崖から逃げたボス
【問 題】
「警部、密輸団のボスの隠れ家を見つけました」
「どこだ」
「W岬の一軒家です」
「あの、切り立った崖に立っている屋敷か。すぐ行くぞ」
警部とその部下は大雨の中、W岬の崖の一軒家にやってきた。
「見張っていた刑事によると、今は一人しかいないそうです。踏み込みますか」
「ちょっと待て。請求した逮捕状が来るまでは待つんだ」
「わかりました」
「しかし、崖の方は誰かいるのか。そちらから逃げたらどうする」
「大丈夫です。ボスは全く泳げません。崖から海に飛び込んだら、溺れて死んでしまいます」
「しかしボートなどがあったらどうする」
「大丈夫です。船やボートを出せる港は見張りをつけていますし、崖に船が近づけば目視でもわかります。それに今日は大雨なので、船が出たとの報告はありません」
警部たちが逮捕状を待って見張っていると、合羽を来た宅配の配達員がバイクでやってきた。
ボスが扉を開けると、配達員は段ボールを濡らさないようにビニルで包みながら、家の中へ入っていった。
「確かにあれはボスだったな」
「どうしましょう」
「ちょっと待て。関係のない人物を巻き込むわけにはいかん。それに、ボスに見張っていることを知られたくない」
少しすると、合羽を着た配達員が戻ってきて、バイクに乗って帰っていった。
1時間ほど待っていると、逮捕状をもって一人の刑事がやってきた。
「よし、行くぞ」
警部たち家に踏み込んだが、中には誰もいなかった。
「そんな馬鹿な。誰も逃げ出さなかったのに」
「もしかして崖から海へ逃げたんじゃないのか」
「先ほども言いましたが、ボスは泳げないことは確認済みです」
さて、ボスはどこへ消えたのだろうか。なお、ボスが泳げないのは本当のことである。
【解 答】
実は宅配の配達員が密輸団の部下であった。見張られていることに気付いたボスは、部下を配達員に化けさせ屋敷に入らせると、服装を入れ替えたのだ。つまり、バイクに乗って帰っていった配達員が、実はボスだったのだが、合羽を着ていたので警部たちにはわからなかったのだ。そして部下は泳ぎが達者だったので、崖から海に飛び降り、泳いで逃走したのだ。雨が降っていたので、港から見張っていた刑事も気付かなかった。
【覚 書】
脱出トリックの一つ。コミック形式の出題が多いですね、これは。
※解答部分は、反転させて見てください。
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