死刑確定囚(2018年)



※2018年に確定した、もしくは最高裁判決があった死刑確定囚を載せている。
※一審、控訴審、上告審の日付は、いずれも判決日である。
※事実誤認等がある場合、ご指摘していただけると幸いである。
※事件概要では、死刑確定囚を「被告」表記、その他の人名は出さないことにした(一部共犯を除く)。
※事件当時年齢は、一部推定である。
※没年齢は、新聞に掲載されたものから引用している。

氏 名
林振華
事件当時年齢
 29歳(2012年12月、逮捕時)
犯行日時
 2009年5月1日
罪 状
 強盗殺人、強盗殺人未遂、窃盗
事件名
 愛知県蟹江町母子殺傷事件
事件概要
 中国籍の無職林振華(りん・しんか/リン・ジェンホア)被告は2009年5月1日午後10時ごろ、愛知県蟹江町に住む会社員の女性(当時57)方に侵入し、金品を物色中、女性に見つかったため、用意したモンキーレンチで頭部を殴って殺害した。さらに帰宅した会社員の次男(当時26)も包丁で刺殺、翌日午前2時半ごろに帰宅した会社員の三男(当時25)の首などを小刀で刺してけがをさせ、現金約20万円を奪った。三男はコードで手を縛られ、長時間にわたって監禁状態に置かれた。三男は「殺さないで」と林被告に請うたため、林被告は殺せなかった。
 林被告は中国山東省出身で、2003年10月に20歳で来日した。京都市の日本語学校を2005年3月に卒業後、奈良市の専門学校に入校。しかし生活は困窮し、万引きなどを繰り返していた。2006年に三重大学人文学部へ入学。三重県の私費留学生奨学金を申請したが成績不良などを理由に認められず、生活は苦しいまま。両親から仕送りを受けつつ、大学近くの飲食店屋工員、建設作業員などでアルバイトをして生活していたが、体を壊して働けなくなった。
 事件の前、津市のスーパーでの2件の万引きで摘発され、罰金命令を受ける予定だった。支払えなければ身柄を拘束され、退学を迫られると思い込み、路上強盗を考えた。事件当日、林被告は住んでいた津市から電車で名古屋市内を移動しながら犯行の機会を狙ったが、周囲に人が多いことなどから断念。林被告はその後、近鉄名古屋線で再び三重県方面に向かい、下車したのが急行電車で最初に停車する近鉄蟹江駅だった。女性宅では猫を飼っており、外にいる猫が帰ってくるために施錠をしていなかった。猫が帰るところを見た林被告は、女性宅に侵入した。女性たちとは面識はなかった。
 林被告は3人を殺傷後、現場に居座って凶器の血痕を拭ったり、血の付いた服を洗うなどしていたが終電車が無くなったためそのまま居座り、台所に残された食事を食べていた。2日正午ごろ、次男の上司が訪問するも応答がなかった。不審に思った上司は近くの交番に届け、12時20分ごろ、上司と県警蟹江署員が女性宅を訪れ屋外から声を掛けた。両手を電気コードで縛られた状態の三男は既に犯人は逃げたものと思い、自力で立ち上がって玄関を開け、保護された。その後、署員が玄関ドアのすき間から屋内をのぞくと、林被告が玄関近くの廊下にうずくまっていたが、被害者の家族と誤解し、署員が携帯無線で署と連絡を取るために目を離した約2分間に、勝手口から逃走した。
 事件後、捜査本部は女性を「行方不明」と発表したが、事件翌日に大量の衣服で隠された押し入れから発見するなど、捜査陣の不手際が目立った。しかも犯人の逃走を公表したのは一部報道があった後の5月8日と、その対応の遅れに非難が集中した。
 林被告は事件後も複数回、中国に帰省したが、親の期待に応えるため、日本に戻って来た。2011年に三重大学を卒業し、三重県内の自動車部品製造会社に就職するも、翌年6月に退職していた。
 2012年10月19日、津市の駐車場で乗用車1台などを盗んだ容疑で、三重県警が林被告を逮捕。三重県警は「余罪が疑われる容疑者」(捜査幹部)として警察庁のデータベースにDNAを登録。11月末、膨大なデータの中から事件で残された遺留物のDNAと一致したため、12月7日、愛知県警が強盗殺人及び強盗殺人未遂容疑で逮捕した。翌日、起訴した。
 林被告は起訴後に精神的に不安定になり、意思の疎通が難しくなったことから弁護側の請求を受けた地裁が鑑定の実施を決めた。責任能力や訴訟能力に問題はないとする鑑定書が2014年1月に名古屋地裁に提出された。
