朝倉喬司『19歳の連続射殺魔 永山則夫事件と60年代』(文庫ぎんが堂)


発行:2012.10.11



 1968年、高度経済成長期最中の日本で、19歳の永山則夫による連続ピストル射殺事件という、それまで類を見なかった少年犯罪が起きた。逃亡しながら東京、京都、函館、名古屋で起こした事件のすべてが行き当たりばったりの犯行だった。死刑執行まで獄中で創作活動を続けた永山は、犯行当時何を思い、何から逃げていたのか。事件の足跡を丹念にたどり、急速度で都市化が進んでいった60年代の日本を背景に、ひとりの少年が抱えた闇に迫る。(粗筋紹介より引用)
 2003年、『涙の射殺魔・永山則夫と六十年代』(共同通信社)を加筆訂正し、2007年2月に新風舎文庫より発売した作品を改題し、2012年10月に刊行。

【目次】
 I 事件
 II 逮捕
 III 逃走
 IV 射殺
 V 呪縛

 事件物を取り扱う第一人者である朝倉喬司が永山則夫の事件を取り扱った作品。
 正直言って、永山則夫については過去に山ほど出版されている。色々なところで語られている。語り尽くされているとまでは言わないが、それに近いものがあるだろう。解説の鈴木義昭は、「いくつもの少年犯罪、例えば近年では神戸の少年A「酒鬼薔薇聖斗」や「連続幼女誘拐殺人」のM青年を取材して歩いて来た朝倉喬司にとって、永山則夫についてあらためて書くということは、時代の中の少年を、その有様を問い直す工程ではなかったろうか」と書いている。しかし、1960年代と言えばすでに50年以上前の話である。言ってしまえば、昔の話であり、それは歴史として語られるものであるかもしれないが、現代に通じるものがあるかと言えばかなり疑問である。「永山基準」は今でも生き残っているものの、永山の作品のほとんどは絶版状態であり、永山が信じ切っていた「革命」は全く起こらず、時は過ぎ去ったのである。

 歴史的意義はあるだろうし、面白い人には面白いのだろうけれど、今まで辿ってきた道をなぞっている感は否めなかった。永山関連の著書を全く読まなかった人にとっては、読みやすい一冊になるだろう。

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