新築の密室


【問 題】
 森の奥に小さな新築の家があった。
 二部屋ぐらいしかない、小さな家だった。
 そしてその中に、ジョーの死体があった。背中からナイフで刺されていた。他殺なのは間違いない。解剖の結果、ジョーは即死だった。刺されてすぐに死んだのだ。そして死んでから半月以上経っていることがわかった。寒い季節だったから、死体が腐敗しなかったのだろう。
 ところが、この新築の家にはドアが一つしかなく、窓すらなかった。そしてそのドアには、内側から大きなかんぬきで鍵がかかっていた。
 新築の家なので、換気口以外の隙間が全然ない。換気口は20cm四方の大きさなので、人が通り抜けることは当然不可能だ。
 つまり、この家は密室だったのだ。
 家の中には、死んだジョー以外に誰もいない。指紋すら一つも残っていない。大きなかんぬきはがっしりとかかっているので、外から動かすことなど不可能だ。
 では、どうやって犯人はこの密室から逃げ出すことができたのだろうか。


【解 答】
 即死したのだから、ジョーが刺されて逃げ込んだというわけではない。万が一即死でなかったとしても、大きなかんぬきをかけることなど不可能だったろう。実はこの新築の家、ジョーを殺してから完成させられたのだ。つまり、ジョーが死んだときはまだ家はできておらず、ジョーを床に転がしたまま、壁や屋根などを取りつけたのだ。

【覚 書】

  元ネタはW.ハイデンフェルトの短編「「引立て役倶楽部」の不快な事件」です。もしかしたら、本作より前にもあるかもしれません。馬鹿馬鹿しいトリックと言ってしまえば、それまで。

 ※解答部分は、反転させて見てください。
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