一 審
 2015年2月20日 名古屋地裁 松田俊哉裁判長 死刑判決
 判決文「裁判所ウェブサイト」内のPDFファイルが開きます。リンク先をクリックする前に、注意事項をご覧下さい)
控訴審
 2015年10月14日 名古屋高裁 石山容示裁判長 被告側控訴棄却 死刑判決支持
上告審
 2018年9月6日 最高裁第一小法廷 木沢克之裁判長 上告棄却 死刑確定
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拘置先
 名古屋拘置所
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2015年1月19日の初公判で、被告は大筋で認めた。検察官の起訴状朗読後、林被告が黙り込んだため、弁護人が改めて一文ずつ読み上げて内容を確認し、林被告は「した」「あってる」などと答えた。
 検察側は冒頭陳述で、林被告が万引きをして罰金を支払う必要があったと指摘。「払わなければ大学を退学になり、両親の期待に応えられないと考え、人を襲って金を奪おうとした」。そして林被告が金目的で深夜まで周辺を徘徊し、無施錠の住宅に入ったと指摘し、「金品を取る以外に殺す理由はなかった」と主張。殺傷後は翌朝まで住宅にとどまったとも述べた。
 弁護側は、盗み目的で侵入した林被告が帰ってきた女性らに見つかってパニックになったと主張。「検察側の死刑求刑は確実だが、被告に強い殺意はなく、死刑を言い渡す事情はない」と述べ、殺人罪と窃盗罪の適用を求め、強盗殺人罪の成立については争う姿勢を示した。
 21日の公判で三男が証人出廷し、「死刑を望む。なぜ自分の家だったのか、なぜ殺害までしたのか聞きたい」と訴えた。
 23日の公判で次男の恋人が法廷と別室を中継するビデオリンク方式で証言し、「ずっと悲しい思いを抱えていなければならない私たちと同じように、ずっと自分の罪を反省し、償ってほしい」と語った。林被告は閉廷前、死亡した2人らに対する謝罪の言葉を初めて述べた。
 26日の公判で林被告の両親が中国・山東省から来日して証人として出廷し、遺族に謝罪した。代理人を通じ、謝罪と被害弁償の一部として現金500万円の支払いを申し出ていたが、遺族側に拒否されたことを明らかにした。
 28日の公判で、林被告が遺族や自分の両親への思いを記した手紙を、発声障害のある林被告の代わりに弁護人が代読した。2013年春に名古屋拘置所で林被告が知人や両親らに宛てて事件への公海や謝罪の言葉を便箋66枚にしたためたものだが、当館はされず弁護人が保管していた。
 2月6日の論告で検察側は、万引き事件で罰金を支払う必要に迫られた林被告が、面識のない女性方に侵入したと指摘。「人がいると分かっている住宅に凶器を持参して侵入したのは、攻撃も想定していたからだ。仮に殺害時点で頭が真っ白になっていたとしても、金品を取る目的だったのは明らか。典型的な強盗殺人と言える」と主張した。そして被告が女性をモンキーレンチで繰り返し殴ったうえで首を絞め、次男も包丁が曲がるほどの力で4回刺したなどとし、「強い殺意に基づく執拗で残虐な犯行だ」と主張。首を6か所刺された三男も「一歩間違えば命の危険があった」とした。そして「金品を奪うだけのために2人を殺害し、生命を奪いかねない傷害を1人に負わせた。殺され方は理不尽で残虐的」とも指摘。「3回にわたる殺害行為は強盗殺人の中でも特に悪質で、遺族も死刑を望んでいる」と述べ、極刑が相当と訴えた。
 被害者参加制度を利用して法廷に立った三男は「母と兄の気持ちを考えると、どうしても許すことはできない。死刑を強く望む」と意見陳述した。長男も意見陳述し、裁判員に対し、「裁判が加害者のためでなく、被害者のためのものであることを祈ります」と述べた。
 同日の最終弁論で弁護側は、女性方玄関が無施錠だったことに気付いた林被告が金品を盗もうとして侵入したが、女性らに見つかりパニックになったと主張。逃げようとして殺傷したが、「被告は3人を攻撃して1時間以上たって、窃盗に着手しており、強盗にはあたらない」と反論。「3人を殺傷したのはパニックで冷静な判断ができなかったため。確定的殺意はなかった」と訴え、殺人罪と窃盗罪の適用を求めた。また、反省し謝罪していること、両親が被害の一部の弁償を申し出ていることなども指摘、「可能な限り寛大な刑を」と述べ、死刑回避を訴えた。
