <元農林水産省事務次官長男殺害事件>
 2019年6月1日午後3時15分ごろ、元農林水産省事務次官K(76)は東京都練馬区の自宅で、長男(44)の首などを何度も突き刺し、殺害した。3時30分ごろ、自ら110番通報し、駆け付けた練馬署員に逮捕された。
 長男は中学時代に激しいいじめに遭う一方、中学2年のころから家庭内暴力を振るい始めた。長男は大学進学を機に家を出たが、この前後で総合失調症と診断された。卒業後は仕事が長続きせずにひきこもるようになる。アニメ関係の仕事に就きたいという希望に沿い、アニメ学校に通わせたり、大学院に進学させるなど色々と手を尽くす。しかしゲームやアニメ関係の就職に失敗し、後に病院関連施設に就職するも退職。2008年ごろからは無職だった。2014年には、兄の存在で縁談が全部消えたと絶望し、妹が自殺している。2015年には診断結果がアスペルガー症候群に変わった。また妻もうつ病を患った。2016年ごろ、母親の所有する一軒家に移り、一人暮らしをしてゲームばかりしていた。
 2019年5月25日、長男の要望により実家に暮らし始めるようになる。しかし長男の暴力は止まらなかった。事件当時、長男は隣の小学校で行われていた運動会の音に腹を立て、「うるせえな、ぶっ殺すぞ」などと文句をつけた。Kは5月28日に起きた「川崎20人殺傷事件」の事が頭に浮かび(ただし、公判ではこれについては否定)、本当に殺されると思ったので包丁を取りに行き、長男の胸を刺したものだった。長男には36か所の刺し傷があった。
 公判でKは起訴事実を認めた。検察側はメモなどが残されていたことから計画的な犯行であると主張。弁護側は執行猶予を求めたが、2019年12月16日、東京地裁は懲役6年(求刑懲役8年)の実刑判決を言い渡した。12月20日、Kは保釈された。25日、Kは事実誤認があるとして控訴。2020年10月20日、東京高裁における控訴審初公判で、正当防衛による無罪を主張した。2021年2月2日、東京高裁は被告側控訴を棄却した。Kは収監された。上告せず、確定。
文 献 磯部涼『令和元年のテロリズム』(新潮社,2021)
備 考  
7/26 概 要 <京都アニメーション放火殺人事件>
 2019年7月18日午前10時半ごろ、京都市伏見区の映像製作会社「京都アニメーション」第1スタジオに、さいたま市の無職A(41)が侵入。1階にガソリンをまいて火をつけた。鉄骨コンクリート造3階建ての建物が爆発音とともに炎上。スタジオの延べ約690平方メートルが全焼した。当時建物内には70人が働いていた。20代の男性5人と女性12人、30代の男性6人と女性5人、40代の男性2人と女性5人、60代の男性1人の計36名が死亡。20代の男性4人と女性10人、30代の男性7人と女性4人、40代の男性2人と女性4人、50代の男性2人の計33名が重軽傷を負った。1名は無事だった。
 Aは全身にやけどを負いながら逃走するも、京都府警の警察官に取り押さえられた。意識不明の重体となり、市内の病院に搬送。その後、大阪の病院に転院した。2020年現在も入院中。Aと京都アニメーションに関係はなく、動機は不明。2020年5月27日、京都府警はAを殺人他の容疑で逮捕した。Aは入院先から寝たきりのまま搬送され、医務部のある大阪拘置所で勾留、6月9日より鑑定留置された。12月11日、鑑定留置が終了。16日、京都地検はAを起訴した。
 2024年1月25日、京都地裁で求刑通り一審死刑判決。被告の弁護人は控訴した。
文 献 磯部涼『令和元年のテロリズム』(新潮社,2021)

津堅信之『京アニ事件』(平凡社新書,2020)

日野百草『ルポ京アニを燃やした男』(第三書館,2019)

