情事の現場

　殿村が愛人恵子のいるマンションに行ったら、恵子は若い男と裸でベッドの上にいた。殿村に見つかった男は慌ててズボンをはいたが、カッとなった殿村は、男を側にあったビール瓶で殴った。ビール瓶は割れなかったが、男は当たり所が悪かったのか、そのまま死んでしまった。

「キャ、し、死んだわ」
「恵子、こいつは誰だ」
「車のセールスマンよ」
「お前との関係は誰かに知られているのか」
「たぶん、誰も知らないと思うわ」
「こいつの車はあるのか」
「ええ、下の駐車場に」
「よし、死体を捨てに行くから、お前が車を運転するんだ」
「い、いやよ。あたし、怖いわ」
「バカ。こうなったのは、お前が浮気したからだぞ」

　殿村は急いで男に服を着せた。そして二人は車を遠くの公園まで運転し、男を車の近くに投げ捨てた。時計や財布などを奪い、強盗の仕業に見せかけたのである。そして二人は、電車でマンションまで戻った。もちろん指紋などは残さなかった。
　翌日の早朝、散歩中の歩行者が男の死体を発見し、110番に通報した。すぐに警察が駆け付け、死体は解剖のため病院に運ばれた。
　解剖医は遺体を裸にした後、そばにいた刑事にこう語った。

「馬鹿な犯人もいるものですな。これは強盗の仕業じゃありませんよ」
「というと？」
「男が女と寝ているときに殴られ死んだ後、死体が捨てられたんですよ」
「よくわかりましたね」
「これを見てください」

　それを見た瞬間、刑事は大笑いしたのである。
　殿村と恵子の偽装は、なぜ簡単にばれたのだろうか。

　男は下腹部にコンドームをつけたままにしていたのだ。殿村に見つかった男は、コンドームを外すひまもなく慌ててズボンを穿いたところを殺されたのだ。
　殿村は知らないのも無理はないが、恵子も気が動転していたので、ど忘れしていたのである。

　エロチック系推理クイズではたまに見かける問題です。まあ、実際にありそうで、笑ってしまいますが。もしかしたら実話だったりして。