 林被告は意見陳述で「被害者に申し訳ない気持ちでいっぱい。自分のやったことが許せない」と謝罪した。
 判決で松田裁判長は、争点の強盗殺人罪の成否について被告が女性方に侵入して女性と出くわした際、逃げようと思えば逃げられたのに女性を攻撃したとして、「当初は窃盗目的だったが、被害者に見つかった際に強盗を決意した」と指摘。その後も被告が三男を襲った後、金がどこにあるかを尋ねたことなどから、強盗の意図を引き続き持っていたとして、強盗殺人罪の成立を認めた。殺意についても、女性の頭部をモンキーレンチで何度も殴るなど、3人を執拗に攻撃しているとし、「冷静さを失っていたとしても確定的な殺意があった」と認定。「強盗や殺人に及ぶことを事前に計画していたわけではないが、包丁が折れ曲がるほど強い力で刺すなど執拗で冷酷な犯行。動機は自己中心的で身勝手だ。公判で不合理な弁解を繰り返し、反省も真摯なものとは認めがたい」と述べ、死刑が相当と結論付けた。

 2015年7月27日の控訴審初公判で弁護側は、「被害者方に侵入したのは窃盗目的だった」として強盗殺人罪の成立を否定し、控訴趣意書で「検察官の一方的な見解の押し付けや誘導で調書が作られた」と主張した。この点を本人に確認するため、弁護側は被告人質問を求めたが、石山裁判長は「取り調べるやむを得ない理由はなく、必要ない」として却下した。弁護側は「窃盗目的で侵入した際に気付かれ、半ばパニックになって殺害した。計画性はなく、無期懲役を選択すべきだ」と死刑回避を訴えた。検察側は控訴棄却を求め、即日結審した。
 判決理由で石山裁判長は「被告は被害者宅に侵入した際、家人と遭遇して騒がれることを予想しており、実際に被害者に見つかったことで、確定的な強盗の犯意が生じた」と、強盗殺人罪の成立を認定した。被害者らが抵抗しなくなっても、持参した工具で繰り返し暴行しており「犯行の態様は執拗で無慈悲」と断じ、「死刑は避けられないとする一審判決の根拠は合理的で不当とは言えない」と述べた。

 被告側は即日上告した。
 2018年7月12日の上告審弁論で「当時、被告は意思疎通が不十分な状態で、訴訟能力があるのか極めて疑わしい。強盗の計画性は無かった」として、死刑を回避するよう訴えた。一方、検察側は「非常に重い犯罪で、死刑をもって臨むべき」として上告を退けるよう求めた。
 判決で木沢裁判長は、「殺害を思いとどまる機会があったのに、その都度凶器を手にして犯行に及んだ。強固な殺意に基づく無慈悲で残酷な犯行で、刑事責任は極めて重大だ」と被告側の主張を退けた。そして以前起こした窃盗事件の罰金に充てる資金を得るため犯行に及んだとして「身勝手な動機に酌量の余地はない」と述べた。
備 考
 女性の三男は、重大事件の刑事裁判の判決後、賠償額などを審理する「損害賠償命令制度」に基づき、林振華被告に損害賠償を求めた。遺族3人が賠償を申し立て、民事訴訟に移行。その後、2015年10月に2人は請求を取り下げた。2016年3月24日、名古屋地裁は三男の請求を全額認め、林被告に慰謝料など約5600万円の支払いを命じた。死亡した女性と次男が被った損害を計約1億3600万円と算定し、三男の相続分として計約4550万円を認めた。さらに、三男は事件で負傷したとして、慰謝料など約1050万円の支払いも命じた。判決理由で村野裕二裁判長は「極めて悪質、重大な事件で、動機も身勝手で同情の余地はない」と指摘した。三男の代理人弁護士は「請求を認容する判決をいただいたが、実際に被告から履行される可能性がないに等しいことを考えると、誠に遺憾でならない」とのコメントを出した。
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氏 名
渡邉剛
事件当時年齢
 43歳
犯行日時
 2012年12月7日
罪 状
 強盗殺人、死体遺棄、詐欺未遂
事件名
 銀座資産家夫婦強盗殺人事件
事件概要
