山村正夫『読者への挑戦 ―12の推理パズル―』(朝日ソノラマ ソノラマ文庫)
『読者への挑戦 ―12の推理パズル―』
著者:山村正夫
1931年生。愛知県出身。1949年「二重密室の謎」でデビュー。以後、多くのミステリを手がける。『湯殿山麓呪い村』で角川小説賞を受賞、映画化もされた。元日本推理作家協会理事長。1999年没。
発行:朝日ソノラマ ソノラマ文庫
発売:1976年3月30日初版
定価:300円(初版時)
ミステリーのなかで、何といっても一番おもしろいのは、アッというトリックや最後の解決の意外性にワクワクさせられる本格推理小説だ。特に「犯人さがし」のクイズ性の強いものを、外国では“パズラー”と呼び、むかしから多くの読者に親しまれてきた。
きみたちも、こうしたミステリーは大好きだと思うが、パズラーを読む楽しさは、作者と読者の知恵くらべ――つまり、ゲーム性にあるといっていい。作者は読者をだますため、あの手この手のトリックを使うが、物語のなかには、いくつかの手がかりがフェアーに示してあるので、その手がかりに気づき、それをもとに推理すれば、かならず事件の謎が解け、犯人がわかるようになっている。
この本にそろえた12の怪事件も、そのようなパズラー小説ばかりだ。おのおのの事件に、犯人トリックや殺人トリック、アリバイ・トリック、密室トリック、人間消失トリックなど、それぞれ違う奇ばつなトリックの犯罪があつかってあり、警視庁捜査一課の永井義郎刑事と片野史郎少年の名探偵コンビが、その事件の謎と取り組んで解決するのだが、クイズ形式にしてあるので、むろんきみたちも探偵ゲームに参加できる。
第1の事件から順に問題篇の小説を読み、読みおわったら本を閉じて、出題の答えを考えてくれたまえ。そして、犯人の名前や犯行手段がわかったら、解答編をひらいてきみの解決が合っているかどうかをたしかめてみるのだ。どうしても解けなくて、サジを投げた場合も、解答編を見てかまわない。
だが、さいしょからズルをやってはなさけないぞ。
さあ、12の怪事件のうち、きみにはいくつの事件のトリックを見破り、その謎をバッチリ解決できるか?
作者はきみたちに、挑戦の手袋を投げる。ひとつ史郎くんに負けずに、きみたちの名探偵ぶりを発揮してくれたまえ。
(「作者からの挑戦状!」より引用)
【目 次】
第1の挑戦 死の分譲住宅
第2の挑戦 怪獣沼の殺人
第3の挑戦 産業スパイはだれだ
第4の挑戦 ぼくは殺される
第5の挑戦 脅迫魔
第6の挑戦 消えた短剣
第7の挑戦 幽霊犯人
第8の挑戦 影のアリバイ
第9の挑戦 めっかちの車
第10の挑戦 白樺荘の怪事件
第11の挑戦 死を呼ぶ祭り
第12の挑戦 逃げだしたカナリア
山村正夫による犯人当て短編小説12編を集めたもの。探偵役は警視庁捜査一課の永井義郎刑事と片野史郎少年。片野史郎少年は小学6年生。父親の行男は警視庁の名刑事と言われたえらい人だったが、3年前に殉職した。母親は東亜化学工業という会社の公害問題研究所のまかないをして働いている。母親の名前は出てこない。永井刑事は父親の部下で、史郎と仲が良い。
問題形式は、短編小説で事件が語られ、容疑者と手がかりが出そろい、「問題1」「問題2」という形式で出題される。次のページには、解答が記されている。
この短編は『子供の科学』(誠文堂新光社)昭和47年1月号~昭和48年12月号まで連載されていた。1編につき2か月分となっているので、おそらく奇数号で問題編、偶数号で解答編に分かれていたものと思われる。ただし、本書の収録順と掲載順は異なる。戸田和光さん作成の「山村正夫 ジュヴナイル作品リスト(暫定作成版)」より引用すると、掲載は下記となっていた。
「密室の銃声」 |
昭和47年1月~2月 |
「ぼくは殺される!!」 |
昭和47年3月~4月 |
「影のアリバイ」 |
昭和47年5月~6月 |
「めっかちの車」 |
昭和47年7月~8月 |
「怪獣沼の殺人」 |
昭和47年9月~10月 |
「逃げだしたカナリア」 |
昭和47年11月~12月 |
「産業スパイはだれだ!!」 |
昭和48年1月~2月 |
「幽霊犯人」 |
昭和48年3月~4月 |
「脅迫魔」 |
昭和48年5月~6月 |
「消えた短剣」 |
昭和48年7月~8月 |
「白カバ荘の怪事件」 |
昭和48年9月~10月 |
「死を呼ぶ祭り」 |
昭和48年11月~12月 |
短編のトリックは過去の推理クイズなどで使われているものが中心であり、目新しいものはない。それでも小説という形を取ることにより、伏線の張り方や隠し方などが学べるようになっている。
少年向けには読み易い作品集となっている。当時の子供たちには、よい頭の体操となったのではないだろうか。
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