浜尾四郎全集(桃源社)



【浜尾四郎】
 明治29年(1896年)4月24日、当時の東京市麹町区五番街に、男爵・医学博士加藤照麿の四男として生まれる。加藤は小児科医として有名で、昭和天皇の皇太子時代には侍医を務めたこともある。また祖父は男爵・文学博士・法学博士の加藤弘之。兄は東京美術学校校長の加藤成之。弟の郁郎は後の古川緑波。
 大正7年(1918年)12月、子爵・枢密院議長浜尾新の養子になる。病気静養による休学後、大正12年(1923年)に東京帝国大学法学部独法科を卒業。同年12月、司法官試補を命ぜられ、東京地方裁判所などで事務修習をしたあと、大正13年(1924年)11月に東京区裁判所検事代理となった。大正14年(1925年)11月、父の死去とともに子爵の位を襲爵し、同時に検事に任ぜられて、東京地方裁判所兼東京区裁判所検事局に勤務した。昭和3年(1927年)8月に検事を辞職し、弁護士を開業した。
 大正12年(1923年)以降から専門雑誌に文学と法学を交えた論文やエッセイを執筆。昭和2年(1926年)には「新青年」に「落語と犯罪」というエッセイを寄稿している。小酒井不木や新青年編集部からの依頼に応じ、昭和3年(1927年)末の「新青年」昭和4年1〜2月号に「彼が殺したか」で作家デビュー。以後、短編の力作を次々と発表する。
 昭和6年(1931年)4月17日から12月12日まで「名古屋新聞」に初長編『殺人鬼』を連載。元検事の藤枝真太郎を探偵に据え、ヴァン・ダイン風の重厚な作品は、日本の本格探偵小説の先駆的な作品であった。
 昭和8年(1933年)、貴族院議員に当選。しかし昭和10年(1935年)10月29日、脳溢血で急逝。満39歳没。長編『平家殺人事件』は未完に終わった。
(『浜尾四郎全集』第1巻より抜粋)


【浜尾四郎全集】
 昭和46年(1971年)、桃源社より全2巻で刊行。発表された短編、長編、随筆のほぼすべてが収録された。永く絶版であったが、2004年に沖積舎より再刊された。


巻 数 タイトル 初 版 収録作品
第1巻 殺人小説集 1971.6.25 『殺人小説集』
 「彼が殺したか」
 「死者の権利」
 「悪魔の弟子」
 「殺された天一坊」
 「島原絵巻」
 「正義」
 「探偵小説作家の死」
 「黄昏の告白」
 「夢の殺人」
 「彼は誰を殺したか」
 「有り得る場合」
『短編』
 「肉身の殺人」
 「マダムの殺人」
 「不幸な人達」
 「救助の権利」
『浜尾四郎随筆集』
第2巻 殺人鬼 1969.5.12 『殺人鬼』
『博士邸の怪事件』
『鉄鎖殺人事件』
『平家殺人事件』


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