「京都アニメーション放火殺人事件」(高木瑞穂、You Tube「日影のこえ」取材班『日影のこえ メディアが伝えない重大事件のもう一つの真実』(鉄人社,2022)所収)
備 考  
10/20 概 要 <太宰府主婦暴行死事件>
 2019年10月20日午前6時15分ごろ、福岡県太宰府市のインターネット影駐車場から、乗用車内の女性の意識がないと119番通報があった。発見されたのは、市内に住む主婦(36)。約1時間後、搬送先の病院で死亡が確認された。死体に暴行の跡があった。福岡県警は同乗していた無職女性Y(40)、無職男性K(24)、バー経営者男性(35)を死体遺棄容疑で逮捕した。28日には筑後市の元暴力団組員で運送会社員の男性T(46)を同容疑で逮捕した。なお、バー経営者男性は後に事件とは無関係であることがわかり、不起訴となっている。
 Yは取り巻きを連れて中洲の歓楽街で飲み歩き、豪快に金を使うことから、界隈で“女帝”と言われれていた。Kは2015年ごろからYと交際関係にあったがヒモ状態であった。その遊ぶ金は、大勢を脅迫して得たものであった。裁判では主婦やその夫ら複数人に対し、未遂も含めて500万円近くが被害額として認定されているが、総額は不明である。
 Yと主婦は2008年ごろに知り合った。Yは主婦の実兄を恐喝しており、主婦は肩代わりと称して払わされていた。2019年2~3月ごろからYは主婦を無理矢理ホストクラブに連れていくようになり、料金はすべて主婦が立て替え、借金をしていた。主婦は母親や妹から借金をするようになり、関係が悪化したため、主婦の家族(夫、子供2人)を離れた場所へ引っ越しさせ、さらに8月下旬には主婦だけを太宰府市のYとKが住む家に住まわせて監視した。YとKは主婦に暴行を加えるようになったが、マインドコントロールされていた主婦は逃げられなかった。そしてYとKは9月下旬~10月20日ごろ、主婦を殴る蹴る、煙草の火を押し付ける、ナイフや割り箸などで刺すなど日常的に暴行し、20日午前4時50分ごろまでにショック死させた。Kは主婦を車に乗せ、男性が経営するバーにいたYを迎えに行く途中で気付き、車に乗せYと男性を乗せ、YとKは相談。さらにTにも電話で死体を埋めるなどの相談をしていた。バー経営者の男性は自分が殺されるかもしれないとYらの指示に従いながらも、車中のやり取りをすべて録音していた。
 傷害致死、監禁、恐喝、死体遺棄などでYとKは起訴された。Yは他の女性からの恐喝でも起訴された。Tは恐喝未遂と死体遺棄で起訴された。
 2021年1月21日、福岡地裁はTに対し、死体遺棄について無罪を言い渡し、主婦の夫から現金305万円を脅し取ろうとした恐喝未遂で懲役2年執行猶予4年(求刑懲役2年6月)を言い渡した。6月25日、福岡高裁で検察側控訴棄却。上告せず確定。
 YとKは裁判で互いに罪を擦り付け合い無罪を主張したが、2021年3月10日、福岡地裁は共同正犯を認め、Yに懲役22年(求刑懲役23年)、Kに懲役15年(求刑懲役16年)判決。ただし死体遺棄については、犯行行為を隠すための時間稼ぎに過ぎないとして無罪とした。12月3日、福岡高裁で検察・被告側控訴棄却。上告せず確定。
 主婦の親族は2019年6月~9月、佐賀県警鳥栖警察署に脅迫電話の録音データを持ち込むなどして合わせて11回相談していたが、鳥栖警察署は捜査に乗り出そうとしなかった。2020年10月、佐賀県警は「適切に対応した」とする内部調査結果を公表。2020年12月10日の佐賀県議会総務常任委員会では佐賀県警のトップである杉内由美子本部長が出席するも、まともな答弁は行わなかった。相談簿の「解決」にチェックされていたことについて、佐賀県警の井手栄治刑事部長、福地雅彦刑事企画課長は「慎重に事実を確認した結果に基づいて発表した」とどんな質問に対しても同じ答弁を繰り返し、本部長も含め再調査を否定した。遺族は2021年1月、第三者を入れた再調査を県公安委に要望し、同2月1日付で意見書も送付した。これに対し、県公安委は同2月25日付の回答文書で県警の「第三者的管理機関」としての回答だと前置きし「県警が被害者の女性に危険が及ぶと認識することは難しかった」などと県警の見解を追認した。しかし県公安委は発言録などを何も残していなかった。
 Yは2022年8月、服役中に新型コロナウイルスに感染して死亡した。43歳没。
文 献 塩塚陽介『すくえた命 太宰府主婦暴行死事件』(幻冬舎,2023)
備 考  本事件を扱ったテレビ西日本の報道特別番組「すくえた命~太宰府主婦暴行死事件~」は、2021年日本民間放送連盟賞番組部門・テレビ報道最優秀賞を受賞している。




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