2002年度私的日本ミステリベスト10




1.高野和明『グレイヴディッガー』(講談社)
 パワーとスピード感に圧倒される、ハチャメチャホラーサスペンス。ページを捲ったら、やめられない面白さ。


2.打海文三『ハルビン・カフェ』(角川書店)
 近未来の港湾都市を舞台にした、ノワールものの傑作。読みづらさはあるものの、骨太の設定と魅力的な登場人物に酔わされる。


3.石持浅海『アイルランドの薔薇』(カッパ・ノベルス)
 これだけ端正な本格ミステリは久しぶり。謎と論理だけでなく、登場人物に血が流れている。本格ミステリも、小説なのである。


4.笹本稜平『天空への回廊』(光文社)
 スケールの大きさとスピーディーな展開、何よりも主人公たちにはだかる山の描写がすばらしい。粗は目立つし、最後は蛇足だと思うが、そんなのは些細なこと。王道をゆく、山岳冒険小説の傑作。


5.古処誠二『ルール』(集英社)
 ミステリかどうか迷うところだが、優れた戦争小説であることに、間違いはない。


6.東野圭吾『レイクサイド』(実業之日本社)
 本格ミステリとしてもっと評価されてもいいと思うんだが。過去の作品が偉大だと、地味な作品は損をするんだなと思う次第。大作ばかりでなく、こういう作品にスポットを当てるのが、評論家の仕事だと思うが。


7.高橋克彦『ゴッホ殺人事件』上下(講談社)
 浮世絵三部作に続く西洋絵画三部作スタートを飾る傑作。高橋克彦が、ミステリの世界に帰ってきてくれた。


8.横山秀夫『半落ち』(講談社)
 結末に釈然としない部分があるものの、思わず涙がこぼれてくる優れた犯人小説である。「2日間の空白」という謎だけで、警察、検察などの問題点と、そこに関係する人たちのジレンマを浮かび上がらせた腕に脱帽。


9.大倉崇裕『ツール&ストール』(双葉社)
 ちょっとほろ苦く、そして最後に思わず微笑んでしまいたくなるような、巻き込まれ型サスペンス連作短編集の快作。これだけ器用な人だとは思わなかった。


10.柳広司『はじまりの島』(朝日新聞社)
 柳はここ止まりという気がするね。もう一皮むければドーンと行くんだろうが。




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