犬の咬みあと
【問 題】
私立探偵の団のところに、隣に住む松村婆がやってきた。松村婆は近所の嫌われ者で、どんなことにでも文句を言い、ケチで、団のところにもいつも厄介事を持ち込んでいた。そして今日も、言ってきたのだ。
「見てくださいよ。この跡を」
綺麗な長いスカートを上げると、脚に何かに咬まれたような跡があった。
「今村さんの飼い犬がたった今、私の足を咬んだのよ。ひどいものだわ」
今村さんというのは、三軒隣に住む若夫婦で、松村婆はいつも文句を言っていた。夫婦は犬を飼っていた。
「私が通りがかったら、ひどいことに鎖が外れていて、いきなり咬みついて来たのよ。すぐに消毒して、ここに来たわ」
「なんで私のところに来たのですか」
「あなたに証人になってほしいからよ」
「家で消毒してからきたのですか」
「そう言ったじゃない。消毒だけして、すぐここに来たのよ」
「そうですか。では私は、今村さんのところの犬が咬まなかったと証言するしかないですね」
さて、団は松村婆の嘘をどこで見破ったのだろうか。
【解 答】
犬に足を咬まれたと言って、長いスカートを上げている。そのスカートが綺麗なままだったので、団は嘘だと見破ったのだ。犬がスカートを捲ってから足を咬むことなどできるわけがない。もし犬が足を咬んだのなら、当然スカートにもその跡が残っているはずだ。
松村婆は、今村夫婦から賠償金を取ろうと、脚をフォークで刺したものだった。
【覚 書】
加納一郎が、複数のクイズ本で使っていますね。わかりやすい嘘探しクイズだと思います。
元ネタが判明。オースティン・リプレイ『続推理試験』(荒地出版社)の推理クイズ「事件四六三」でした。
※解答部分は、反転させて見てください。
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