 水産物流通会社社長、渡邉剛(つよし)被告は2012年12月7日、スイス在住で銀座に一時帰国していた資産家でファンドマネジャーの男性(当時51)とその妻(当時48)を栃木県日光市でパーティーがあると嘘を言って誘い出し、ワゴン車中で睡眠薬入りの酒を飲ませて眠らせた後、2人の首をロープで絞めて殺害。クレジットカード入りの財布など計8点(29万円相当)を奪った後、2人を埼玉県久喜市内の空き地に埋めて遺棄した。さらに元部下の男とともに男性名義のクレジットカードで新幹線の回数券50冊(約381万円分)を購入しようとしたが、確認を求められて失敗に終わった。
 殺害された男性は元証券マンで、約20年前に退社後は国内外でファンドマネージャーとして働き、スイスの自宅のほか、都内や海外に複数のマンションを保有していた。失踪時点ではリヒテンシュタインに本社がある投資ファンドのマネジャー。2012年11月下旬にいったん帰国。12月7日に知人からたと東京都中央区銀座のマンションを出た後、連絡が取れなくなった。パーティーは開かれていなかった。夫婦は12月14日からスイスに行く予定だったが、航空券は自宅に残したままで、心配した親族が警視庁に捜索願を出した。
 渡辺被告は1990年代後半に東京都江東区の水産加工物販売会社で働くようになり、2001年に社長に就任。会社は鯨肉の販売が中心だったが、2007年ごろは海外に進出し、オマーンの複数の大手水産会社から魚介類を輸入するようになった。しかし鯨肉市場の縮小とともに売り上げが落ち、2008年後半から2009年春ごろにかけて急速に悪化。夏ごろからは営業停止状態に陥っていた。渡辺被告は2011夏から宮古島の知人女性宅に身を寄せていた。渡辺被告と殺害された男性は1年ほど前からの付き合いで、渡辺被告は東京と沖縄を往復していたという。なお、逮捕当時は投資で数億円の損をさせられたと供述していたが、それは虚偽だった。なお詐欺事件で共謀した男性は1998年に同社に入社した部下だった。
 死体が埋められた住宅地の中にある空き地やワゴン車は、9月ごろに埼玉県の知人へ現金約300万円を渡して購入を指示。11月10日に契約が完了後、男数人が出入りし、高さ約2mの銀色のフェンスで取り囲み、重機で穴を掘って立ち去っていた。この埼玉県の知人男性は、事件とは無関係である。
 捜査一課は夫婦を乗せたワゴン車を割り出し、2013年1月28日、久喜市の空き地で2人の遺体を発見。敷地内にあった車から男性の血痕を見つけた。1月29日、元部下の男が死体遺棄容疑で、逃亡先の沖縄県宮古島市で逮捕された。渡辺剛被告は元部下の逮捕を知り、同日午後4時ごろ、宮古島市でトイレ用洗剤を飲んで自殺を図ったが宮古島署員に発見された。命に別状はなく、体調の回復を待って30日に死体遺棄容疑で逮捕された。2月20日、詐欺未遂容疑で2人を再逮捕。3月14日、東京地検は詐欺未遂容疑で2人を起訴。5月3日、強盗殺人容疑で渡辺被告は再逮捕された。元部下は殺人事件に関与した証拠はないと逮捕は見送られた。5月24日、東京地検は渡辺被告を強盗殺人と死体遺棄容疑で起訴。同日、処分保留となっていた元部下の死体遺棄容疑について不起訴処分(容疑不十分)とした。
一 審
 2014年9月19日 東京地裁 田辺三保子裁判長 死刑判決
控訴審
 2016年3月16日 東京高裁 藤井敏明裁判長 被告側控訴棄却 死刑判決支持
上告審
 2018年12月21日 最高裁第二小法廷 鬼丸かおる裁判長 上告棄却 死刑確定
拘置先
 東京拘置所
裁判焦点
 裁判員裁判。渡辺剛被告は逮捕から起訴まで1人で事件をやったと供述していた。
 2014年8月19日の初公判で、渡辺剛被告は「現場にいたが2人の首を絞めていない。殺意はなく、金品を取る目的もなかった」と述べ、強盗殺人を否認した。死体遺棄罪と詐欺未遂罪は認めた。
 検察側は冒頭陳述で、渡辺被告は被害者の勧めで購入した株で約180万円の損失があり、被害者を恨んでいたと指摘。遺体を埋める穴を掘るなど準備をした上で「ホテルをオープンするので招待する」と夫婦を誘い出し、睡眠薬を混ぜたシャンパンを飲ませたうえで、殺害したと述べた。弁護側は被告が株取引に関して被害者に説明を求めようとして犯行の一部に関与したことは認めたが、「他の人と被害者の首にロープを巻いて脅すつもりだった。被告に殺意や金品を奪う目的もなく、強盗殺人罪は成立しない」と、実行行為は第三者によるもので、被告は傷害致死罪にとどまると主張した。その第三者について、被告が投資資金を借りていた知人の関係者だと説明したが、「詳細は明らかにできない」とした。
