審査基準

 審査項目は全部で20項目。審査の先生方は20項目それぞれに○△×印を記入する。もちろん○印が合格で、多いほどよい。勝ち抜き回数一~三回は五項目以上の○印、四~五回は十項目以上、六~八回は十五項目以上。グランプリ獲得には、十八項目以上に○印が付かなければならない。
 グランプリシリーズでは、全ての挑戦者が終了した後、審査員全員が別室に向かって立ち上がるとき、必ずこの項目が流れていた。

1.演技力
 演技する力。つまり、自分じゃないものに扮して、いかにもそれらしく見せる力のこと。コントの場合は特に演技力が要求される。


2.明かるさ
 お笑いの世界では、お客との最初の出会いがもっとも大切。
 第一印象で暗い感じを与えると、このハンデを取り戻すのに大変な努力がいる。顔の表情、声の質、身振りなどが総合されて明るさとなり、お客を笑いの世界に巻き込んでいく。とにかく、おっ、これは楽しそうだなァ、という期待感を持たせるのが、この明るさである。


3.ルックス
 美男美女である必要はない。この世界では、むしろ美男美女は成功しない。お笑いは心。心の明るさが何ルックスなのかが審査される。


4.可笑しさ
 説明のつかない、えもいわれぬ可笑しさを指す。その人の総合的なキャラクターからにじみ出てくるものといえようか。


5.フレッシュさ
 読んで字のごとし。


6.将来性
 荒削りだが大器を感じさせる、キラリと光る何か。


7.サービス精神
 これぞ笑いの真髄。サービスとは形のないものを提供して楽しみ、喜んでもらうもの。お客を喜ばせるためならフルチンを辞さない、これがサービス精神。


8.根性・ファイト
 闘争心が旺盛でなければ、お笑いタレントにはなれない。


9.今日性
 “歌は世につれ”という言葉があるが、笑いにも同じことが言える。時代を反映していない笑いは、多くの人を楽しませることができない。


10.インパクト
 衝撃力のこと。お笑いの素材(ネタ)がお客さんの感性に訴える衝撃力、つまりショック度のこと。やられた!って感じにさせること。


11.芸 力
 持っているものを、相手がいやがっても力でねじ伏せて見せる力、これが芸力。一芸に秀でているってのはとにかく強い。


12.多芸性・芸の幅
 色々な芸を持っていること。複数の芸力を持つことが必要だから大変である。


13.メジャー性
 ポピュラー性、つまり、ごく少数の支持を受けるのではなく、数多くの人々に愛される大衆性を持っているかどうかがポイント。独りよがりは避けなければならない。


14.適応力
 どんな環境におかれても自分の能力を100%発揮できること。ネタの反応がよくないとすぐ別のネタに切り替えるなど、客層、ステージの大小・位置、環境などをよく見極め、臨機応変に事に当たること。


15.アドリブ性
 瞬間的想像力のこと。つまり、何か突発事故が起きたとき、瞬間的にそれに反応して笑いを作り出す能力のこと。


16.運動神経
 体で笑いを表現する能力。


17.機敏性
 スピード感のこと。運動神経をお笑いのために磨くとこれが得られる。昔の人は、棒が倒れるような倒れ方をトレーニングで身につけたという。


18.音楽性
 歌を歌ったり楽器を演奏する能力のこと。


19.リズム感
 早口でなくてもいい。言葉の回転、動作にリズム感覚が必要。間の取り方、漫才などでは相方と息を合わせるコンビネーション等々。


20.話 術
 しゃべりのテクニック。発声法、話の組み立て、目線の持ち方などキャリアがものをいう。

 鳳啓助は審査で時々、「演技力〇、インパクト△、音楽性×」などと話していた。
 ただし赤尾PDの話によるとこれはあくまで参考程度で、評価基準はあくまで“面白いかどうか”だったとのことである。

【参考文献】
 『お笑いスター誕生!!』(日本テレビ発行 読売新聞社発売)