消えた100万ドル


【問 題】
 グリは覆面強盗に変装して、ニューヨークの裏町にある小さな郵便局に押し入った。ちょうど昼食を食べていた3人の局員をトイレの中に閉じこめてから金庫を開け、100万ドルの札束を盗んだのである。
 そして数分後に、覆面を脱ぎ捨てて、何食わぬ顔をして郵便局から出たとたん、運悪くダニエル警部と出くわした。
「グリ、おまえ、この郵便局で何か悪事をやったな。挙動が怪しいから逮捕する」
 ダニエル警部はグリに手錠をかけて郵便局に入ってみると、局員がトイレに閉じこめられており、金庫が荒らされて大金が盗まれていて大騒ぎになった。
 グリはその場で厳重に身体検査をされたが、盗んだ札束は一枚も持っていなかった。
 トイレから解放された局員も、局の内部から外にあるポストの中まで探したが、100万ドルがどこにもない。覆面が捨ててあるだけだった。
「局長、この小包は?」
 ダニエル警部は、速達や書留小包が数個あるのを見て、局長にたずねた。それらにはみな切手が貼ってあり、消印も押してある。
「それは、午前中に受け付けた小包です」
「新しい小包が一つ、まぎれこんでいないか」
「いいえ、新しい小包はありません。強盗が入る前と同じ数だけあります」
 局長は小包を一つ一つ調べて答えた。
「それ見ろ、警部。ぼくは犯人じゃないぜ。人を疑うのもいいかげんにしてくれ」
「じゃ、お前。この郵便局へ何をしに来たんだ」
「ラブレターを出そうと思って、切手を買いに来たんだよ。そしたら局員がいないので、留守かと思って引き返そうと思ったら、君につかまったのさ。これがラブレターだよ」
 グリはポケットから一通の封筒を出して見せた。
 盗まれた現金が見つからない以上、いつまでもグリを逮捕しておくことはできない。しかたなく、ダニエル警部はグリを釈放した。
 グリは口笛をふきながら帰っていった。
 ところが数日後には、盗んだ100万ドルをちゃっかりと取り返していたのである。
 では、グリはいったいどこに札束を隠していたのだろうか。


【解 答】
 グリは強盗にはいる前に、変装して郵便局に行き、小包を一つ出して置いたのだ。小包の宛名は、自分の変名にしておいた。
 そのあと、覆面をして強盗に入り、100万ドルを盗むと、その小包をほどいて、その中に札束を詰め、また元通りに包装したのである。
 事件の前に受け付けた小包の中に盗まれた現金が隠しているとは思わないので、局長もうっかり見逃したのである。

【覚 書】

 盗品を隠すトリックの応用問題。実際にはばれてしまうでしょうが、面白いトリックだと思います。

 ※解答部分は、反転させて見てください。
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