 9月1日の公判で渡辺被告は「極刑を望んでいる」と述べ、被害者遺族に対し土下座して謝罪した。しかし検察側が「(被告の主張する)傷害致死罪では(法定刑に)死刑がない」と指摘すると、被告は黙り込んだ。
 9月4日の論告で検察側は、渡辺被告が被害者のクレジットカードの利用方法を事前にインターネットで調べた点などを挙げ、「強盗目的は明らかで、睡眠薬を使うなど確定的な殺意があった」と指摘。「夫婦の首にロープを巻いて脅すつもりで、殺意はなかった」「第三者が実行した」などと強盗殺人罪を否認する被告の主張「客観的な証拠と矛盾しており、公判で弁解を不自然に変遷させ、罪を免れることしか考えていない。第三者の名前を明らかにしないのは不自然。被告が単独で、殺意を持って首を絞めたことは明らか」と批判した。そして「取引で損をした恨みと金を奪うという身勝手で短絡的な動機に酌量の余地はない。強い殺意に基づく計画的で残虐な犯行」と断じた。
 同日の最終弁論で弁護側は、「株を巡ってトラブルになった被害者を脅すことが目的で、強盗や殺人の計画はなかった。被告にとって2人の死亡は想定外だった」として強盗殺人罪ではなく傷害致死罪にとどまると主張した。渡辺被告は最終意見陳述で「自分の命で償います」などと述べた。
 判決で田辺三保子裁判長は、渡辺被告が法廷で、「自分ではない第三者が殺害した」と主張したことについて、「真実味が乏しく、具体的な状況が浮かび上がらないなど、供述は到底信用できない」と指摘。被告が被害者のクレジットカードの利用方法を事前に調べていた点や犯行に使用した自動車や遺棄した土地を知人名義で購入し事前に穴を掘っているなど、「全体として計画性は高く、殺意や財物を奪う目的は優に認定できる」と判断。「寝ている夫妻の首にロープをかけるのは1人でも可能」と、単独犯での強盗殺人罪を認定した。動機については、被害者の言動から値上がりを信じて購入した宝飾品販売会社の株で損失を被り、「恨みやねたみがあったとも考えられる」と指摘した。ただ、「だまされた事実は認められず、量刑で酌むべき事情にはならない」と述べた。また、渡辺被告が法廷で、核心部分の供述を拒否したことなどを、「真剣な反省や遺族らに対する心からの謝罪の念はほとんど感じることができない」と批判した。そして「殺害および死体の処分も予定した高度に計画的な犯行で、悪質性、重大性は際だって高い。信用できない弁解を繰り返し、真剣な反省や謝罪の念はほとんどない」と述べた。
 田辺裁判長は判決の言い渡し後、渡辺被告に向かって「裁判官、裁判員一同の意見です」と切り出し、「命の重みを無視した身勝手さを顧みて、どのような機会にでも、被害者の遺族に事件の真実を伝えてほしい。遺族の心の痛手を埋めるにはそれしかない」と説諭した。

 被告側は即日控訴した。
 2015年11月20日の控訴審初公判で、弁護側は「殺人をしたのは別の人物であり、渡辺被告は2人を殺害していない。金品強奪が目的ではなく、計画性も高くなかった」などと述べ、改めて強盗殺人罪の成立を否定した。
 判決で藤井裁判長は、殺害に使ったロープを用意し、夫婦を埋めた土地を事前に購入して穴を掘っていたと指摘。事件後に被告が男性名義のクレジットカードを使おうとしたことなども踏まえ、「金品目当てに殺害に及んだ」と結論づけた。「周到な準備を重ねた極めて計画性の高い強盗殺人で、落ち度のない2人の命を奪った結果は重大。死刑以外を選択する余地はない」と述べた。

 2018年12月3日の上告審弁論で、弁護側は量刑不当を訴えた。
 判決で鬼丸裁判長は「周到に準備された計画的な犯行で、殺意も強固。落ち度のない被害者2人の命を奪った結果は重大」と述べた。
備 考
 共謀して回数券をだまし取ろうとしたとして詐欺未遂罪に問われた元部下の男は2013年8月9日、東京地裁(田辺三保子裁判長)で懲役2年執行猶予4年(求刑懲役2年)の有罪判決を受けて確定している。
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