身代わり殺人


【問 題】
 ある冬の日。午前十時、アパートの二階で三発の銃声がとどろいた。
 一階の自室にいた管理人はびっくりして腰を抜かした。そこへサングラスとマフラー姿の男が二階から駆け下り、そのまま外に止めてあった車で逃走した。管理人は慌てて警察に電話した。
 駆け付けた警官と管理人が二階に上がると、四号室のドアの下から血が流れている。薄い板張りのドアには、ずっと上の方に弾痕が三つあった。二階の他の住人は全員独身の務め人で、誰もいなかった。
「ここの部屋にはだれが住んでいる?」
「騎手のIさんです」
「Iさんは出かけたのか?」
「私はずっと見ているわけではないので、わかりません。ただいつもなら厩舎に行っているはずです」
 警官は管理人から合鍵をもらい、ドアを開けようとしたが、内側に何か閊えている。県警から捜査一課と鑑識が来た。ドアを力づくで開けると、そこには1.8mくらいの長身の男が頭から血を流して倒れていた。顔面に弾丸を二発くらい、即死である。もう一発はそれて、壁に当たっていた。
「この男がIさんか?」
「いえ、初めて見る人です。Iさんは競馬の騎手で、背がとても小さいです」
 男の指紋を調べてみると、なんと昨日、ある大金持ちの男を襲って1000万円を強奪した前科三犯のMとわかった。

 警察はさっそくIが勤めている厩舎へ行った。
「Mのことを知っているか?」
「はい、私の中学・高校の友人です。昨日、久しぶりに来たので泊めてやり、一緒に酒を飲みました。今日は私が仕事があるので、落ち着いたら出ていくと言っていましたが」
「Mは拳銃で殺された」
「えっ、そんな。もしかして私の身代わりになったのでは……」
「身代わりだと?」
「実はある暴力団に脅されていたのです。先週の競馬のレースで、私は本命の馬に乗っていたのですが、暴力団の男が大穴を狙って八百長をやれと言ってきたのですが、それを断って優勝したんです。もしかしたらそれを恨んで……」
 しかし警察はごまかされなかった。
「それは嘘だろう。1000万円を山分けするつもりで、君が犯人にMのことを教えたに違いない。殺人の共犯で逮捕する」
と有無を言わさず、Iを逮捕したのだ。警察はなぜIの嘘が分かったのか?


【解 答】
 Mは身長1.8mの長身で、Iはとても背が小さい。そしてMは頭を拳銃で撃たれていた。ということは犯人は、ドアの向こうに長身の男、すなわちMがいることを知っていたのだ。もしIが標的なら、もっと低い位置に拳銃を撃ったはずだ。Mがいることを知っているということは、Iが教えたからなのだ。

【覚 書】

 これは海外の推理クイズにありそうなネタ。

 ※解答部分は、反転させて見てください。
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