タイヤ痕の謎
【問 題】
団探偵の事務所に友人の久我警部がやってきた。
「そこの駐車場にある赤いスポーツカーは君のだろう?」
「ああ、その通りだ」
「だったら君を逮捕しなければならない」
「えっなぜ」
「昨夜の十時ごろ、光エネルギー研究所にスパイが忍び込んで、新発明の設計図が盗まれたんだ」
「そのスパイが僕とだと?」
「ああ、空き地に残っていたタイヤ痕が、君の車のものと一致したんだ」
同じメーカーのタイヤでも、すり減り方や傷などでそれぞれ特徴がある。だからタイヤ痕は重大な証拠となるのだ。
「しかし警部、僕にはアリバイがある」
「アリバイ?」
「僕は昨日の夜八時から、推理作家の江川乱山先生のマンションに行っていたんだ。実は秘密だが、江川先生の小説が映画になるので、その打ち合わせでプロデューサーや探偵役の主演俳優、マネージャーも来ていた。帰ったのは夜十一時半だ。だから、夜十時に研究所に行くのは不可能だ」
一部の者しか知らないことだが、団探偵は江川乱山の小説に出てくる探偵のモデルでもあった。久我警部もそのことは知っていた。だから小説の映画化の話に付き合っていてもおかしくはない。友人の江川先生だけならともかく、プロデューサーや有名な俳優までが一緒なら、アリバイは間違いない。
「車はどこに置いていたんだ?」
「江川先生のマンションの近くにある駐車場に止めていた。もちろん鍵も掛けていた」
「じゃあ合鍵を使ったんだ。マンションから研究所までは、一時間もあれば楽に往復できる」
「いや、それも無理だ」
「なぜ?」
「僕はいつも駐車するときと発進するとき、車の走行距離のメーターを見る癖があるんだ。昨夜見たときは、メーターは全然動いていなかった。だから、僕の車は駐車場から1メートルも動いていない」
「おかしい。しかし鑑識の結果に間違いがあるはずがない。どうして犯行現場に君の車のタイヤ痕が残っていたのだろう?」
「いや、わかったよ。そのトリックが」
犯人はいったいどうやって現場に団探偵の車のタイヤ痕を残したのだろうか。
【解 答】
犯人は団探偵の車からタイヤを外し、自分の車に付け替えたのだ。犯行後、元通りに戻しておいた。マンションは防音設備が完璧なので、団探偵は気付かなかったのだ。
【覚 書】
これも藤原宰太郎の推理クイズ本にはよく出てくるもの。海外のトリックの借用だと思うのですが。
元ネタが判明しました。アガサ・クリスティの短編「金塊事件」でした。
※解答部分は、反転させて見てください。
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