リンゴの罠
【問 題】
仲の悪い兄弟が、亡くなった父の財産をどう分けるかを相談するために、父の家に集まった。万が一のことがあっては、と父の弟である叔父夫婦も来た。ともに素行が悪く、金に困っている。案の定、兄弟はもめた。元ボクサーだった弟は、得意のサウスポーで兄を殴ろうとし、兄はポケットからブラスナックルを取り出し右手にはめた。
「まあまあ、落ち着いて。昔は仲がよかっったのに」と叔母は嘆くと、叔父が
「わしの家で育てたリンゴだ。昔は好きだっただろう。せっかくだから食べないか。それからゆっくり話せばいいだろう」
「わかった」
と兄はブラスナックルをポケットにしまい、台所から果物ナイフを持ってきて、自分で皮をむいて食べだした。
「うん、うまいな。叔父さんのリンゴも久しぶりだ」
それを見た弟も、兄が使ったナイフを取り、リンゴを取って皮をむいて食べだした。するといきなり苦しみだし、血を吐いて倒れた。
叔父夫婦は慌てて警察を呼んだ。
「犯人はお前か」。
刑事は仲の悪い兄を疑い、問い詰めた。
「犯人は、とはどういうことだ」
「被害者は毒を飲んで死んだんだ。動機があるのはお前だ」
「バカを言え。リンゴは叔父が持ってきたものだし、選んだのはあいつ自身だ。俺はあいつのリンゴには何も手を付けていない。それにあいつに会ったのは1週間ぶりだ。毒を飲ませる方法なんかない」
兄が言うとおり、リンゴには一切指を触れていない。それまで二人は言い争いばかりで、食べ物も飲み物もなにも用意されていない。弟は持病はなく、薬なども飲んでいなかったので、カプセルなどに毒を入れて飲ませるといった方法も不可能だ。ではどのようにして毒殺したのか。
【解 答】
文章にある通り、兄は右利きで、弟は左利きだ。兄は台所から果物ナイフを持ってくるときに、ナイフの片面にのみ毒を塗っておいたのだ。当たる面が異なるので、右利きの兄には毒がつかないが、左利きの弟にはナイフから毒がリンゴに移ったため、毒を飲ませることができたのだ。
【覚 書】
藤原宰太郎の著書でよく出てくる推理クイズ。本当にうまくいくかどうかはともかく、わかりやすいトリックです。
元ネタは赤沼三郎の短編「林檎と手風琴(アコーディオン)師」です。情報をいただきました。有難うございました。
※解答部分は、反転させて見てください。
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