求刑死刑判決無期懲役【2022年】






事件概要
罪 状
判 決
判決理由
備  考
K・S(39)  新潟県新発田市の電気工事作業員、K・Sは2014年1月15日午前4時頃、通勤中に信号待ちをしていた会社員の女性(当時20)が運転する軽乗用車に乗り込み、わいせつな行為をして約1週間のけがをさせた上、竹刀の小川あるいはその周辺の竹やぶで何らかの方法で溺死または窒息死させた。2020年2月26日、新潟県警は服役中だったKを逮捕した。 わいせつ略取誘拐、強制わいせつ致傷、殺人 2022年11月18日
新潟地裁
佐藤英彦裁判長
無期懲役
 裁判員裁判。Kは無罪を主張。
 判決で裁判長は主文を後回しにした。
 争点となった「事件性」について、弁護側の事故や自殺の主張を退け、溺死または窒息死させたという検察側の主張を認めた。また、検出されたDNA鑑定より、Kと女性のDNAが混合したと考えて矛盾はないとするとともに、目撃証言の信頼性は高いとして、Kが犯人だとした。そしてKの常習性を認め、否認して反省の情がないと断罪したが、「同種の犯罪で死刑になった例と比較した場合、残虐性などはそこまで及ばない」として無期懲役を言い渡した。
 Kは2013年11月、新発田市内の路上でパート女性(当時22)を刃物で脅し車で連れ去って強姦し、顔を殴るなどして死亡させた強姦致死事件などで2014年5月9日に逮捕。2018年3月8日、上告が棄却され求刑通り無期懲役が確定。
検察・被告側控訴中


A・A(48)  水道工事会社社長のA・Aは2018年1月20日、堺市中区の父親(当時67)が住む事務所兼住宅で、糖尿病を患う父親と母親に睡眠薬が入った甘酒を飲ませたのちに父親へインスリンを多量に投与し、父親は低血糖状態で病院に運ばれた。父親は25日に退院したが、A・Aは25日午後4時40分から26日午前10時10分ごろまでの間、再び父親と母親に睡眠薬が入った甘酒を飲ませたのちに父親へ多量のインスリン製剤を投与した。父親は再び低血糖状態で病院に救急搬送され、脳死状態で入院した。父親は6月28日、低血糖脳症で死亡した。
 3月27日午後3~6時、A・Aは父の事務所兼住宅の2階別室で、母親(当時67)に睡眠導入剤を混ぜた抹茶オーレを飲ませて眠らせた。そして呼び出していた別の建築会社社長の弟(当時44)を睡眠薬で眠らせ、トイレのタンクの上で練炭を燃焼させて一酸化炭素中毒により殺害した。
殺人、名誉毀損、器物損壊 2022年11月29日
大阪地裁
坂口裕俊裁判長
無期懲役
判決文「裁判所ウェブサイト」内のPDFファイルが開きます。リンク先をクリックする前に、注意事項をご覧下さい)
 裁判員裁判。Aは黙秘し、弁護側は無罪を主張。
 判決で裁判長は、父親の事件についてインスリンの過剰投与と死亡との因果関係を認め、弁護側の「末期がんで死亡」の主張を退けた。父親が倒れたときに被告が実家にいたことや、携帯電話で「低血糖死亡」と何度も検索していたことなどから、インスリンを投与したのは被告だと判断し、殺害の意図も認めた。
 弟の事件について事件前、被告宅に練炭が配送されていたことや、弟の遺体から被告に処方された睡眠薬の成分が検出されたことなどから、被告による殺害と認定。事務所のパソコンの使用履歴などから弟名義の遺書は被告が事務所のパソコンで作成したもので、1か月前から嘘の遺書を準備し、練炭自殺を装って殺害したとした。
 弟の殺害は「足立被告が関わっていると疑っている弟に父親殺害の罪をなすりつける目的で、生命軽視の程度は大きく、悪質さは他の死刑判決事案と比べても遜色ない」と指弾した一方、父親を殺害した動機は不明だとし「突出した悪質性があるとは言えない」と判断。「遺族である母親が極刑を望んでいないなど、死刑の選択が真にやむを得ないとまでは言えない」と結論づけた。
 
2024年4月26日
大阪高裁
長井秀典裁判長
検察・被告側控訴棄却
 裁判長は、被告が糖尿病を患う父親に多量のインスリンを投与したと指摘。投与と死亡の因果関係を認定し、弁護側の無罪主張を退けた。他方、「犯行を発覚しないようにはしていない」とも述べ、被告が完全犯罪を計画したとする検察側の主張を否定、極刑を避けた。




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