1999年 10,000円で選ぶベスト・ミステリ




 これは、創元推理倶楽部通信で企画された「10,000円で選ぶベスト・ミステリ」に投稿した原稿です。10,000円(消費税除く)以内でベストを選ぼうという企画でした。ベストの選択に、当時の私の好みが出ていて、個人的に興味深いです。


1.梅原克文『カムナビ』上下(角川書店) 上1,600円 下1,900円


2.天童荒太『永遠の仔』上下(幻冬舎) 上1,800円 下1,900円


3.奥田英朗『最悪』(講談社) 2,000円


4.近藤史恵『カナリヤは眠れない』(祥伝社文庫) 533円


 いったいどこまでがミステリなのかさっぱり分からなくなる今日この頃。読み終わった後に「面白かった」と素直に言える本を選ぶと、どこにも本格がない。「仕掛け」で驚かすミステリにはもう飽きた。「謎」で驚かしてくれるミステリを読みたい。そして最後に「やられた」と膝を打ちたくなるミステリを読みたい。
 『カムナビ』は欠点も多いけれど、とにかく面白いものを書こうというスピリットに溢れている。『永遠の仔』は読み終わった後、生きることについて考えてしまう作品。『最悪』は今年の新人賞。『ハサミ男』『バトル・ロワイヤル』が松坂なら、『最悪』は上原。ノーマークから飛び出したこの犯罪小説は是非とも読むべし。『カナリヤは眠れない』は普及委員として選ばないわけにはいかない。とはいえ、こういう良質な作品を文庫書き下ろしで出した祥伝社にはエライと言いたい。

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