ダイヤとキャラメル


【問 題】
 これも昭和50年ごろの話。

 恋人の幸助がインドから帰って来たので、芳子は幸助が泊まっているホテルに行った。
 裏口から入り、誰にも見られずにホテルの部屋に入る。幸助は調子が悪いのか、ベッドに座ってぐったりしていた。
「あら、幸助。気分が悪いの」
「いや、ちょっと疲れているだけだよ」
 幸助と芳子は熱いキスを交わした。
「インドはどうだったの、可愛い子はいた?」
「馬鹿言え、お前がいるのに、そんなことするわけないだろ」
「だったら、プレゼントぐらい買ってきてるんでしょうね」
「プレゼントもそうだが、それよりこれを見てみろよ」
 幸助がベッドのそばに落ちている上着のポケットから取り出したのは、読めない言葉で書かれた小さな箱だった。
「なによ、これ」
「へへ。キャラメルだよ」
「ちょっと、馬鹿にしてるの。子供じゃないんだから」
「そういうなよ。このキャラメルの中には、ダイヤが埋め込んであるんだ」
「えっ、ダイヤ?」
「その通り。数カラットはあるダイヤだ。向こうで安く手に入れてきたんだ」
「すごい。だけど、税関で見つからなかったの?」
「お菓子だと思って、何も調べずに税関を通してくれたよ」
「キャラメルは全部で10個。全てにダイヤが埋めてある。口の中に入れて、甘い香りが広がったと思ったら、ダイヤが出てくるんだ。うまいぞ、これは」
 幸助も芳子も実は小悪党。捕まったことはないが、悪いことはいろいろしてきた。幸助は芳子に惚れているが、芳子は幸助の稼いでくる金に惚れていた。そんな芳子は、ダイヤを10個と聞かされて、あっさりと心変わりした。
 芳子は、いざという時に持っていた毒をミネラルウォーターに混ぜ、幸助に飲ませて殺害。キャラメルを箱ごと奪い、指紋や痕跡などをすべて消した。幸助の唇もアルコールで拭いて痕跡を消し、そっと部屋を出て帰った。幸い、何も口にしていなかったので、証拠はないはずだった。それに二人は小悪党の常として、付き合っていることは内緒にしてきており、なるべく外では合わないようにしていたから、誰も知らないはずだった。
 ところが数日後、芳子は入院することとなった。病室のベッドで寝ていると、そこに刑事が入ってきた。
「おい、中川良子。加藤幸助殺害の疑いがある。おとなしく吐いたらどうだ」
「えっ、誰よ、その加藤なんたらって。聞いたことないんだけど」
「証拠があるんだ、証拠が」
「なによ証拠って」
 芳子は頭の中で当日の行動を振り返ってみたが、痕跡はすべて決してあるはずだ。誰にも見られなかったし、証拠があるはずがない。
「証拠はこれだよ」
 刑事はカルテを芳子に見せた。芳子は思わずあっと叫んでしまった。
 カルテにはいったい何が書かれていたのだろうか。


【解 答】
 カルテにはコレラと書かれていたのだ。
 コレラは恐ろしい伝染病だが、日本で発生は稀である。幸助を解剖するとコレラ菌が検出された。調べてみるとインドから帰って来たばかりで、インドで感染したと予想された。そこにコレラ患者が出たという話が警察に流れてきたので、芳子を調べたのだ。

【覚 書】

 さて、これはどうやったら小説になるんだろう? 藤原宰太郎のオリジナルかもしれない。

 ※解答部分は、反転させて見てください。
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