2001年 10,000円で選ぶベスト・ミステリ




 これは、創元推理倶楽部通信で企画された「10,000円で選ぶベスト・ミステリ」に投稿した原稿です。10,000円(消費税除く)以内でベストを選ぼうという企画でした。ベストの選択に、当時の私の好みが出ていて、個人的に興味深いです。


1.宮部みゆき『模倣犯』上下(小学館) 上1,900円 下1,900円


2.加藤元浩『Q.E.D 証明終了 第10巻』(講談社 マガジンコミックス) 390円


3.芦辺拓『グラン・ギニョール城』(文藝春秋) 1,700円


4.高野和明『13階段』(講談社) 1,600円


5.岡田鯱彦『薫大将と匂の宮』(扶桑社文庫) 762円


6.大阪圭吉『とむらい機関車』(創元推理文庫) 660円


7.大阪圭吉『銀座幽霊』(創元推理文庫) 660円


 今年のミステリは、『模倣犯』の一人勝ち。2001年といわず、21世紀を代表するミステリが誕生したと言っても過言ではない。
 今年の本格ミステリは、読者から喝采を浴びるような作品がなかったことが残念である。その中で唯一、膝を打ったのがマンガというのは、小説家にとって少々情けないことではないか。『Q.E.D』は、最近流行のミステリコミックの中でも、とびっきり本格ミステリ度が高いお薦めのシリーズである。第10巻はなんとアメリカでの法廷ミステリであり、難易度の高さと、着地の素晴らしさが印象に残る。『グラン・ギニョール城』は、黄金時代のミステリと現代ミステリの手法を融合させ、しかも成功させた傑作。作者にとって会心の一作だろう。『13階段』は、結末のドタバタが気になるが、歴代の受賞作の中でも上位に位置する作品である。今年の日下三蔵氏には、ぜひとも特別賞をあげてほしいものである。そのすばらしい仕事群の中から、好みの一冊を選択した。そして最後は大阪圭吉二冊。不遇の本格作家が、ようやく再評価されるときが来た。この出版に拍手を送ると共に、他の作品群にも日を当ててほしい。
 とはいえ、過去の作品が注目を浴びてばかりいるのは、現在の作家がだらしないというのも一因である。ぜひとも奮起してほしい。

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