謎のヘッドライト


【問 題】
 夜中、ある男が車で逃走していた。
 隣が崖になっている暗い道路を走っていると、前の方からヘッドライトが二つ見えてきた。そのライトはどんどん近づいてくる。
 男は車のハンドルを左に切ると相手も左に、男が右に切ると相手も右に切るのだ。
 そしてライトはとうとう男の車の目の前に迫ってきた。
 男は衝突を避けようと、慌ててハンドルを左に切った。男の乗った車は、ガードレールを破り、そのまま崖下へ落ちていった。

 翌日の朝、警察が検証にやってきた。
「警部、タイヤの跡は一台しかありません」
「うむ。反対側にはタイヤ跡がない。多分スピードの出しすぎか、居眠り運転でハンドルを切り損なったのだろう」
 警察はあっさりと事故として片付けてしまったのだ。
 さて、この不思議なライトの正体は?


【解 答】
 犯人は大きな鏡を道路に置いていたのだ。自分の車のライトが映ったのを、男は対向車と勘違いしたのだ。

【覚 書】

 これも、推理クイズの定番中の定番クイズ。運び込んで設置するのが大変なので、実際に可能かどうかは疑問だが、クイズならではの大きなスケールである。
 元ネタが判明しました。1964年のイギリス映画『007/ゴールドフィンガー』でした。アストンマーチンDB5で逃げようとしたボンドはこのトリックに引っ掛かり、壁に激突して敵に捕まってしまいます。イアン・フレミングによる原作小説にはこのトリックがなく、映画のオリジナルとのことです。情報を送っていただき、有難うございました。
 さらに情報をいただきました。山本周五郎の短編「流星妖怪自動車」(『殺人仮装行列』(新潮文庫)所収)でこのトリックが使われているそうです。もちろん、映画の製作者がこの作品を読んでいたとは思えないので、偶然の一致でしょうが。

 ※解答部分は、反転させて見てください。
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