H・T(42) | 兵庫県洲本市の無職、H・T被告は2015年3月9日午前4時ごろ、自宅近くに住む無職の男性(当時82)宅で、男性と妻(当時79)の胸などをサバイバルナイフで複数回刺して殺害。7時ごろ、近くに住む嘱託職員の男性(当時62)方で、男性と団体職員の妻(当時59)、母親(当時84)をサバイバルナイフで刺して殺害した。 | 殺人、銃刀法違反 | 2017年3月22日 神戸地裁 長井秀典裁判長 死刑 【判決文】(「裁判所ウェブサイト」内のPDFファイルが開きます。リンク先をクリックする前に、注意事項をご覧下さい) |
裁判員裁判。裁判長は、向精神薬の大量摂取による薬剤性精神病で「被害者一家が電磁波兵器で攻撃してくる工作員だ」という妄想を抱くようになったと指摘。事件当時の精神状況について、直接的に殺害を促すような幻覚・妄想の症状はなく、自分の行為が殺人罪になり逮捕され裁判になると認識していたと判断した。さらに、「被告の犯行前後の行動は合理的で一貫していた」と指摘。被害者の就寝時間を狙ったことや、犯行時にハンドタオルを落として被害者の注意をそらしたこと、被害者家族に対し現実のトラブルから悪感情を持っていたこと、逮捕時に「弁護士が来るまで答えない」と話したことなどを列挙し、精神鑑定を実施した鑑定医2人の意見も踏まえ、「計画性があり、殺害を決意し実行した行動に病気は大きな影響を与えていない」と結論づけた。そして、「一定の計画性の下で非常に強い殺意があり、動機は極めて身勝手で悪質」と強調。「落ち度のない5人もの命を奪った上、犯行を正当化し続けている。犯行態様の悪質さからも死刑回避の事情は見当たらない」と断じた。 | |
2020年1月27日 大阪高裁 村山浩昭裁判長 無期懲役(一審破棄) 【判決文】(「裁判所ウェブサイト」内のPDFファイルが開きます。リンク先をクリックする前に、注意事項をご覧下さい) |
判決で裁判長は、起訴前後の鑑定結果について、控訴審に証人出廷した担当医の証言が一審と控訴審で食い違うことなどを挙げ、信用性に疑問があると指摘。二審で新たに実施した精神鑑定の担当医の「犯行時の被告の妄想性障害は活発だった」との証言を重視。「妄想でしか動機を説明できず、病気の影響はきわめて大きい」とし「被告は重い妄想性障害で被害妄想が悪化し、攻撃性などが極めて高まっての犯行。犯行を思いとどまる能力が著しく減退していた」と判断して心神耗弱状態だったと認定した。 | ||||
2021年1月20日 最高裁第三小法廷 林景一裁判長 被告側上告棄却、確定 |
弁護側は心神喪失で無罪として上告していた。5裁判官全員一致の結論。 |