犯人はヤマダ


【問 題】
 ある不倫カップルがいたのだが、男の方は女が邪魔になったので、女が飼い鳥の世話をしようと立ち上がって後ろを向いたところを、隠し持っていたナイフで刺した。返り血も浴びず、男はそのまま逃げた。ともに不倫なので、いままで周囲に隠れて付き合っており、日記等の記録も残していなかった。だから、男と女が付き合っていたことは、誰も知らないはずだった。
 女は即死ではなく、かろうじて息が残っていた。しかし立ち上がることすらできなかった。スマホに録音しようと思っても、スマホは手元にない。指先もろくに動かせず、床に名前も残せない。しかし女は、「犯人はヤマダ」「犯人はヤマダ」と、息が絶えるまで声を出して言い続けた。
 翌日、女の死体が見つかった。警察は取り調べを始めてすぐに、犯人がヤマダだとわかった。なぜだろう。


【解 答】
 飼っていたトリは、実はオウムだった。女は何度も同じ言葉を言い続けることで、「犯人はヤマダ」という言葉を覚えこませたのだ。警察が取り調べ中に、驚いたオウムが「犯人はヤマダ」と何度も鳴いたので、犯人がわかったのだ。

【覚 書】

 推理クイズ「金庫のコード」の別バージョン。藤原宰太郎の推理クイズにはよくあるもの。てっきりアレンジしたのかと思いましたが、過去に実際にあった出来事だと分かったので驚いた。もちろん、このクイズより後に起きた出来事なのだが、もしかしたら過去にも実際にあったのかもしれません。
 以下は、すでにクイズの答えを言っていますが、ご容赦ください。


 インドで2014年2月20日に発生した、女性と飼い犬が殺され、現金と宝石が盗まれた強盗殺人事件。警察が捜査中、飼っていたオウムが甥の呼び名を連呼した。警察が捜査して、目撃証言から甥とその友人が逮捕され、現金と宝石が逮捕現場から見つかった。しかし二人は犯行を否認したことと直接証拠がなかったため、裁判は長引いた。だが最終的に甥は自白し、2023年3月24日、インド地方裁判所は2人に対し無期懲役+罰金72,000ルピー(約11万4,800円)を命じた。裁判所は「インドの証拠法上オウムの証言が正式に効力を認められたと言うことはできない」としながらも、「だが裁判過程で継続してオウムの証言が中心にあり、警察もやはりオウムの役割が大きかったとその功績を認めた」と伝えた。しかしオウムは、主人が亡くなったあとは餌を食べなくなって、六か月後に死んでいた。
 アメリカでは、1993年にカリフォルニア州で起きた殺人事件で、主人の最後の言葉「リチャード、ノー、ノー」を話したオウムの言葉を殺人の証拠に採択している。また2017年7月20日、ミシガン州ニューウェイゴ郡の陪審員団は第1級殺人容疑で起訴された被告に有罪評決を下したとき、「撃つな」と繰り返し話すオウムの証言を殺人事件の証拠として採択している。



 ※解答部分は、反転させて見てください。
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